フィリピン労働法から学ぶ主要な教訓
Dynamiq Multi-Resources, Inc. v. Orlando D. Genon, G.R. No. 239349, June 28, 2021
フィリピンで働く従業員にとって、13カ月給付は重要な福利厚生です。しかし、コミッション制で働く従業員はこの給付を受け取る資格があるのでしょうか?この問題は、Dynamiq Multi-Resources, Inc. v. Orlando D. Genonの事例で取り上げられました。Orlando Genonは、Dynamiq Multi-Resources, Inc.でトラックドライバーとして働き、退職後に13カ月給付を求めました。Dynamiqは、Genonがコミッション制で働いていたため、13カ月給付の対象外だと主張しました。しかし、最高裁判所はGenonが正規雇用者であり、13カ月給付の権利があると判断しました。この事例から、雇用形態や報酬の方法がどのように労働法の適用に影響するかを理解することが重要です。
この事例の中心的な問題は、GenonがDynamiqとの間で雇用関係が存在したかどうか、そしてその結果として13カ月給付の支払いを受ける権利があるかどうかです。最高裁判所は、雇用関係を判断するための四要素テストを適用し、Genonが正規雇用者であると結論付けました。これにより、Genonは13カ月給付を含む様々な福利厚生を受ける資格があるとされました。
法的背景
フィリピン労働法では、従業員の福利厚生を保護するための多くの規定が設けられています。その中でも、13カ月給付は、Presidential Decree No. 851によって規定されています。この法律は、全てのランク・アンド・ファイルの従業員に対して、毎年12月24日までに13カ月分の給与を支払うことを雇用者に義務付けています。ただし、コミッション制で働く従業員がこの給付を受ける資格があるかどうかは、雇用関係の存在と雇用形態によって異なります。
雇用関係の存在は、四要素テストによって判断されます。これには、(1)従業員の選定と雇用、(2)賃金の支払い、(3)解雇の権限、(4)従業員の行動を管理する権限(「コントロールテスト」)が含まれます。特にコントロールテストは、雇用者が従業員の仕事の方法と結果をどの程度管理しているかを評価するために使用されます。このテストは、雇用者が実際に監督しているかどうかではなく、監督する権利が存在するかどうかを基準にしています。
正規雇用者は、労働コード第295条(旧280条)によって定義され、通常の事業や商取引の過程で通常必要とされる活動に従事する者とされています。具体的には、従業員が1年以上その活動に従事している場合、その活動が事業にとって不可欠であると見なされ、正規雇用者とされます。
例えば、レストランで働くウェイターがコミッション制で給与を受け取っている場合でも、レストランがそのウェイターの勤務時間やサービス内容を管理しているならば、正規雇用者として13カ月給付の対象になる可能性があります。これは、給与の支払い方法が雇用形態に影響を与えないことを示しています。
事例分析
Orlando Genonは、2009年から2014年までDynamiq Multi-Resources, Inc.でトラックドライバーとして働いていました。彼は2014年6月に退職し、その後、13カ月給付の支払いを求めて労働仲裁人(Labor Arbiter)に訴えを起こしました。Dynamiqは、Genonがコミッション制で働いていたため、13カ月給付の対象外だと主張しました。
労働仲裁人は、Genonが正規雇用者であり、13カ月給付を受ける権利があると判断しました。しかし、国家労働関係委員会(NLRC)はDynamiqの控訴を認め、労働仲裁人の決定を覆しました。Genonはこの決定に対して、裁判所に提訴しました。
裁判所は、雇用関係の存在を判断するために四要素テストを適用しました。以下は、最高裁判所の重要な推論からの直接引用です:
- 「雇用者-従業員関係の存在を確定するために、最高裁判所は常に四要素テストに従ってきました。すなわち、(1)従業員の選定と雇用、(2)賃金の支払い、(3)解雇の権限、(4)従業員の行動を管理する権限、またはいわゆる「コントロールテスト」です。」(Felicilda v. Uy, 795 Phil. 408 (2016)より)
- 「Genonがコミッション制で給与を受け取っていたとしても、彼は正規雇用者です。給与の支払い方法が雇用形態に基づくものではないことを覚えておくべきです。」(AGG Trucking v. Yuag, 675 Phil. 108 (2011)より)
最高裁判所は、GenonがDynamiqによってトラックドライバーとして雇用され、Dynamiqから給与を受け取っていたこと、DynamiqがGenonを解雇する権限を持っていたこと、そしてDynamiqがGenonの仕事の方法と結果を管理する権限を持っていたことを確認しました。これらの要素はすべて、GenonがDynamiqの正規雇用者であったことを示しています。
したがって、最高裁判所はGenonが13カ月給付を受ける権利があると判断し、以下の金額をDynamiqに支払うよう命令しました:
- 2011年8月から12月までの13カ月給付として21,662.60ペソ
- 2012年の13カ月給付として19,877.45ペソ
- 2013年の13カ月給付として14,215.50ペソ
- 2014年の13カ月給付(按分)として7,942.87ペソ
実用的な影響
この判決は、フィリピンで事業を展開する企業や雇用者に対して、コミッション制で働く従業員に対する13カ月給付の支払い義務を明確にしました。雇用者が従業員の仕事の方法と結果を管理する権限を持っている場合、その従業員はコミッション制で給与を受け取っていても正規雇用者と見なされ、13カ月給付を受ける権利があります。
企業は、従業員の雇用形態を正確に評価し、適切な福利厚生を提供するために、雇用契約や労働法の規定を慎重に検討する必要があります。特に日系企業や在フィリピン日本人は、フィリピンの労働法の違いとその適用を理解することが重要です。
主要な教訓
- 雇用関係の存在は、四要素テストによって判断されます。コントロールテストが最も重要です。
- コミッション制で給与を受け取る従業員でも、雇用者が仕事の方法と結果を管理する権限を持っている場合、正規雇用者と見なされます。
- 正規雇用者は、13カ月給付を含む全ての福利厚生を受ける権利があります。
よくある質問
Q: コミッション制で働く従業員は13カ月給付を受ける資格がありますか?
A: はい、雇用者が従業員の仕事の方法と結果を管理する権限を持っている場合、コミッション制で働く従業員でも13カ月給付を受ける資格があります。
Q: 雇用関係の存在を判断するための四要素テストとは何ですか?
A: 四要素テストは、(1)従業員の選定と雇用、(2)賃金の支払い、(3)解雇の権限、(4)従業員の行動を管理する権限(コントロールテスト)を含みます。
Q: 正規雇用者の定義は何ですか?
A: 正規雇用者は、通常の事業や商取引の過程で通常必要とされる活動に従事する者と定義されます。1年以上その活動に従事している場合、正規雇用者と見なされます。
Q: フィリピンで事業を展開する日系企業は何に注意すべきですか?
A: 日系企業は、フィリピンの労働法の規定を理解し、従業員の雇用形態を正確に評価し、適切な福利厚生を提供する必要があります。
Q: 13カ月給付の支払い義務を回避する方法はありますか?
A: 雇用者が従業員の仕事の方法と結果を管理する権限を持っている場合、13カ月給付の支払い義務を回避することはできません。ただし、独立契約者として雇用することで回避できる可能性がありますが、その場合も雇用関係の存在を慎重に評価する必要があります。
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