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  • 未払い弁護士費用請求訴訟における立証と適正報酬額の決定

    本判決は、契約期間満了後の労働事件における弁護士費用の請求を巡り、報酬支払いの義務の有無と適切な金額を判断した事例です。弁護士費用を支払う義務があるか否か、弁護士費用請求が認められる場合、その報酬額はどの程度が妥当かを明確にしています。裁判所は、弁護士の活動範囲や事件の複雑さなどを考慮し、契約内容や提供されたサービスの質に基づき、具体的な弁護士報酬額を決定しました。

    訴訟提起に至る経緯と弁護士費用請求の妥当性

    本件は、コンセプト・プレイスメント・リソーシズ社(以下、「依頼者」)が、弁護士リチャード・V・ファンク(以下、「弁護士」)に労働事件の弁護を依頼したことに端を発します。依頼者と弁護士の間には、通常の顧問契約がありましたが、訴訟案件については別途協議することになっていました。労働事件において、弁護士は依頼者のために訴訟活動を行いましたが、顧問契約が終了した後に、弁護士費用を請求しました。

    本件の核心は、顧問契約終了後における弁護士費用請求の可否、およびその金額の妥当性です。依頼者は、契約終了を理由に弁護士費用の支払いを拒否しました。裁判所は、契約が終了していても、依頼者が弁護士のサービスを利用し、その対価を支払うべきであるという判断を示しました。

    裁判所は、弁護士費用の請求を検討するにあたり、両者の間で具体的な合意があったかどうか、弁護士が実際に提供したサービス内容、そしてそのサービスの質と範囲を詳細に検証しました。裁判所は、依頼者が弁護士に労働事件の弁護を依頼し、弁護士が実際に弁護活動を行った事実を重視しました。この事実に基づいて、依頼者は弁護士に対して適切な報酬を支払う義務があると判断しました。

    裁判所は、弁護士が提供したサービスの範囲と質を考慮し、当初の弁護士費用請求額が過大であると判断しました。労働事件の内容、弁護士の活動範囲、事件解決に要した時間、そして依頼者が得た利益などを総合的に評価しました。裁判所は、弁護士費用の適正額を当初請求額から減額し、合理的な金額を提示しました。裁判所は、弁護士報酬の決定にあたり、単に契約の有無だけでなく、提供されたサービスの質と、それによって依頼者が得た利益を重視する姿勢を示しました。

    「事件の内容、弁護士の活動範囲、事件解決に要した時間、そして依頼者が得た利益などを総合的に評価した。」

    裁判所は、弁護士費用について、以下の要素を考慮して判断しました。第一に、弁護士と依頼者との間に明確な合意があるか。第二に、弁護士が実際に提供したサービスの範囲と質。第三に、事件の複雑さや弁護士の専門性。そして、依頼者が得た具体的な利益。これらの要素を総合的に考慮し、弁護士費用の適正額を決定しました。

    裁判所は、過去の判例(BA Finance Corporation vs. Co)を引用し、本件における既判力の原則の適用を検討しました。裁判所は、労働事件の訴訟と弁護士費用請求訴訟は、当事者、訴訟物、訴因が異なるため、既判力の原則は適用されないと判断しました。この判断により、労働事件の判決が弁護士費用請求に影響を与えることはないと結論付けられました。

    裁判所は、弁護士費用の減額について、裁量権の範囲内で行うことができると判示しました。弁護士報酬が過大である場合や、社会通念に照らして不当である場合には、裁判所は弁護士報酬を減額することができます。裁判所は、具体的な事例に基づいて、弁護士報酬の減額を適切に行うことができることを明確にしました。

    FAQs

    この訴訟の主要な争点は何でしたか? 訴訟の主要な争点は、契約期間が満了した後に弁護士が労働事件の弁護士費用を請求できるか否か、また請求できる場合、その金額はどの程度が妥当かという点でした。
    裁判所は弁護士費用の支払い義務をどのように判断しましたか? 裁判所は、依頼者が弁護士に労働事件の弁護を依頼し、弁護士が実際に弁護活動を行った事実を重視し、契約期間が満了していても報酬支払いの義務があると判断しました。
    弁護士費用の金額はどのように決定されましたか? 弁護士費用の金額は、弁護士が提供したサービスの範囲と質、事件の複雑さ、弁護士の専門性、そして依頼者が得た利益などを総合的に評価して決定されました。
    「既判力」とはどういう意味ですか? 「既判力」とは、ある訴訟で確定した判決の内容が、後の訴訟において争うことができない効力を持つことを意味します。
    本件では既判力の原則は適用されましたか? 本件では、労働事件の訴訟と弁護士費用請求訴訟は、当事者、訴訟物、訴因が異なるため、既判力の原則は適用されませんでした。
    裁判所は弁護士費用を減額しましたか? はい、裁判所は弁護士が請求した当初の金額が過大であると判断し、弁護士費用を減額しました。
    弁護士費用を減額する根拠は何ですか? 弁護士費用が過大である場合や、社会通念に照らして不当である場合には、裁判所は裁量権に基づき弁護士費用を減額することができます。
    本判決から得られる教訓は何ですか? 弁護士に依頼する際には、契約内容を明確にし、弁護士費用の取り決めをしっかり行うことが重要です。また、弁護士報酬が過大であると感じた場合は、専門家への相談を検討することが望ましいです。

    本判決は、弁護士費用請求訴訟における重要な判断基準を示しており、同様の紛争解決において参考となるでしょう。

    For inquiries regarding the application of this ruling to specific circumstances, please contact ASG Law through contact or via email at frontdesk@asglawpartners.com.

    Disclaimer: This analysis is provided for informational purposes only and does not constitute legal advice. For specific legal guidance tailored to your situation, please consult with a qualified attorney.
    Source: CONCEPT PLACEMENT RESOURCES, INC. VS. RICHARD V. FUNK, G.R. No. 137680, February 06, 2004

  • 顧問契約があっても追加で弁護士費用を請求できる?最高裁判所の判例を解説

    顧問弁護士契約がある場合でも、特別な法的サービスに対して追加報酬を請求できるか?

    G.R. No. 120592, 1997年3月14日

    弁護士費用、特に顧問契約を結んでいる場合の追加費用は、多くの企業や個人にとって複雑で理解しにくい問題です。顧問契約があるからといって、すべての法的サービスがその範囲内で提供されるとは限りません。今回取り上げる最高裁判所の判例、TRADERS ROYAL BANK EMPLOYEES UNION-INDEPENDENT VS. NATIONAL LABOR RELATIONS COMMISSION AND EMMANUEL NOEL A. CRUZ は、まさにこの点について重要な判断を示しています。この判例を詳しく分析することで、顧問契約と特別な法的サービスにおける弁護士費用の請求について、より深く理解することができます。

    顧問契約と特別な弁護士費用:フィリピン法における法的背景

    フィリピン法において、弁護士費用は大きく分けて2つの概念があります。一つは「通常の弁護士費用」、もう一つは「特別な弁護士費用」です。通常の弁護士費用は、クライアントが弁護士に法的サービスを依頼し、その対価として支払う合理的な報酬です。これは、弁護士とクライアント間の契約に基づいています。

    一方、特別な弁護士費用は、訴訟において敗訴した当事者が、勝訴した当事者に対して損害賠償として支払うように裁判所が命じる費用です。これは、民法第2208条などで定められており、原則として弁護士ではなくクライアントに支払われます。ただし、クライアントと弁護士の間で、この費用を弁護士の追加報酬または報酬の一部とすることを合意している場合は、弁護士に支払われることもあります。

    今回のケースで問題となっているのは、前者の「通常の弁護士費用」です。特に、顧問契約が存在する場合に、顧問契約の範囲外の特別な法的サービスに対して、弁護士が追加で費用を請求できるのかが争点となりました。

    顧問契約には、一般顧問契約(general retainer)と特別顧問契約(special retainer)の2種類があります。一般顧問契約は、日常的な法律相談や簡単な法的業務を対象とした契約で、月額顧問料などが支払われます。一方、特別顧問契約は、特定の訴訟事件や特別な法的サービスを対象とした契約で、別途費用が定められます。一般顧問契約の顧問料は、弁護士が顧問先からの相談に応じられるように待機していること、他のクライアントからの依頼を断る機会費用に対する対価としての意味合いも持ちます。

    今回の判例では、顧問契約が一般顧問契約であったため、問題となった労働事件の対応が顧問契約の範囲に含まれるのか、追加費用を請求できるのかが重要なポイントとなりました。

    TRADERS ROYAL BANK EMPLOYEES UNION事件の経緯

    事件の経緯は以下の通りです。

    1. 1987年2月26日、TRADERS ROYAL BANK EMPLOYEES UNION(以下、「組合」)とE.N.A. Cruz法律事務所(以下、「弁護士事務所」)は顧問契約を締結。月額顧問料は3,000ペソ。
    2. 組合員は、雇用主であるTRADERS ROYAL BANK(以下、「銀行」)に対し、祝日手当、期中ボーナス、年末ボーナスの支払いを請求。組合は弁護士事務所にこの件を依頼。
    3. 弁護士事務所は、組合を代理して労働紛争をNLRC(国家労働関係委員会)に提訴(NLRC-NCR Certified Case No. 0466)。
    4. 1988年9月2日、NLRCは従業員勝訴の決定を下し、銀行にボーナス等の支払いを命じる。
    5. 銀行は最高裁判所にNLRCの決定を不服として上訴。
    6. 1990年8月30日、最高裁判所はNLRCの決定を一部変更し、期中ボーナスと年末ボーナスの支払いを削除、祝日手当のみを認める決定を下す。
    7. 銀行は最高裁判所の判決に従い、祝日手当175,794.32ペソを組合員に支払う。
    8. 1990年9月18日、弁護士事務所は最高裁判所の判決を受領。
    9. 1990年10月8日、弁護士事務所は組合、銀行、NLRCに対し、祝日手当に対する弁護士先取特権を行使する旨を通知。
    10. 1991年7月2日、弁護士事務所は労働仲裁官に対し、弁護士費用の決定を申し立て。祝日手当の10%である17,579.43ペソを弁護士費用として支払うよう請求。
    11. 労働仲裁官は弁護士事務所の申立てを認め、組合に17,574.43ペソの弁護士費用を支払うよう命じる。
    12. 組合はNLRCに仲裁官の命令を不服として上訴。
    13. 1994年10月19日、NLRC第一部仲裁官の命令を支持する決議。
    14. 1995年5月23日、NLRCは組合の再考 motion を棄却。
    15. 組合は最高裁判所にNLRCの決議を不服として上訴(本件)。

    組合は、NLRCが弁護士費用を認めたことは、最高裁判所の確定判決を変更するものであり、管轄権の濫用であると主張しました。一方、弁護士事務所は、弁護士費用の請求は本訴訟の付随的なものであり、弁護士先取特権の行使に基づくものであると反論しました。

    最高裁判所の判断:量子 meruit の原則

    最高裁判所は、弁護士事務所の弁護士費用請求を認めました。その理由として、以下の点を指摘しました。

    • 弁護士費用請求は、主要な訴訟事件の付随的な問題であり、最高裁判所の判決後であってもNLRCが管轄権を有すると判断しました。
    • 顧問契約における月額顧問料3,000ペソは、一般的な法律相談等のサービスに対する対価であり、本件労働事件のような特別な法的サービスに対する費用は含まれていないと解釈しました。
    • 顧問契約書には、特別な法的サービスについては別途合意が必要である旨が規定されており、本件労働事件は特別な法的サービスに該当すると判断しました。
    • 弁護士事務所は、組合のために労働事件で勝利判決を獲得し、組合は利益を得ている。したがって、弁護士事務所は、量子 meruit (相当な対価)の原則に基づき、追加の弁護士費用を請求する権利を有するとしました。

    最高裁判所は、弁護士費用を決定するにあたり、労働法第111条(不当な賃金不払いの場合の弁護士費用は回収額の10%を上限とする)のみに依拠することは不適切であるとしました。そして、弁護士の専門職報酬の妥当性を判断するための基準(弁護士職務倫理規範第20.01条に codified)を考慮すべきであるとしました。これらの基準には、弁護士が費やした時間とサービスの程度、事件の新規性と困難性、訴訟の目的の重要性、要求されるスキル、他の雇用の喪失の可能性、類似サービスの慣習的な料金、訴訟額とクライアントが得た利益、報酬の偶発性または確実性、雇用の性格、弁護士の専門的地位などが含まれます。

    本件では、労働仲裁官が労働法第111条のみに基づいて弁護士費用を決定したことは不適切であるとしながらも、事件を差し戻すことなく、最高裁判所自身が記録に基づいて弁護士費用を10,000ペソと決定しました。

    実務上の教訓とFAQ

    この判例から得られる実務上の教訓は以下の通りです。

    • 顧問契約を締結する際には、顧問契約の範囲を明確に定めることが重要です。特に、訴訟事件等の特別な法的サービスが顧問契約の範囲に含まれるのか、別途費用が発生するのかを明確に規定する必要があります。
    • 顧問契約が一般顧問契約である場合、特別な法的サービスについては別途費用が発生する可能性があることを理解しておく必要があります。
    • 弁護士は、顧問契約の範囲外の特別な法的サービスを提供した場合、量子 meruit の原則に基づき、追加の弁護士費用を請求することができます。

    よくある質問 (FAQ)

    Q1: 顧問契約の種類にはどのようなものがありますか?

    A1: 主に一般顧問契約(general retainer)と特別顧問契約(special retainer)があります。一般顧問契約は日常的な法律相談や簡単な法的業務を対象とし、特別顧問契約は特定の訴訟事件や特別な法的サービスを対象とします。

    Q2: 一般顧問契約の顧問料は何に対する対価ですか?

    A2: 一般顧問契約の顧問料は、弁護士が顧問先からの相談に応じられるように待機していること、他のクライアントからの依頼を断る機会費用に対する対価としての意味合いを持ちます。

    Q3: 量子 meruit (相当な対価)の原則とは何ですか?

    A3: 契約がない場合や契約内容が不明確な場合に、提供されたサービスに見合う相当な対価を支払うべきであるという原則です。弁護士費用の場合、弁護士が提供したサービスの価値を公正に評価し、報酬を決定するために用いられます。

    Q4: 弁護士費用を決定する際の基準は何ですか?

    A4: 弁護士が費やした時間とサービスの程度、事件の新規性と困難性、訴訟の目的の重要性、要求されるスキル、他の雇用の喪失の可能性、類似サービスの慣習的な料金、訴訟額とクライアントが得た利益、報酬の偶発性または確実性、雇用の性格、弁護士の専門的地位などが考慮されます。

    Q5: 顧問契約で弁護士費用を明確にするためにはどうすればよいですか?

    A5: 顧問契約書に、顧問契約の範囲、対象となるサービス、費用、特別な法的サービスに関する規定などを詳細に記載することが重要です。契約締結前に弁護士と十分に協議し、合意内容を書面で確認することが望ましいです。

    Q6: 労働事件の弁護士費用はどのように計算されますか?

    A6: 労働法第111条では、不当な賃金不払いの場合の弁護士費用は回収額の10%を上限と定めていますが、これはあくまで上限であり、実際の弁護士費用は事件の内容や弁護士のサービス内容に応じて量子 meruit の原則に基づいて決定されることがあります。


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  • 弁護士報酬の適正評価:フィリピン最高裁判所判例に学ぶ量子 meruit の原則

    弁護士報酬は「当然の権利」ではない:量子 meruit の原則と適正な評価基準

    G.R. No. 124074, 1997年1月27日

    はじめに

    弁護士に依頼した場合、その費用はいくらになるのか?多くの人が抱く疑問です。弁護士費用は、依頼内容や事件の難易度によって大きく変動するため、明確な基準が分かりにくいのが現状です。もし、弁護士との間で明確な報酬契約がない場合、あるいは契約内容が不明確な場合、弁護士は一体いくらの報酬を請求できるのでしょうか?

    本稿では、フィリピン最高裁判所の判例、RESEARCH AND SERVICES REALTY, INC. v. COURT OF APPEALS AND MANUEL S. FONACIER, JR. (G.R. No. 124074, 1997年1月27日) を基に、弁護士報酬における「量子 meruit (quantum meruit)」の原則について解説します。この判例は、弁護士報酬が当然に認められるものではなく、提供されたサービスに見合う「合理的な対価」として評価されるべきであることを明確に示しています。弁護士報酬の算定基準、特に量子 meruit の原則について理解を深めることは、弁護士に依頼するすべての方にとって非常に重要です。

    法的背景:量子 meruit の原則とは

    量子 meruit とは、ラテン語で「当然の価値に見合うだけ」という意味を持つ法原則です。契約関係が明確でない場合や、契約内容が一部履行された場合に、提供されたサービスや労力に見合う合理的な対価を請求することを認めるものです。弁護士報酬の分野においては、弁護士と依頼者との間で明確な報酬契約がない場合、または契約が存在してもその内容が争われる場合に、この量子 meruit の原則が適用されます。

    フィリピン法曹倫理綱領第20条1項は、弁護士報酬を決定する際の指針となる要素を列挙しています。これには、以下の項目が含まれます。

    (a) 費やされた時間と、提供または要求されたサービスの範囲
    (b) 問題の新規性と難易度
    (c) 対象事項の重要性
    (d) 要求されるスキル
    (e) 提示された事件の受任の結果として他の職を失う可能性
    (f) 同様のサービスの慣習的な料金および弁護士が所属する IBP 支部の料金表
    (g) 紛争に関与する金額およびサービスからクライアントが得られる利益
    (h) 報酬の偶発性または確実性
    (i) 雇用形態の性格、一時的であるか確立されているか
    (j) 弁護士の専門的地位

    これらの要素は、弁護士が請求する報酬が「合理的」であるかどうかを判断する上で重要な基準となります。量子 meruit の原則は、これらの要素を総合的に考慮し、公平かつ適正な弁護士報酬を導き出すためのものです。

    例えば、契約書が存在しない場合でも、弁護士が実際に事件処理に尽力し、依頼者が利益を得た場合、弁護士は量子 meruit に基づいて報酬を請求できます。逆に、契約書に定められた報酬額が、弁護士の貢献度や事件の性質に照らして著しく不当であると判断された場合、裁判所は量子 meruit の原則に基づいて報酬額を調整することがあります。

    判例の概要:RESEARCH AND SERVICES REALTY, INC. v. COURT OF APPEALS

    本件は、不動産会社 RESEARCH AND SERVICES REALTY, INC. (以下「RSRI」) と、弁護士 MANUEL S. FONACIER, JR. (以下「フォナシエ弁護士」) との間で争われた弁護士報酬に関する訴訟です。RSRI は、フォナシエ弁護士との間で顧問契約を締結していましたが、訴訟事件(契約解除訴訟)において、フォナシエ弁護士の報酬額が争点となりました。

    事件の経緯:

    1. 1969年、RSRI はカレオン家と共同事業契約を締結し、カレオン家の土地を開発・販売することになりました。
    2. 1983年、カレオン家らは RSRI を相手取り、共同事業契約の解除訴訟を提起しました(民事訴訟第612号)。
    3. 1985年、RSRI はフォナシエ弁護士に訴訟代理を依頼しました。顧問契約では、月額顧問料と、回収事件における成功報酬、訴訟で回収できた弁護士費用が定められていましたが、本件訴訟は回収事件ではありませんでした。
    4. 1992年、RSRI はフォナシエ弁護士に秘密裏に、別の不動産開発会社フィリストリーム社と契約を締結し、共同事業契約上の権利義務を譲渡しました。
    5. 1993年3月、RSRI はフォナシエ弁護士との委任契約を解除しました。
    6. フォナシエ弁護士は、RSRI がフィリストリーム社から契約金を受け取ったことを知り、弁護士報酬の支払いを求める申立てを行いました。当初、成功報酬として契約金の10%(70万ペソ)を請求しましたが、裁判所は量子 meruit に基づき60万ペソの支払いを命じました。
    7. RSRI はこれを不服として控訴しましたが、控訴裁判所は一審判決を支持しました。
    8. RSRI はさらに最高裁判所に上告しました。

    最高裁判所の判断:

    最高裁判所は、一審および控訴裁判所の判断を覆し、量子 meruit の原則に基づいて弁護士報酬を再評価するよう命じました。最高裁判所は、以下の点を指摘しました。

    • 顧問契約は存在するものの、本件訴訟(契約解除訴訟)は回収事件ではないため、契約上の成功報酬条項は直接適用されない。
    • 弁護士報酬は、契約で明確に定められていない場合でも、量子 meruit の原則に基づいて請求できる。
    • 量子 meruit に基づく報酬額は、弁護士の貢献度、事件の性質、依頼者が得た利益などを総合的に考慮して決定されるべきである。
    • 本件では、フォナシエ弁護士が契約交渉に直接関与したわけではなく、報酬額の算定根拠が不明確である。

    最高裁判所は、控訴裁判所が弁護士報酬を成功報酬として認定した点を誤りであるとし、事件を一審裁判所に差し戻し、量子 meruit の原則に基づいて弁護士報酬額を再算定するよう指示しました。

    「量子 meruit とは、単純に「彼が値するだけ」を意味します。しかし、いかなる場合でも、弁護士は、規則138条24項に従い、合理的な報酬額を超える回収を認められるべきではありません…」

    「弁護士報酬の請求の合理性を判断する際に考慮すべき状況として、当裁判所は以前に以下を宣言しています。(1) 提供されたサービスの量と性質。(2) 労力、時間、および関与した手間。(3) サービスが提供された訴訟または事業の性質と重要性。(4) 課せられた責任。(5) 紛争によって影響を受ける、または雇用に関与する金額または財産の価値。(6) サービスの実施に求められるスキルと経験。(7) 弁護士の専門的性格と社会的地位。(8) 得られた結果。および (9) 手数料が絶対的であるか偶発的であるか。偶発的な場合、そうでない場合よりも大幅に高額な手数料を請求することが適切であると認識されています。」

    実務上の意義:弁護士報酬に関する教訓

    本判例は、弁護士報酬に関する重要な教訓を私たちに与えてくれます。弁護士に依頼する際には、報酬について明確な契約を締結することが不可欠です。契約書には、基本報酬、成功報酬、実費、支払い時期など、報酬に関するすべての事項を具体的に記載する必要があります。もし、契約内容が不明確な場合や、契約書が存在しない場合には、量子 meruit の原則が適用される可能性があります。この原則に基づくと、弁護士は提供したサービスに見合う「合理的な対価」のみを請求できることになります。したがって、弁護士報酬が高額すぎると感じた場合は、量子 meruit の原則を根拠に、弁護士と交渉したり、裁判所に判断を仰ぐことも検討すべきでしょう。

    重要なポイント:

    • 弁護士報酬は、契約書で明確に定めることが重要。
    • 契約書がない場合や不明確な場合は、量子 meruit の原則が適用される。
    • 量子 meruit に基づく報酬額は、弁護士の貢献度や事件の性質などを考慮して決定される。
    • 弁護士報酬が高すぎると感じたら、量子 meruit の原則を検討し、弁護士と交渉する余地がある。

    よくある質問 (FAQ)

    Q1: 弁護士に依頼する際、最初に確認すべきことは何ですか?

    A1: 弁護士費用(報酬)について、明確な契約書を作成することです。契約書には、報酬額、支払い方法、支払い時期などを明記し、後々のトラブルを防ぐようにしましょう。

    Q2: 弁護士報酬の種類にはどのようなものがありますか?

    A2: 主に、着手金、報酬金、時間制報酬(タイムチャージ)、顧問料などがあります。事件の種類や弁護士の方針によって異なりますので、事前に確認しましょう。

    Q3: 量子 meruit の原則は、どのような場合に適用されますか?

    A3: 弁護士との間で明確な報酬契約がない場合や、契約内容が不明確な場合、または契約内容が一部履行された場合に適用されます。裁判所が「合理的な対価」を判断します。

    Q4: 弁護士報酬が不当に高額だと感じた場合、どうすればよいですか?

    A4: まずは弁護士に報酬額の根拠を説明してもらい、交渉を試みましょう。それでも解決しない場合は、弁護士会に相談したり、裁判所に報酬額の減額を求める訴訟を提起することも可能です。

    Q5: フィリピンで弁護士を探す際の注意点は?

    A5: フィリピンの弁護士は専門分野が多岐にわたります。ご自身の相談内容に合った専門分野を持つ弁護士を選ぶことが重要です。また、弁護士の経歴や実績、評判などを事前に確認することも大切です。

    ASG Law は、フィリピン法務に精通した専門家集団です。弁護士報酬に関するご相談、その他フィリピン法務に関するご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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