フィリピン法務:勝訴当事者に sheriff (執行官) の費用を負担させることは違法です

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勝訴当事者に sheriff (執行官) の費用を負担させることは違法です

G.R. No. 34527, 335 Phil. 527 [A.M. No. P-87-100, February 12, 1997]

フィリピンの法制度において、訴訟費用の負担は敗訴当事者が原則です。しかし、執行段階で sheriff (執行官) が不当に費用を請求するケースが存在します。本稿では、最高裁判所の判例、Felisa Elic Vda. de Abellera v. Nemesio N. Dalisay を基に、この問題点と実務上の注意点について解説します。

事件の概要

本件は、Felisa Elic Vda. de Abellera (原告) が Nemesio N. Dalisay (被告、当時 sheriff (執行官)) を相手取り、不正行為を訴えた行政事件です。原告は、Republic Planters Bank (RPB) を相手方とする民事訴訟で勝訴判決を得ていました。判決に基づき、被告は RPB から原告への支払いを執行しましたが、その際、不当に高額な sheriff (執行官) の費用を原告に請求しました。

関連法規と原則

フィリピンの民事訴訟規則 Rule 142 は、訴訟費用に関する規定を定めています。Section 10(g) は、勝訴当事者が支払った正規の費用は訴訟費用に含まれると規定しています。また、Section 1 は、原則として勝訴当事者に訴訟費用が認められると規定しています。

重要な条文を引用します。

Rule 142, Section 1. Costs ordinarily allowed. – Unless otherwise provided in these rules, costs shall be allowed to the prevailing party as a matter of course, but the court may, for special reasons, adjudge that either party shall pay the costs of an action, or that the same be divided, as may be equitable.

Rule 142, Section 10. Attorney’s fees as costs. – In the absence of stipulation, the court may assess as costs against either party such sum as attorney’s fees as it may deem just and equitable in the actions mentioned in section 5 of Rule 142.

これらの規定から明らかなように、訴訟費用は原則として敗訴当事者が負担し、勝訴当事者が負担する必要はありません。Sheriff (執行官) の費用も訴訟費用の一部であり、勝訴当事者に請求することは原則として違法です。

事件の経緯

  1. 原告は RPB を相手とする訴訟で勝訴し、317,387.40ペソの支払いを命じる判決を得ました。
  2. 被告は sheriff (執行官) として、判決の執行を担当しました。
  3. 被告は RPB の支店に出向き、銀行マネージャーと協議しました。
  4. RPB は、被告宛の小切手 (30,000ペソ) と原告宛の小切手 (285,648.66ペソ) の2枚の小切手を発行しました。
  5. 被告は原告に対し、30,000ペソは弁護士との合意に基づく sheriff (執行官) の費用であると説明し、原告に領収書に署名させました。
  6. 原告が弁護士に確認したところ、そのような合意はなく、弁護士は費用の請求自体が不当であると抗議しました。
  7. 原告は、被告が RPB から別途 30,000ペソを受け取っていたことも知りました。
  8. 原告は最高裁判所に被告の不正行為を訴えました。

最高裁判所の判断

最高裁判所は、調査判事の報告書を支持し、被告の行為を違法と判断しました。裁判所は、以下の点を指摘しました。

  • 勝訴当事者に sheriff (執行官) の費用を請求することは、訴訟費用の原則に反する。
  • 費用を勝訴当事者に負担させる裁判所の命令がない限り、そのような請求は不当である。
  • 仮に費用を請求できるとしても、請求額 (30,000ペソ) は過大である (法定手数料は、最初の 4,000ペソに対して4%、超過額に対して2%)。

裁判所は、被告の行為を「不正行為」と認定し、5,000ペソの罰金と、原告への 30,000ペソの返還を命じました。さらに、被告に対し、今後の同様の行為はより厳しく処分されると警告しました。

最高裁判所は判決の中で、sheriff (執行官) の職務の重要性を強調し、その行動は裁判所の威信と誠実さを維持するものでなければならないと述べました。被告の行為は、そのような基準を著しく下回るものであり、原告の信頼を裏切るものであったと断じました。

裁判所の末端組織において、執行官は訴訟当事者と密接な関係にあり、したがって、その行動は裁判所の威信と誠実さを維持するものでなければなりません。裁判所のイメージは、裁判官から最下層の職員まで、そこで働く人々の公私にわたる行動に反映されるからです。したがって、裁判所のすべての人は、正義の殿堂としての良い評判と地位を維持することが不可欠かつ神聖な義務となります。(Punzalan-Santos v. Arquiza, 244 SCRA 527, 535 [1995])

実務上の教訓

本判例から得られる教訓は、以下のとおりです。

  • 訴訟費用の原則の確認: フィリピン法では、訴訟費用は原則として敗訴当事者が負担します。Sheriff (執行官) の費用も訴訟費用に含まれ、勝訴当事者に請求することは原則として違法です。
  • 不当な費用請求への注意: Sheriff (執行官) から費用を請求された場合、その根拠と金額を慎重に確認する必要があります。特に、勝訴当事者である場合は、費用負担の義務がないことを主張できます。
  • 弁護士との連携: 不当な費用請求を受けた場合は、速やかに弁護士に相談し、適切な対応を検討することが重要です。
  • 裁判所への申立て: 不当な費用請求が是正されない場合は、裁判所または最高裁判所に申立てを行うことができます。

よくある質問 (FAQ)

Q1: Sheriff (執行官) の費用は誰が負担するのですか?

A1: 原則として、敗訴当事者が負担します。勝訴当事者が負担するのは、裁判所の特別な命令がある場合に限られます。

Q2: Sheriff (執行官) の費用の金額はどのように決まるのですか?

A2: 法定手数料が定められています。本判例にもあるように、徴収金額に応じて割合が定められています。不当に高額な請求には注意が必要です。

Q3: Sheriff (執行官) から不当な費用を請求された場合の対処法は?

A3: まず、弁護士に相談してください。弁護士は、費用請求の妥当性を判断し、適切な対応をアドバイスしてくれます。必要に応じて、裁判所への申立てを検討することもできます。

Q4: 勝訴判決を得たのに、費用を負担しなければならないケースはありますか?

A4: 例外的に、裁判所が公平の観点から、勝訴当事者にも費用の一部または全部を負担させる命令を出すことがあります。ただし、これは稀なケースです。

Q5: Sheriff (執行官) の不正行為を発見した場合、どこに訴えればよいですか?

A5: 裁判所または最高裁判所に申立てを行うことができます。本判例のように、最高裁判所は sheriff (執行官) の不正行為に対して厳正な態度で臨んでいます。


ASG Law は、フィリピン法務に精通した法律事務所です。訴訟費用の問題、その他フィリピン法に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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