不動産開発会社の役員は、違反行為への積極的な関与が証明されない限り、刑事責任を問われない
G.R. No. 248584, August 30, 2023
はじめに
フィリピンでは、不動産開発会社が法律に違反した場合、誰が責任を負うのでしょうか?特に、企業の役員は、会社の不正行為に対して個人的に責任を問われるのでしょうか?この問題は、不動産開発会社の社長が、会社の法律違反で有罪判決を受けた事件で、最高裁判所が検討しました。今回の判決は、企業の役員が刑事責任を問われるためには、違反行為への積極的な関与が証明されなければならないことを明確にしました。
法律の背景
今回の事件は、大統領令957号(PD 957)という、細分化された土地やコンドミニアムの購入者を保護するための法律に関わっています。PD 957の第17条は、不動産開発業者が販売契約を登記することを義務付けています。これは、購入者の権利を保護し、二重販売などの詐欺行為を防ぐためのものです。この条項は、次のように規定されています。
第17条 登記 – 細分化された土地やコンドミニアムの販売または譲渡に関するすべての販売契約、売渡証書、およびその他の類似の書類は、購入価格が全額支払われているかどうかにかかわらず、売主によって物件が所在する州または市の登記所に登記されなければならない。
PD 957の第39条は、この法律に違反した場合の罰則を規定しています。特に、企業、パートナーシップ、協同組合、または団体の場合は、社長、マネージャー、管理者、または事業の管理を担当する者が、この法律の違反に対して刑事責任を負うと規定しています。この条項は、次のように規定されています。
第39条 罰則 – 本令の条項および/または本令に基づいて発行される規則または規制に違反した者は、有罪判決を受けた場合、2万ペソ以下の罰金および/または10年以下の懲役に処せられるものとする。ただし、企業、パートナーシップ、協同組合、または団体の場合は、社長、マネージャー、管理者、または事業の管理を担当する者が、本令および/またはそれに基づいて公布される規則および規制の違反に対して刑事責任を負うものとする。
事件の概要
フェリックス・G・バレンゾナは、ALSGRO Industrial and Development Corporation(ALSGRO)の社長でした。ALSGROは、細分化された土地の販売を専門とする不動産会社です。リカルド・ボルテオは、ALSGROから2つの細分化された土地を購入する契約を結びましたが、ALSGROはこれらの契約を登記しませんでした。ボルテオは、契約が登記されていないことを発見し、バレンゾナに対してPD 957の違反で刑事告訴しました。
- 2003年3月、ALSGROはボルテオと2つの土地の販売契約を締結。
- ボルテオは、2003年9月まで分割払いで支払いを続けたが、その後、経済的な困難に陥り、支払いを停止。
- 2006年1月、ボルテオは、ALSGROが契約を登記していないことを発見。
- ボルテオは、ALSGROに支払った金額の払い戻しを要求したが、拒否されたため、刑事告訴。
バレンゾナは、ALSGROの社長として、事業を監督し、契約に署名する役割を担っていましたが、契約の登記は彼の職務ではないと主張しました。地方裁判所(RTC)は、バレンゾナを有罪と判断しましたが、控訴裁判所(CA)はRTCの判決を支持しました。
最高裁判所の判決
最高裁判所は、バレンゾナの有罪判決を覆しました。裁判所は、PD 957の違反は「それ自体が犯罪である」と考えられている「違法な行為」であると認めましたが、バレンゾナが違反行為を意図的に行ったことを証明する必要があると述べました。裁判所は、次のように述べています。
「犯罪行為の意図の証明を省略しても、被告が禁止された行為を意図的に行ったことを示す検察の義務は、決して免除されない。」
裁判所は、バレンゾナがALSGROの社長であるという事実だけでは、彼が契約の登記を担当していたことを証明するものではないと判断しました。裁判所は、次のように述べています。
「企業の役員の刑事責任は、不正行為への積極的な関与から生じる。」
裁判所は、バレンゾナが契約の登記を妨げた、または登記を怠ったことを示す証拠がないため、彼の有罪判決を覆しました。
実務上の影響
この判決は、フィリピンの不動産開発会社とその役員に重要な影響を与えます。今回の判決は、企業の役員が会社の法律違反で刑事責任を問われるためには、違反行為への積極的な関与が証明されなければならないことを明確にしました。これは、役員の責任範囲を明確にし、不当な刑事告訴から保護する上で重要な役割を果たします。
不動産開発会社は、コンプライアンス体制を強化し、法律違反のリスクを最小限に抑える必要があります。また、役員は、自身の職務範囲を明確にし、会社のコンプライアンス体制を理解しておくことが重要です。
主な教訓
- 企業の役員は、違反行為への積極的な関与が証明されない限り、会社の法律違反で刑事責任を問われない。
- 不動産開発会社は、コンプライアンス体制を強化し、法律違反のリスクを最小限に抑える必要がある。
- 役員は、自身の職務範囲を明確にし、会社のコンプライアンス体制を理解しておくことが重要。
よくある質問
Q: 企業の役員は、会社の法律違反で刑事責任を問われることはありますか?
A: はい、企業の役員は、違反行為への積極的な関与が証明された場合、会社の法律違反で刑事責任を問われることがあります。
Q: 不動産開発会社が販売契約を登記しない場合、どのような罰則がありますか?
A: 不動産開発会社が販売契約を登記しない場合、罰金や懲役などの罰則が科せられる可能性があります。
Q: 不動産開発会社は、どのようにして法律違反のリスクを最小限に抑えることができますか?
A: 不動産開発会社は、コンプライアンス体制を強化し、法律に関する従業員のトレーニングを実施することで、法律違反のリスクを最小限に抑えることができます。
Q: 役員は、会社のコンプライアンス体制をどのように理解することができますか?
A: 役員は、会社のコンプライアンス体制に関する文書を読み、コンプライアンス担当者と定期的に協議することで、会社のコンプライアンス体制を理解することができます。
Q: 今回の判決は、他の業界の企業にも適用されますか?
A: はい、今回の判決は、他の業界の企業にも適用される可能性があります。企業の役員が会社の法律違反で刑事責任を問われるためには、違反行為への積極的な関与が証明されなければならないという原則は、他の業界にも適用されます。
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