商標法:パリ条約とフィリピンにおける外国商標の保護

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この判決では、フィリピン最高裁判所は、パリ条約に基づき、外国の未登録商標がフィリピン国内で保護されることを確認しました。これは、原産国で商標登録をしている企業が、フィリピンで商標登録をしていなくても、その商標が不正に使用された場合に法的保護を受けられることを意味します。この判決は、フィリピンの知的財産法における重要な前進であり、外国企業がフィリピン市場に参入する際の安心感を高めます。

商標の起源:フィリピンでの利用前に国外で確立されたブランドは誰に属するのか?

本件は、フランスの料理学校「ル・コルドン・ブルー」を運営するRenaud Cointreau & Cie(以下、コワントロー)が、フィリピンのEcole De Cuisine Manille(以下、エコール)に対し、商標「LE CORDON BLEU & DEVICE」の登録を求めた訴訟です。エコールは1948年からフィリピンで「LE CORDON BLEU MANILLE」の名称で料理学校を運営しており、コワントローの商標登録に異議を唱えました。知的財産局(IPO)長官はコワントローの登録を認めましたが、控訴院はこれを支持。エコールは最高裁判所に上訴しました。

本件の核心は、フィリピンの旧商標法(共和国法第166号)の下で、商標の登録を受ける権利が誰にあるのかという点にありました。特に、外国で商標を使用していた者が、フィリピン国内で商標を最初に使い始めた者よりも優先されるかどうか、という点が争点となりました。旧商標法では、商標を登録するためには、その商標の所有者であり、登録申請前にフィリピン国内で少なくとも2か月間、その商標を商業的に使用している必要がありました。

しかし、最高裁判所は、**パリ条約**の存在に着目しました。フィリピンとフランスは共にパリ条約の締約国であり、この条約は、締約国の国民に対し、自国で登録された商標を他の締約国においても保護する義務を課しています。パリ条約第8条は、「商号は、商標の一部を構成するか否かにかかわらず、登録又は出願の義務なしに、同盟国において保護される」と規定しています。

ARTICLE 6bis
(1) 同盟国は、その国の法制が許す限りにおいて職権で、又は利害関係人の請求により、商標であって、登録若しくは使用の国における権限のある当局が当該国において周知のものと認める商標の複製、模倣又は翻訳に当たるものであり、かつ、この条約の特典を享受する権利を有する者の商標であって、同一又は類似の商品について使用されるものと混同を生ずるおそれのあるものについて、登録を拒絶し又は登録を抹消し、及びその使用を禁止することを約定する。この規定は、当該周知商標の主要部分の複製又は当該周知商標と混同を生ずるおそれのある模倣に当たるものについても、適用する。

最高裁判所は、コワントローが1895年からフランスで「ル・コルドン・ブルー」の商標を使用しており、エコールもその事実を知っていたことを指摘しました。さらに、エコールはフィリピンで商標登録をしておらず、その申請もコワントローの申請後に行われたものでした。これらの事実から、最高裁判所は、エコールが「ル・コルドン・ブルー」の商標を有効に取得したとは言えず、コワントローが正当な所有者であると判断しました。

本判決は、パリ条約に基づく**外国商標の保護**を明確にした点で重要です。外国企業は、フィリピンで商標登録をしていなくても、パリ条約に基づいて、フィリピン国内での不正な商標使用に対して法的救済を求めることができるようになりました。これは、フィリピンの知的財産法制における重要な進展であり、国際的なビジネス環境において、商標の保護がより強化されることを意味します。

FAQs

本件における重要な争点は何でしたか? フィリピンで商標を最初に使い始めた者と、外国で長年商標を使用してきた者のうち、どちらが商標登録を受ける権利があるのかという点が争点でした。最高裁判所は、パリ条約に基づき、外国で先に商標を使用していた者を保護しました。
パリ条約とは何ですか? パリ条約は、工業所有権の保護に関する国際条約であり、締約国の国民に対し、他の締約国においても自国の知的財産を保護する義務を課しています。フィリピンもパリ条約の締約国です。
商標登録をしなくても、フィリピンで商標は保護されますか? 本件の判決により、パリ条約の締約国である国の商標は、フィリピンで登録されていなくても保護される可能性があります。ただし、商標が原産国で登録されていることが条件となります。
本判決は、外国企業にとってどのような意味がありますか? 本判決は、外国企業がフィリピン市場に参入する際の安心感を高めます。フィリピンで商標登録をしていなくても、自社の商標が不正に使用された場合に法的保護を受けられる可能性があるからです。
エコールはなぜ敗訴したのですか? エコールは、コワントローが「ル・コルドン・ブルー」の商標を長年使用していることを知っていたにもかかわらず、その商標を無断で使用したと判断されたため、敗訴しました。また、エコールはフィリピンで商標登録をしていませんでした。
本判決は、現在の商標法にも適用されますか? 本判決は、旧商標法に基づいて判断されましたが、現在の知的財産法(共和国法第8293号)においても、パリ条約に基づく外国商標の保護は維持されています。
商標の保護は、消費者にどのような利益をもたらしますか? 商標の保護は、消費者が商品やサービスの出所を明確に識別できるようにし、模倣品や粗悪品から保護します。また、企業がブランド価値を高めるインセンティブを与えることで、品質向上にもつながります。
本判決の法的根拠は何ですか? 本判決の法的根拠は、パリ条約と、フィリピンの旧商標法(共和国法第166号)第37条にあります。第37条は、パリ条約に基づく外国人の権利を規定しています。

本判決は、フィリピンにおける商標法の解釈において重要な役割を果たしています。パリ条約の重要性を再確認し、国際的な商標保護の原則を支持するものです。この判決は、フィリピンの知的財産制度が国際的な基準に合致していることを示し、外国投資家にとって安心材料となるでしょう。

本判決の特定の状況への適用に関するお問い合わせは、ASG Law(お問い合わせ)またはfrontdesk@asglawpartners.comまでメールでお気軽にご連絡ください。

免責事項:この分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。お客様の状況に合わせた具体的な法的助言については、資格のある弁護士にご相談ください。
出典:ECOLE DE CUISINE MANILLE VS. RENAUIL COINTREAU & CIE, G.R. No. 185830, 2013年6月5日

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