証拠としての供述書の利用:フィリピンにおける適格性と手続き
G.R. NO. 133154, December 09, 2005
交通事故で息子を亡くした親が、過失運転の疑いのある運転手に対して損害賠償を求めるケースを考えてみましょう。裁判で重要な証拠となるのが、事故を目撃した人物の証言です。しかし、もしその目撃者が海外に住んでいて、裁判に出廷できない場合はどうなるでしょうか?この問題を解決するのが、供述書です。供述書は、裁判外で行われる証人尋問の内容を記録したもので、一定の条件の下で裁判の証拠として利用できます。
供述書利用の法的背景
フィリピンの民事訴訟規則第23条第4項には、供述書が証拠として利用できる条件が規定されています。原則として、証人は法廷で直接証言する必要がありますが、例外的に供述書が証拠として認められる場合があります。例えば、証人が死亡した場合、裁判所から100キロ以上離れた場所に居住している場合、またはフィリピン国外にいる場合などです。
第23条第4項の関連部分を以下に引用します。
SEC. 4. Use of depositions.- At the trial . . . any part or all of a deposition, so far as admissible under the rules of evidence, may be used against any party who was present or represented at the taking of the deposition or who had due notice thereof, in accordance with any of the following provisions:
(c) The deposition of a witness, whether or not a party, may be used by any party for any purpose if the court finds: (1) that the witness is dead; or (2) that the witness resides at a distance more than one hundred (100) kilometers from the place of trial or hearing, or is out of the Philippines, unless it appears that his absence was procured by the party offering the deposition; or (3) that the witness is unable to attend or testify because of age, sickness, infirmity, or imprisonment; or (4) that the party offering the deposition has been unable to procure the attendance of the witness by subpoena; or (5) upon application and notice, that such exception circumstances exist and with due regard to the importance of presenting the testimony of witnesses orally in open court, to allow the deposition to be used. (Emphasis supplied).
重要なのは、供述書を提出する側が、これらの条件を満たしていることを証明する責任を負うということです。例えば、証人が海外にいることを証明するためには、移民局の証明書などの証拠を提出する必要があります。
Jowel Sales対Cyril A. Sabino事件の分析
この事件では、原告の息子が交通事故で亡くなり、被告である運転手Jowel Salesに対して損害賠償請求訴訟を起こしました。原告は、事故の目撃者であるBuaneres Corralの供述書を証拠として提出しようとしました。しかし、被告は、供述書が証拠として認められるための条件が満たされていないと主張しました。
事件の経緯は以下の通りです。
- 2005年12月9日、最高裁判所は、CA-G.R. SP No. 44078号事件における控訴裁判所の判決を審理しました。
- 原告は、Buaneres Corralの供述書を証拠として提出しました。
- 被告は、供述書の適格性に異議を唱えました。
- 第一審裁判所は、供述書を証拠として認めました。
- 控訴裁判所は、第一審裁判所の決定を支持しました。
- 最高裁判所は、控訴裁判所の決定を支持し、被告の訴えを退けました。
最高裁判所は、Buaneres Corralがフィリピン国外にいるという事実が、移民局の証明書によって証明されていると判断しました。この証明書は、Corralが1996年5月28日にフィリピンを出国したことを示していました。最高裁判所は、被告がCorralが帰国したという証拠を提出しなかったため、供述書を証拠として認めることは適切であると判断しました。
最高裁判所は、以下の点を強調しました。
「裁判所は、証人が証言できない状態にあるという当事者の陳述を受け入れるのが通例である。」
また、最高裁判所は、被告が供述書の作成時に証人尋問に参加したとしても、供述書の適格性に対する異議を放棄したとは見なされないと判断しました。これは、証拠の適格性に対する異議は、証拠が実際に法廷で提示された時に行うことができるためです。
実務上の教訓
この判決から得られる教訓は以下の通りです。
- 供述書を証拠として利用するためには、証人が法廷で証言できない理由を証明する必要があります。
- 移民局の証明書は、証人がフィリピン国外にいることを証明するための有効な証拠となります。
- 供述書の作成時に証人尋問に参加したとしても、供述書の適格性に対する異議を放棄したとは見なされません。
よくある質問(FAQ)
Q:供述書は、どのような場合に証拠として利用できますか?
A:証人が死亡した場合、裁判所から100キロ以上離れた場所に居住している場合、またはフィリピン国外にいる場合などです。
Q:供述書を証拠として利用するためには、どのような手続きが必要ですか?
A:供述書を提出する側は、証人が法廷で証言できない理由を証明する必要があります。例えば、証人が海外にいることを証明するためには、移民局の証明書などの証拠を提出する必要があります。
Q:供述書の作成時に証人尋問に参加した場合、供述書の適格性に対する異議を放棄したと見なされますか?
A:いいえ、供述書の作成時に証人尋問に参加したとしても、供述書の適格性に対する異議を放棄したとは見なされません。証拠の適格性に対する異議は、証拠が実際に法廷で提示された時に行うことができます。
Q:供述書の証拠能力を争う場合、どのような点に注意すべきですか?
A:供述書が証拠として認められるための条件が満たされているかどうかを慎重に検討し、必要な証拠を収集する必要があります。
Q:供述書以外に、証人が法廷で証言できない場合に利用できる証拠はありますか?
A:宣誓供述書、録音、録画などの証拠も利用できます。
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