フィリピン企業法:係争中の株式も定足数の計算に含まれる
G.R. Nos. 242353 & 253530, January 22, 2024
企業法は複雑で、特に家族経営の企業では紛争が絶えません。本件は、株式の譲渡の有効性をめぐる家族間の紛争から、株主総会や取締役の選任に関する訴訟が繰り返されることになった事例です。最高裁判所は、係争中の株式も定足数の計算に含まれるという重要な判断を示しました。
法的背景
フィリピンの企業法は、株主の権利と企業の運営を規定しています。株主総会は、企業の重要な意思決定を行うための重要な機会であり、取締役の選任もその一つです。株主総会が有効であるためには、定足数を満たす必要があります。定足数は、議決権のある株式の過半数を意味します。しかし、係争中の株式がある場合、その株式を定足数の計算に含めるべきかどうかは、しばしば議論の対象となります。
本件に関連する重要な法的規定は以下の通りです。
- 憲法第8条第14項:裁判所の判決は、事実と法律の根拠を明確かつ明確に示さなければならない。
- 民事訴訟規則第36条第1項:事件の本案を決定する判決または最終命令は、裁判官が個人的に直接作成し、事実と法律の根拠を明確かつ明確に示し、署名し、裁判所書記官に提出しなければならない。
これらの規定は、裁判所の判決が公正であり、透明性があり、合理的な根拠に基づいていることを保証するために重要です。
事例の概要
本件は、Phil-Ville Development and Housing Corporation(以下、Phil-Ville)という家族経営の企業における株式の譲渡の有効性をめぐる紛争です。紛争の発端は、創業者であるGeronima Gallego Que(以下、Geronima)が亡くなる2年前に作成したとされる「株式譲渡契約書」です。この契約書に基づき、Geronimaの株式は、彼女の子供たちや孫たちに譲渡されました。
しかし、この株式譲渡の有効性をめぐり、Geronimaの子供たちの一部(Villongcoグループ)が、他の子供たち(Yabutグループ)を相手取り、株式譲渡が無効であると主張する訴訟を提起しました。この訴訟と並行して、Yabutグループは、Phil-Villeの株主総会を開催し、取締役を選任しました。Villongcoグループは、この取締役選任の有効性も争い、訴訟を提起しました。
本件は、以下の2つの訴訟が統合されたものです。
- G.R. No. 242353:2015年の株主総会における取締役選任の有効性を争う訴訟
- G.R. No. 253530:2017年の株主総会における取締役選任の有効性を争う訴訟
これらの訴訟において、Villongcoグループは、係争中の株式を定足数の計算から除外すべきであると主張しました。しかし、最高裁判所は、この主張を認めず、係争中の株式も定足数の計算に含まれるという判断を示しました。
最高裁判所は、以下の点を強調しました。
- 「議決権は、株式の所有に固有のものであり、付随するものである。」
- 「未発行株式は、議決権を行使することも、株主総会における定足数の有無を判断する際に考慮することもできない。実際に発行され、発行済みの株式のみが議決権を行使できる。」
- 「株式の定足数は、発行済みの議決権株式の数に基づいている。係争中の株式と係争されていない株式の区別は、法律や判例には規定されていない。」
最高裁判所は、2015年と2017年の取締役選任に関する地方裁判所の命令が無効であると判断しました。これは、命令が事実と法律の根拠を明確に示していなかったためです。また、2017年の取締役選任に関する訴訟は、その後の株主総会や取締役選任によって無効になったわけではないと判断しました。最高裁判所は、2015年の取締役選任に関する高等裁判所の判決を一部取り消し、係争中の株式を定足数の計算から除外したことを誤りであるとしました。
実務上の意義
本判決は、フィリピンの企業法実務に重要な影響を与えます。特に、家族経営の企業や、株式の譲渡をめぐる紛争が頻繁に発生する企業にとって、本判決は、株主総会の開催や取締役の選任に関する重要な指針となります。
本判決から得られる教訓は以下の通りです。
- 株主総会を開催する際には、係争中の株式も定足数の計算に含める必要がある。
- 裁判所の命令は、事実と法律の根拠を明確に示さなければならない。
- 取締役選任に関する訴訟は、その後の株主総会や取締役選任によって無効になるわけではない。
よくある質問
Q: 係争中の株式とは何ですか?
A: 係争中の株式とは、その所有権や議決権が争われている株式のことです。例えば、株式の譲渡の有効性をめぐる訴訟が提起されている場合、その株式は係争中の株式となります。
Q: 係争中の株式は、株主総会で議決権を行使できますか?
A: 本判決によれば、係争中の株式も定足数の計算に含まれるため、株主総会に出席し、議決権を行使することができます。しかし、その議決権の有効性は、最終的な裁判所の判断によって左右される可能性があります。
Q: 株主総会の定足数を満たすためには、何が必要ですか?
A: 株主総会の定足数を満たすためには、議決権のある株式の過半数が出席する必要があります。定足数の計算には、係争中の株式も含まれます。
Q: 裁判所の命令が無効になるのはどのような場合ですか?
A: 裁判所の命令は、事実と法律の根拠を明確に示していない場合や、手続き上の重大な瑕疵がある場合などに無効になることがあります。
Q: 取締役選任に関する訴訟は、どのような場合に提起できますか?
A: 取締役選任に関する訴訟は、株主総会の開催手続きに瑕疵がある場合や、取締役の選任方法が法令に違反する場合などに提起できます。
フィリピン企業法に関するご相談は、ASG Lawまでお気軽にお問い合わせください。 お問い合わせ またはメール konnichiwa@asglawpartners.com までご連絡ください。