不法なストライキ参加者の解雇の法的根拠と労働者の権利
G.R. Nos. 98295-99, April 10, 1996
はじめに
ストライキは、労働者が使用者に対して集団的な要求を突きつける強力な手段です。しかし、すべてのストライキが合法的に認められるわけではありません。不法なストライキに参加した場合、労働者は解雇されるリスクがあります。本稿では、フィリピン最高裁判所の判例を基に、不法なストライキに参加した労働者の解雇の法的根拠と、労働者の権利について解説します。
本件は、International Container Terminal Services, Inc. (ICTSI) と、Aduana Skilled and Unskilled Union (ADSULU) などの労働組合との間の紛争です。ICTSIが港湾運営を引き継いだ際、一部の労働者が解雇され、労働組合がストライキを実施しました。裁判所は、このストライキが不法であると判断し、ストライキに参加した労働者の解雇について判断しました。
法的背景
フィリピン労働法(労働法典)は、労働者のストライキ権を保障していますが、その権利は絶対的なものではありません。労働法典第264条(a)は、不法なストライキに参加した労働者に対する懲戒処分について規定しています。重要な条文を以下に引用します。
「労働組合の役員が、不法なストライキに故意に参加した場合、または労働者もしくは労働組合の役員が、ストライキ中に不法行為を故意に行った場合、その雇用 status を失ったと宣言されることがあります。」
この条文は、ストライキが不法である場合、またはストライキ中に不法行為が行われた場合、労働者が解雇される可能性があることを示しています。しかし、解雇が認められるためには、労働者が「故意に」不法行為に参加したことを証明する必要があります。
過去の判例では、ストライキ中の不法行為とは、暴力行為、器物損壊、他の労働者の業務妨害などが該当するとされています。単にストライキに参加しただけでは、解雇の理由にはなりません。労働者が、不法行為を認識し、積極的に関与したことを証明する必要があります。
事件の経緯
本件では、ICTSIがマニラ国際コンテナターミナル(MICT)の運営を引き継いだ際、以前の運営会社で雇用されていた一部の労働者が解雇されました。これに対し、ADSULUなどの労働組合は、不当解雇を主張し、ストライキを実施しました。
- 1988年8月、ADSULUとLISLUは、ICTSIに対してストライキを通告しました。
- 同年8月16日、最初のストライキが実施されました。
- 同年8月17日、ICTSI、ADSULU-LISLU、PPA、APCWUの間で合意が成立し、ピケットラインは解除されました。
- 1989年2月、ADSULUは再びストライキを通告し、同年3月1日から3日にかけてストライキを実施しました。
- ICTSIは、これらのストライキが不法であると主張し、労働組合を提訴しました。
労働関係委員会(NLRC)は、最初のストライキは不法であると判断しましたが、ICTSIが一部の労働者の雇用を延長したことは、事実上の雇用とみなされると判断しました。NLRCは、これらの労働者の解雇は不当であるとし、復職と未払い賃金の支払いを命じました。また、2回目のストライキも不法であると判断しましたが、一部の労働者の復職を命じました。
ICTSIは、NLRCの決定を不服として、最高裁判所に上訴しました。
最高裁判所は、NLRCの決定を支持し、ICTSIの上訴を棄却しました。
最高裁判所は、以下の点を強調しました。
- ICTSIが一部の労働者の雇用を延長したことは、事実上の雇用とみなされる。
- ストライキが不法であっても、ストライキ中に不法行為を行ったことを証明する必要がある。
- 労働者がストライキのリーダーであったことを証明する必要がある。
裁判所は、労働者Paanoの証言を引用し、彼がストライキのリーダーであったことを示す証拠はないと判断しました。
「弁護士DURIAN:訴状に記載されている21名のみが、1989年3月1日以降にICTSIの給与台帳に実際に記載されていた従業員で、ストライキを起こした者ではありませんか?」
証人:私たちだけではありませんでした。たくさんいました。
弁護士DURIAN:ICTSIの給与台帳にすでに雇用されていた他の従業員のうち、1989年3月1日以降にICTSIに加わった者は何人ですか?
証人:彼らはストライキグループのメンバーとして特定されていません。なぜなら、彼らはそばに立っているだけで、円を作っていたグループで活動していた者だけが特定されたからです。
裁判所は、Paanoがストライキのリーダーであったことを示す証拠はないと判断しました。
実務上の教訓
本判決から得られる教訓は以下のとおりです。
- 使用者は、労働者の雇用を延長する場合、事実上の雇用とみなされる可能性があることを認識する必要があります。
- 使用者は、ストライキに参加した労働者を解雇する場合、ストライキが不法であるだけでなく、労働者がストライキ中に不法行為を行ったことを証明する必要があります。
- 労働組合は、ストライキを実施する場合、合法的な範囲内で行う必要があります。
よくある質問
Q: ストライキが不法となるのはどのような場合ですか?
A: ストライキが不法となるのは、労働法典に違反する場合や、労働協約に違反する場合などです。例えば、予告期間なしにストライキを実施した場合や、暴力的な手段を用いた場合などが該当します。
Q: ストライキ中に不法行為を行った場合、どのような責任を負いますか?
A: ストライキ中に不法行為を行った場合、刑事責任を問われる可能性があります。また、使用者から損害賠償を請求される可能性もあります。
Q: ストライキに参加した場合、必ず解雇されますか?
A: ストライキに参加した場合でも、必ず解雇されるわけではありません。解雇されるのは、ストライキが不法であり、かつ労働者がストライキ中に不法行為を行った場合に限られます。
Q: 不当解雇された場合、どうすればよいですか?
A: 不当解雇された場合、労働関係委員会(NLRC)に訴えを提起することができます。NLRCは、解雇の有効性を判断し、必要に応じて復職や損害賠償を命じることができます。
Q: ストライキ権はどのような場合に制限されますか?
A: ストライキ権は、公共の利益を保護するために制限される場合があります。例えば、医療、運輸、電力などの essential services に従事する労働者のストライキは、一定の制限を受けることがあります。
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