本件は、建設契約における10%の留保金、追加工事費用、遅延損害賠償の責任範囲が争われた事例です。最高裁判所は、留保金は契約代金の一部であり、未払い残高とは別途の支払い義務ではないと判断しました。また、契約者の履行遅延により発生した費用超過、過払いについては、契約者の責任としました。本判決は、建設プロジェクトにおける契約当事者間の金銭的責任を明確化し、紛争解決の指針となるものです。
建設プロジェクト、遅延と費用の責任は誰に?最高裁が示す契約履行の境界線
2000年1月10日、教会(COJCOLDS)と建設会社(BTL)は、ミサミスオリエンタル州メディナの集会所建設に関する契約を締結しました。契約金額は12,680,000ペソ、工期は同年1月15日から9月15日までと定められました。しかし、天候不良、停電、設計変更(当事者間で合意された変更指示書1号から12号)などにより、メディナプロジェクトの完成日は延長されました。
その後、BTLはCOJCOLDSに対し、他のプロジェクトでの損失を理由に、95%および100%完了に基づいて請求することを許可してほしいと要請しました。また、サプライヤーへの支払いをCOJCOLDSから直接受け取れるように、譲渡証書を作成することも要請しました。COJCOLDSはこの要請を承諾しました。
2001年8月13日、BTLは資金不足によりメディナプロジェクトの作業を中止しました。これを受けてCOJCOLDSはBTLとの契約を解除し、別の建設会社(Vigor Construction)にプロジェクトの完成を委託しました。
2003年11月12日、BTLはCOJCOLDSに対し、総額28,716,775.40ペソの損害賠償を請求する訴訟をCIAC(建設業仲裁委員会)に提起しました。一方、COJCOLDSは反訴として、BTLのプロジェクト遅延による遅延損害賠償、サプライヤーへの直接支払い分の返還、費用超過などを請求しました。
CIACは、両者の主張の一部を認め、COJCOLDSに対しBTLに2,760,838.79ペソの未払い残高などを支払うよう命じました。一方、BTLに対しCOJCOLDSに1,191,920ペソの遅延損害賠償などを支払うよう命じました。COJCOLDSはこれに不満としてCA(控訴裁判所)に上訴しました。
CAは、CIACの決定を一部修正し、COJCOLDSに対しBTLに未払い残高に加えて10%の留保金を返還するよう命じました。また、BTLに対しCOJCOLDSに過払い分の返還を命じました。遅延損害賠償については、BTLの遅延日数を142日と認定し、賠償額を増額しました。両者はCAの決定に不満として最高裁判所に上訴しました。
最高裁判所は、COJCOLDSの訴えの一部を認め、BTLの訴えを退けました。主な争点は、10%の留保金が契約代金の未払い残高とは別に支払われるべきかどうかでした。最高裁判所は、留保金は契約代金の一部として控除されるものであり、未払い残高とは別に支払われるべきではないと判断しました。
また、追加工事費用についても、契約当事者間の書面による合意がない場合、建設会社は追加費用を請求できないとしました。最高裁判所は、BTLが主張するコンクリート擁壁の建設は、当初の計画に含まれており、追加工事には当たらないと判断しました。変更指示書8号から12号に基づく追加工事についても、COJCOLDSがBTLのサプライヤーに直接支払ったため、BTLの請求は認められませんでした。
さらに、BTLの履行遅延によりCOJCOLDSに生じた費用超過についても、BTLの責任としました。最高裁判所は、契約者がプロジェクトを完了できなかった場合、費用超過は契約者の負担となるとしました。ただし、弁護士費用については、両者ともに悪意があったとは認められないため、相互に負担すべきと判断しました。
最高裁判所の判決は、建設契約における留保金の性質、追加工事費用の請求要件、履行遅延による損害賠償責任を明確にしました。この判決は、建設プロジェクトにおける契約当事者間の権利義務関係を理解する上で重要な示唆を与えるものです。
FAQs
本件の主な争点は何でしたか? | 主な争点は、10%の留保金が契約代金の未払い残高とは別に支払われるべきかどうかでした。最高裁判所は、留保金は契約代金の一部であり、未払い残高とは別途の支払い義務ではないと判断しました。 |
追加工事費用は、どのような場合に請求できますか? | 追加工事費用は、契約当事者間の書面による合意がある場合にのみ請求できます。書面による合意がない場合、建設会社は追加費用を請求できません。 |
履行遅延による損害賠償責任は、どのように判断されますか? | 履行遅延による損害賠償責任は、契約書に定められた遅延損害賠償条項に基づいて判断されます。契約者がプロジェクトを完了できなかった場合、遅延日数に応じて損害賠償金を支払う必要があります。 |
費用超過が発生した場合、誰が負担しますか? | 契約者の履行遅延により費用超過が発生した場合、原則として契約者が負担します。ただし、契約書に別の定めがある場合は、その定めに従います。 |
留保金とは何ですか? | 建設業界における留保金とは、契約金額の一部を差し引いたもので、工事に不備があった場合の修正作業を担保するために留保されます。 |
建築家による工事期間延長の推奨は、法的拘束力がありますか? | はい、本件では、契約条件により、建築家の推奨する工事期間延長は法的拘束力を持つとされました。 |
この判決は、弁護士費用の請求にどのような影響を与えますか? | 本判決では、訴訟当事者のいずれにも悪意が認められなかったため、弁護士費用の相互負担が命じられました。 |
今回の判決で、BTLは最終的にどのような支払いを命じられましたか? | BTLは、遅延損害賠償、費用超過、および変更指示書に基づく過払いの合計金額をCOJCOLDSに支払うよう命じられました。 |
今回の最高裁判所の判断は、建設プロジェクトの契約管理において、契約内容の明確化と履行の重要性を改めて示すものです。契約当事者は、契約締結時に契約条件を十分に理解し、履行状況を適切に管理することで、紛争を未然に防ぐことが重要です。
本判決の適用に関するお問い合わせは、ASG Law(お問い合わせ)または(frontdesk@asglawpartners.com)までご連絡ください。
免責事項:本分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。個別の状況に合わせた法的助言については、資格のある弁護士にご相談ください。
出典:Church of Jesus Christ of Latter Day Saints vs BTL Construction, G.R No. 176439, 2014年1月15日
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