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  • 労働組合費の不払い:使用者による不当労働行為の可能性

    労働組合費の不払い:使用者による不当労働行為の可能性

    G.R. No. 235569, December 13, 2023

    労働組合費の不払い問題は、単なる金銭的な問題に留まらず、労働者の団結権を侵害する不当労働行為に発展する可能性があります。本稿では、フィリピン最高裁判所の判決を基に、労働組合費の不払いと不当労働行為の関係について解説します。

    はじめに

    労働組合は、労働者の権利を守るために重要な役割を果たしています。労働組合の活動を支える資金源の一つが、組合員から徴収される組合費です。使用者が、正当な理由なく組合費の徴収を妨げたり、徴収した組合費を労働組合に支払わなかったりする場合、労働者の団結権が侵害され、不当労働行為に該当する可能性があります。

    本稿では、South Cotabato Integrated Port Services, Incorporated (SCIPSI)事件を取り上げ、労働組合費の不払いと不当労働行為の関係について、最高裁判所の判断を詳しく解説します。

    法的背景

    フィリピン労働法は、労働者の団結権を保障しており、使用者は労働者の団結活動を妨害する行為を禁止されています。労働法第259条は、使用者が行ってはならない不当労働行為を列挙しており、その中には「労働者の団結権の行使を妨害、制限、または強要する行為」が含まれています。

    労働法第259条(a)には、次のように規定されています。

    (a) 労働者の団結権の行使を妨害、制限、または強要すること。

    最高裁判所は、労働組合費のチェックオフ条項(給与からの天引きによる組合費徴収)の遵守は、労働組合の活動を支える上で不可欠であると判示しています。使用者がチェックオフ条項を遵守しない場合、労働組合の資金源が断たれ、労働組合の活動が阻害される可能性があります。これは、労働者の団結権を侵害する不当労働行為に該当すると解釈されます。

    事件の概要

    本件は、Makar Port Labor Organization (MPLO)が、使用者であるSCIPSIに対し、組合費の不払いを理由に不当労働行為を訴えたものです。MPLOは、SCIPSIが2006年8月から2007年2月までの間、組合員から徴収した組合費を支払わなかったと主張しました。

    事件の経緯は以下の通りです。

    • 2010年8月16日:MPLOがDOLE(労働雇用省)に不当労働行為の申立てを行う。
    • 2010年12月13日:Med-Arbiter(調停仲裁人)が、SCIPSIに対し、未払い組合費の支払いを命じる。
    • 2012年1月31日:BLR(労働関係局)が、Med-Arbiterの決定を一部修正し、SCIPSIに対し、組合員リストの提出と未払い組合費の支払いを命じる。
    • 2017年1月31日:CA(控訴裁判所)が、BLRの決定を支持する。

    最高裁判所は、CAの決定を覆し、Med-Arbiterには本件を審理する権限がないと判断しました。最高裁判所は、本件は労働組合内の紛争ではなく、使用者の不当労働行為に関するものであると認定しました。

    最高裁判所は、次のように述べています。

    労働組合費のチェックオフ条項の遵守は、労働組合の活動を支える上で不可欠である。使用者がチェックオフ条項を遵守しない場合、労働組合の資金源が断たれ、労働組合の活動が阻害される可能性がある。これは、労働者の団結権を侵害する不当労働行為に該当すると解釈される。

    また、最高裁判所は、MPLOの代表者であるマリオ・マリゴン氏が、訴訟を提起する権限を有していなかったと判断しました。マリゴン氏は、2007年12月に解雇されており、労働組合の代表者としての資格を失っていたためです。

    実務上の影響

    本判決は、労働組合費の不払い問題が、単なる金銭的な問題に留まらず、不当労働行為に発展する可能性があることを明確にしました。使用者は、労働組合との間で締結されたチェックオフ条項を遵守し、組合費を適切に支払う必要があります。さもなければ、労働者の団結権を侵害する不当労働行為に問われる可能性があります。

    本判決から得られる教訓は以下の通りです。

    • 使用者は、労働組合との間で締結されたチェックオフ条項を遵守すること。
    • 使用者は、組合費の支払いを遅延させたり、拒否したりしないこと。
    • 労働組合は、組合員の団結権を守るために、使用者に対し、組合費の支払いを求めること。

    よくある質問

    以下に、労働組合費の不払い問題に関するよくある質問とその回答をまとめました。

    Q1: 労働組合費のチェックオフ条項とは何ですか?

    A1: 労働組合費のチェックオフ条項とは、使用者が労働者の給与から組合費を天引きし、労働組合に支払うことを定めた条項です。この条項は、労働組合の資金源を確保し、労働組合の活動を支える上で重要な役割を果たしています。

    Q2: 使用者が組合費の支払いを拒否した場合、どうすればよいですか?

    A2: 使用者が組合費の支払いを拒否した場合、労働組合は、DOLEに対し、不当労働行為の申立てを行うことができます。また、労働組合は、使用者に対し、組合費の支払いを求める訴訟を提起することもできます。

    Q3: 労働組合の代表者が訴訟を提起する権限がない場合、どうなりますか?

    A3: 労働組合の代表者が訴訟を提起する権限がない場合、訴訟は却下される可能性があります。労働組合は、訴訟を提起する前に、代表者が正当な権限を有していることを確認する必要があります。

    Q4: 労働組合費の不払いは、必ず不当労働行為に該当しますか?

    A4: 労働組合費の不払いが、必ず不当労働行為に該当するわけではありません。しかし、使用者が正当な理由なく組合費の支払いを拒否した場合、労働者の団結権を侵害する不当労働行為に該当する可能性があります。

    Q5: 労働組合費の不払い問題について、弁護士に相談できますか?

    A5: はい、労働組合費の不払い問題について、弁護士に相談することができます。弁護士は、労働組合の権利を守り、使用者との交渉や訴訟を支援することができます。

    フィリピン法に関してお困りの際は、ASG Lawにご相談ください。お問い合わせまたはメールkonnichiwa@asglawpartners.comまでご連絡ください。

  • 労働組合費の適法なチェックオフ:フィリピン最高裁判所の判例解説

    労働組合費の特別徴収、適法となる要件とは?最高裁判所判例から学ぶ

    [G.R. No. 106518, March 11, 1999] ABS – CBN SUPERVISORS EMPLOYEE UNION MEMBERS, PETITIONER, VS. ABS – CBN BROADCASTING CORP., RESPONDENTS.

    フィリピンにおいて、労働組合費のチェックオフ制度は、労働組合の運営資金を安定的に確保する重要な手段です。しかし、その実施には労働法上の厳格な要件が課せられています。本判例は、特別徴収としての組合費チェックオフの適法性について、重要な判断基準を示しました。労働組合、企業の人事労務担当者、そして労働者にとって、不可欠な知識となるでしょう。本稿では、ABS-CBN事件判決を詳細に分析し、実務に役立つ法的解釈と対策を解説します。

    チェックオフ制度と特別徴収の法的根拠

    チェックオフとは、使用者が労働者と労働組合との協約または労働者の事前の同意に基づき、労働者の賃金から組合費やその他の費用を控除し、労働組合に直接納入する制度です。フィリピン労働法典第241条は、労働組合員の権利と義務を規定しており、組合費の徴収と使用に関する条件を定めています。

    特に、本件で問題となったのは、労働法典第241条(n)項および(o)項です。(n)項は、特別徴収を行う場合、総会での多数決による書面決議を義務付けています。(o)項は、義務的な活動以外の弁護士費用、交渉費用、その他の特別費用をチェックオフする場合、従業員からの個別の書面による同意を必要としています。

    「労働組織における会員資格の権利と条件 – 労働組織における会員資格の権利と条件は、以下のとおりとする。

    (g) 労働組織の役員、代理人、会員は、その定款および規則に従い正当な権限を与えられていない限り、その名において手数料、会費、その他の拠出金を徴収したり、その資金を支出したりしてはならない。

    (n) 労働組織の会員に対する特別徴収またはその他の特別料金は、その目的のために正当に招集された総会における全会員の過半数の書面による決議によって承認されない限り、課すことができない。組織の書記は、出席したすべての会員のリスト、投票数、特別徴収または料金の目的、およびそのような徴収または料金の受領者を含む会議の議事録を記録するものとする。記録は大統領によって証明されなければならない。

    (o) 法典に基づく義務的な活動以外の場合、特別徴収金、弁護士費用、交渉費用、またはその他の特別費用は、従業員に支払われるべき金額から、従業員が正式に署名した個別の書面による承認なしにチェックオフすることはできない。承認書には、控除の金額、目的、および受益者を具体的に記載する必要がある。」

    さらに、労働法典第222条(b)項は、団体交渉に関連する弁護士費用等の費用負担について、以下のように規定しています。

    「団体交渉または団体協約の締結に起因する弁護士費用、交渉費用、または類似の種類の費用は、契約組合の個々の組合員に課してはならない。ただし、弁護士費用は、当事者間で合意される金額で組合資金から請求することができる。これに反するいかなる契約、合意、または取り決めも無効とする。」

    これらの条項を総合的に解釈すると、特別徴収としての組合費チェックオフは、①総会での決議、②議事録の作成、③個別の書面同意、という3つの要件を満たす必要があることがわかります。

    ABS-CBN事件の概要と争点

    本件は、ABS-CBN放送株式会社(以下「会社」)の従業員組合(以下「組合」)のメンバーが、組合と会社との間で締結された団体協約におけるチェックオフ条項の有効性を争ったものです。問題となったのは、団体協約第12条に定められた、昇給額と契約一時金の合計額の10%を組合の付随費用(弁護士費用等を含む)に充てる特別徴収条項でした。

    原告である組合員らは、この特別徴収が労働法典第241条(g)、(n)、(o)項に違反し、組合の定款にも反すると主張しました。これに対し、組合側は、過半数の組合員が個別に書面で同意していると反論しました。

    労働雇用省(DOLE)の調停仲裁人は、当初、特別徴収を違法と判断しましたが、DOLE次官は、組合側の再審請求を認め、一転して特別徴収を合法としました。原告組合員らは、このDOLE次官の決定を不服として、最高裁判所に特別民事訴訟(Certiorari)を提起しました。本件の最大の争点は、DOLE次官が再審請求を認めた手続きの適法性と、特別徴収の合法性そのものでした。

    最高裁判所の判断:特別徴収は適法

    最高裁判所は、まず、DOLE次官が再審請求を認めたことは手続き上問題ないと判断しました。労働法関連規則は、労働大臣(または次官)の決定が「最終的かつ不服申立て不可」であると規定していますが、これは再審請求を排除するものではないと解釈しました。むしろ、誤りを正す機会を与えるために、再審請求は認められるべきであるとしました。

    次に、特別徴収の合法性について、最高裁判所は、労働法典第241条(n)項および(o)項の要件が満たされていると判断しました。具体的には、以下の点が認められました。

    • 1989年7月14日の組合総会で、特別徴収を行うことが決議されたこと。
    • 総会の議事録が作成され、保管されていること。
    • 85名の組合員から個別の書面によるチェックオフ同意書が提出されていること。

    裁判所は、これらの事実から、特別徴収は適法に実施されたと結論付けました。特に、個別の書面同意について、原告らは金額が不明確であると主張しましたが、裁判所は、控除額が「団体協約に基づく給付総額の10%」と明確に定められており、金額は確定可能であるとしました。

    「記録は、上記のチェックオフ承認が、85人の組合員が強制または強迫の影響下で実行したことを示していない。したがって、そのようなチェックオフ承認は、署名者が自発的に実行したという推定がある。控除される金額が不確実であるという請願者の主張は説得力がない。なぜなら、チェックオフ承認は、控除される金額がCBAに基づいて発生する可能性のあるすべての給付の10パーセントに相当することを明確に述べているからである。言い換えれば、金額は固定されていないが、決定可能である。」

    さらに、原告らは、総会は団体協約締結後に行われるべきであると主張しましたが、裁判所は、労働法典にそのような規定はないと指摘し、仮にそうであるとしても、1991年5月24日の総会は団体協約締結後に行われており、要件は満たされているとしました。

    最高裁判所は、過去の判例(BPIEU-ALU事件)を引用し、弁護士費用等の組合費用を組合員個人の資金から強制的に徴収することを禁じた労働法典第222条(b)項の趣旨を改めて確認しました。その上で、本件の特別徴収は、組合運営のためのものであり、個別の書面同意も得られていることから、同条項に違反しないと判断しました。

    本判決の実務的意義と教訓

    本判決は、フィリピンにおける労働組合費の特別徴収(チェックオフ)制度の運用において、重要な指針を示すものです。企業と労働組合は、以下の点を踏まえて制度を運用する必要があります。

    • 総会決議の重要性:特別徴収を実施するには、事前に総会を開催し、組合員の多数決による書面決議を得る必要があります。議事録は適切に作成・保管し、証拠として残すことが重要です。
    • 個別同意の必要性:弁護士費用、交渉費用等の特別費用をチェックオフする場合、総会決議に加えて、従業員一人ひとりからの書面による個別同意が不可欠です。同意書には、控除金額、目的、受益者を明記する必要があります。
    • 同意の任意性:個別同意は、強制や強迫によらず、従業員の自由な意思に基づいて行われる必要があります。同意取得のプロセスにおいても、従業員の自主性を尊重することが求められます。
    • 制度の透明性:組合費の使途や徴収方法について、組合員に対して十分な情報開示を行うことが重要です。制度の透明性を高めることで、組合員の理解と協力を得やすくなります。

    実務担当者向けFAQ

    Q1. 総会決議は、団体協約締結前に行う必要がありますか?

    A1. いいえ、労働法典は総会決議の時期を明確に定めていません。本判例では、団体協約締結後の総会決議も有効と認められています。ただし、実務上は、団体協約交渉の初期段階で総会決議を得ておくことが望ましいでしょう。

    Q2. 個別同意書には、具体的な金額を記載する必要がありますか?

    A2. 金額が確定していなくても、控除額の算定基準が明確であれば、個別同意書は有効と認められます。本判例では、「団体協約に基づく給付総額の10%」という記載で有効と判断されました。

    Q3. 一度取得した個別同意は、撤回できますか?

    A3. はい、組合員はいつでも個別同意を撤回できます。同意撤回があった場合、企業は速やかにチェックオフを停止する必要があります。Palacol v. Ferrer-Calleja事件判例を参照ください。

    Q4. チェックオフされた組合費の使途について、監査は必要ですか?

    A4. 労働法典は、組合費の使途に関する監査を義務付けていませんが、組合の定款で定められている場合は、監査を行う必要があります。また、組合運営の透明性を高めるために、自主的に監査を実施することも有効です。

    Q5. 本判例は、非組合員にも適用されますか?

    A5. 本判例は、組合員に対する特別徴収に関するものです。非組合員に対するチェックオフ(エージェンシー・フィー)については、別途、法的要件が定められていますので、注意が必要です。

    本判例は、フィリピンの労働法務における重要な判例の一つです。ASG Lawは、フィリピンの労働法務に精通しており、本判例に関するご相談はもちろん、その他労働法に関する様々なご相談に対応しております。お気軽にご連絡ください。

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  • 労働組合費とエージェンシー・フィー:企業は未徴収分を支払う義務があるか?

    労働組合費のチェックオフ:企業が未徴収額を支払う義務は限定的

    G.R. No. 110007, October 18, 1996

    はじめに

    労働組合費のチェックオフ制度は、労働組合の財政基盤を支える重要な仕組みです。しかし、企業が組合員の給与から組合費を徴収しなかった場合、その未徴収分を企業が支払う義務はあるのでしょうか? 本稿では、フィリピン最高裁判所の判決に基づき、この問題について解説します。

    本件は、聖十字ダバオ大学(Holy Cross of Davao College, Inc.)と、同大学の労働組合であるホーリー・クロス・オブ・ダバオ・カレッジ・ユニオン-KAMAPI(Holy Cross of Davao College Union – KALIPUNAN NG MANGGAGAWANG PILIPINO (KAMAPI))との間で争われた事件です。争点は、団体交渉協約(CBA)の自動延長条項の解釈、および大学側の団体交渉拒否の有無でした。特に、大学が組合員の給与から組合費を徴収しなくなったことが問題となりました。

    法的背景:チェックオフ制度とは

    チェックオフ制度とは、企業が従業員の給与から労働組合費やエージェンシー・フィー(非組合員が団体交渉の恩恵を受けるために支払う費用)を天引きし、直接労働組合に納付する制度です。この制度は、労働組合の財政基盤を安定させるために重要な役割を果たします。

    フィリピンの労働法(労働法典)では、チェックオフ制度について以下のように規定しています。

    労働法第248条(e)項は、非組合員からのエージェンシー・フィー徴収を認めています。非組合員が団体交渉協約から利益を得ている場合、組合費と同額のエージェンシー・フィーを徴収することが認められています。

    ただし、企業が組合費を徴収するためには、原則として従業員の書面による同意が必要です。例外として、労働組合の総会で過半数の賛成を得た決議があれば、企業は組合費を徴収できます(労働法第241条(n)項、(o)項)。

    事件の経緯:聖十字ダバオ大学事件

    本件では、聖十字ダバオ大学と労働組合KAMAPIとの間で、団体交渉協約の更新をめぐる紛争が発生しました。紛争の主な経緯は以下の通りです。

    • 1986年6月1日から1989年5月31日まで有効な団体交渉協約が締結された。
    • 1989年4月、KAMAPIは協約の2ヶ月延長を大学に要請し、大学側はこれを承認した。
    • 1989年7月、KAMAPI内で役員選挙が行われ、新役員が選出された。
    • その後、KAMAPIから離脱する動きがあり、別の労働組合が結成された。
    • 聖十字ダバオ大学は、組合員の給与からの組合費の徴収を停止した。
    • KAMAPIは大学に対し、団体交渉の拒否であるとして訴えを起こした。
    • 労働仲裁人は、大学に対し、KAMAPIとの団体交渉に応じること、および未徴収の組合費を支払うことを命じた。

    大学側は、労働仲裁人の決定を不服として、最高裁判所に上訴しました。

    最高裁判所の判断:企業の支払義務は限定的

    最高裁判所は、労働仲裁人の判断の一部を覆し、大学が未徴収の組合費を支払う義務はないと判断しました。その理由として、以下の点を挙げています。

    「法律上、企業が従業員の給与から天引きしなかった組合費や評価額を労働組合に直接支払う義務を定める規定はありません。企業が天引きを怠った場合、それは契約上の義務違反となり、不当労働行為の責任を負う可能性があります。(中略)しかし、その省略によって、企業は組合員から未徴収の会費または評価額、あるいは非組合員のエージェンシー・フィーの合計額について組合に責任を負うことはありません。」

    最高裁判所は、チェックオフ制度は労働組合の利益のために設けられたものであり、組合費の支払義務はあくまで従業員個人にあると指摘しました。企業は、組合費の天引きと組合への納付を行う義務を負いますが、未徴収分を肩代わりする義務はないと判断しました。

    最高裁判所は、以下のように述べています。

    「チェックオフは真実、企業に余分な管理および簿記コストという形で追加の負担を課します。これは、労働組合の要請により、その生活と維持に必要な会費の徴収を容易にするために、経営陣が引き受けた負担です。(中略)企業がチェックオフ協定の実施を怠ったり拒否したりした場合、論理と慎重さから、労働組合自体がそのメンバーからの組合費と評価額(および非組合員の従業員からのエージェンシー・フィー)の徴収を引き受けることを指示します。これはもちろん、企業を不当労働行為で訴えることを妨げるものではありません。」

    実務上の影響:企業が留意すべき点

    本判決から、企業は以下の点を留意する必要があります。

    • 企業は、団体交渉協約に基づき、組合員の給与から組合費を天引きし、労働組合に納付する義務を負う。
    • ただし、企業は、未徴収の組合費を肩代わりする義務はない。
    • 企業が組合費の天引きを怠った場合、不当労働行為の責任を問われる可能性がある。

    重要な教訓

    • 企業は、団体交渉協約の内容を正確に理解し、遵守する必要がある。
    • 労働組合との良好な関係を維持し、紛争を未然に防ぐことが重要である。
    • 組合費の天引きを怠った場合、速やかに労働組合と協議し、適切な対応を取る必要がある。

    よくある質問

    Q1: 企業は、どのような場合に組合費の天引きを停止できますか?

    A1: 従業員が労働組合から脱退した場合、または労働組合が従業員の代表権を失った場合などです。

    Q2: 企業が組合費の天引きを怠った場合、どのような法的責任を負いますか?

    A2: 不当労働行為の責任を問われる可能性があります。また、労働組合から損害賠償請求を受ける可能性もあります。

    Q3: 労働組合は、企業が組合費の天引きを怠った場合、どのような対応を取るべきですか?

    A3: まずは企業と協議し、天引きの再開を求めるべきです。協議がうまくいかない場合は、労働紛争解決機関に仲裁を申し立てることもできます。

    Q4: エージェンシー・フィーとは何ですか?

    A4: 労働組合の組合員ではない従業員が、団体交渉によって得られた利益を享受するために支払う費用です。

    Q5: 企業は、非組合員からのエージェンシー・フィー徴収を拒否できますか?

    A5: いいえ、できません。労働法は、非組合員からのエージェンシー・フィー徴収を認めています。

    本稿で解説した内容について、さらに詳しい情報が必要な場合は、ASG Lawにご相談ください。当事務所は、労働法に関する豊富な知識と経験を有しており、お客様のニーズに合わせた最適なリーガルサービスを提供いたします。どんなことでもお気軽にお問い合わせください。 konnichiwa@asglawpartners.com または お問い合わせページからご連絡ください。ASG Lawは、この分野の専門家集団です。ご相談をお待ちしております!