カテゴリー: 国際ビジネス法

  • サービスに対する VAT 還付請求における公式領収書の必要性:日本通運対内国歳入庁長官

    本判決では、 VAT (付加価値税)還付請求を行う際に、サービスに対するゼロ税率売上を証明するためには、公式領収書が不可欠であることが明確に示されました。納税者は、サービス取引を証明するために請求書ではなく、公式領収書を提出する必要があります。この判決は、日本の企業がフィリピンで事業を行う上で、税務コンプライアンスに影響を与えます。

    VAT 還付の鍵:日本通運の教訓

    本件は、日本通運(フィリピン)株式会社(以下、日本通運)が内国歳入庁長官(以下、長官)に対して行ったVAT還付請求に関するものです。日本通運は、2004年度のゼロ税率売上に対応するVAT還付を求めていました。しかし、CTA(税務裁判所)は、日本通運が提出した証拠書類が不十分であるとして、還付請求を認めませんでした。特に、CTAは、日本通運がサービスのゼロ税率売上を証明するために、公式領収書ではなく売上請求書を提出した点を問題視しました。この判断に対し、日本通運は上訴しましたが、CTA En Banc(税務裁判所全体会議)も原判決を支持しました。本判決では、CTAへの提訴期限の問題と、ゼロ税率売上を立証するための適切な書類とは何かという2つの重要な争点に焦点を当てています。

    裁判所はまず、日本通運の訴えが遅延していると指摘しました。内国歳入法第112条によれば、還付請求が却下された場合、または長官が120日以内に申請に対応しなかった場合、納税者は決定の受領後または120日間の期間満了後30日以内に税務裁判所に提訴する必要があります。日本通運は、長官の不作為から246日後に提訴したため、裁判所は管轄権を欠いていると判断しました。次に、裁判所は、VAT還付を請求する者は、仕入先へのVATの支払いを証明すること、および購入者へのゼロ税率売上を証明する必要があることを明確にしました。

    この点で、重要なのは売上請求書と公式領収書の違いです。裁判所は、物品の販売には売上請求書が必要であり、サービスの販売には公式領収書が必要であると判示しました。この判決は、最高裁判所が過去の判例(AT&T Communications Services Philippines, Inc. 対 Commissioner)で示した見解を再確認するものであり、税務上の目的において、売上請求書と公式領収書は区別して使用する必要があることを強調しています。日本通運が提出した書類は、売上請求書やその他の補助的な証拠に過ぎなかったため、裁判所は還付請求を認めませんでした。本件の核心は、VAT還付請求において、法律が定めた要件を遵守することの重要性にあります。手続き上の期限を守り、適切な書類を提出することが、還付を受けるための絶対条件となります。

    判決は、日本通運の提訴が期限切れであるという技術的な理由に基づいており、サービス販売のゼロ税率を証明するために公式領収書が必須であるという判例が確立されました。裁判所は、法令の文言に従い、関連するすべての要素を考慮して解釈を下しました。裁判所は、日本の法体系における VAT 還付請求に関する管轄権の問題と文書化基準の重要性を強調しました。

    この事例の教訓は、企業がVAT還付を求める際には、税法の規定と裁判所の判例を十分に理解し、適切な対応を取ることの重要性を示しています。本件では、日本通運が公式領収書を提出しなかったために還付を受けられなかったため、今後は、公式領収書を適切に管理し、保管することが求められます。加えて、申請期限にも十分に注意し、遅滞なく提訴することが重要です。法律を遵守し、適切な書類を揃えることで、企業はVAT還付を円滑に進めることができるでしょう。このような税務上のコンプライアンスは、企業の財務健全性を維持し、税務リスクを軽減するために不可欠です。

    FAQs

    本件における主な問題は何でしたか? 主な問題は、日本通運がVAT還付を請求する際に、サービスに対するゼロ税率売上を証明するために十分な証拠を提出したかどうかでした。特に、公式領収書ではなく売上請求書を提出した点が争点となりました。
    なぜ日本通運の訴えは却下されたのですか? 日本通運の訴えは、税務裁判所への提訴期限を過ぎていたため却下されました。内国歳入法第112条に定められた30日以内の提訴期限を守らなかったことが理由です。
    VAT還付を請求するために必要な書類は何ですか? VAT還付を請求するには、仕入先へのVATの支払いを証明する書類と、購入者へのゼロ税率売上を証明する書類が必要です。サービスの販売の場合、公式領収書が必須となります。
    なぜ売上請求書ではなく公式領収書が必要なのですか? 裁判所は、物品の販売には売上請求書が必要であり、サービスの販売には公式領収書が必要であると判示しました。これは、VATに関する法令と過去の判例に基づく判断です。
    本判決は企業にどのような影響を与えますか? 本判決は、企業がVAT還付を求める際に、税法の規定と裁判所の判例を十分に理解し、適切な書類を提出することの重要性を示しています。特に、サービスの販売には公式領収書が必要であることを明確にしました。
    もし企業が提訴期限を過ぎてしまった場合、どうなりますか? 提訴期限を過ぎてしまった場合、税務裁判所は管轄権を失い、訴えは却下されます。そのため、提訴期限は厳守する必要があります。
    本判決は過去の判例とどのように関連していますか? 本判決は、最高裁判所が過去の判例(AT&T Communications Services Philippines, Inc. 対 Commissioner)で示した見解を再確認するものであり、税務上の目的において、売上請求書と公式領収書は区別して使用する必要があることを強調しています。
    本判決から企業は何を学ぶべきですか? 企業は、VAT還付を求める際には、手続き上の期限を守り、適切な書類を提出することが重要であることを学ぶべきです。また、法律を遵守し、適切な書類を揃えることで、VAT還付を円滑に進めることができることを理解する必要があります。

    本判決は、フィリピンにおける税務コンプライアンスの重要性を改めて強調するものです。企業は、VAT還付を求める際には、関連する法律や判例を十分に理解し、必要な書類を適切に準備する必要があります。

    本判決の特定の状況への適用に関するお問い合わせは、お問い合わせまたは電子メール(frontdesk@asglawpartners.com)でASG Lawにご連絡ください。

    免責事項:本分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。お客様の状況に合わせた具体的な法的指導については、資格のある弁護士にご相談ください。
    出典:日本通運対内国歳入庁長官, G.R No. 191495, 2018年7月23日

  • 国家の統制か、経済成長か: フィリピン鉱業法における外国投資と憲法上の要件

    本判決は、フィリピン最高裁判所が鉱業法における外国投資と国家の資源に対する支配権のバランスについて判断を示した重要な事例です。最高裁は、フィリピンの鉱業法と、政府と外国企業間の財務・技術支援協定(FTAA)を合憲と判断しました。裁判所は、国家が天然資源に対して十分な監督・統制権を保持している限り、大規模な鉱物資源の開発に外国からの投資と専門知識を活用することは、経済成長と国民の福祉に貢献しうると結論付けました。この判決は、フィリピンの鉱業分野への外国投資を促進する一方、憲法で定められた国家の監督・統制権を尊重する上で重要な意味を持ちます。

    国家主権と鉱業開発:フィリピン鉱業法をめぐる憲法論争

    この訴訟は、フィリピンの鉱業法、その施行規則、および政府とWMCフィリピン社との間で締結されたFTAAの合憲性に対する異議申し立てでした。原告らは、FTAAが1987年憲法に違反すると主張しました。それは、外国企業に鉱業事業の完全な管理権を与えるもので、国家が鉱物資源に対する「受益所有権」を失うと主張しました。この訴訟では、最高裁が憲法の条項をどのように解釈し、フィリピンの天然資源の探査、開発、利用に対する国家の権限と外国企業の権利とのバランスをどのように取るかが争点となりました。

    最高裁は、鉱業法を支持し、その施行規則、およびFTAAも合憲であると判断しました。裁判所は、すべての鉱物資源は国家が所有しており、その探査、開発、利用(EDU)は常に国家の完全な管理と監督の下にあるべきだと述べました。しかし、フィリピンの資本と技術が大規模なEDU活動には不十分であることを考慮して、国家は外国企業の支援を得ることができますが、国家が常に完全な管理権を保持する必要があります。外国からの援助者または請負業者はEDU活動におけるすべての財務的、技術的、起業家的なリスクを引き受けますが、その投資を保護し、事業を成功させるために、合理的な経営、運営、マーケティング、監査、その他の特権が与えられます。

    裁判所は、事業者が日常業務を管理しても、国家が全体の戦略を指示し、事業者の計画や行動を覆すか修正する権限を保持していれば、国家の完全な統制とは矛盾しないと判断しました。最高裁は、大統領には外国企業と合意を締結する憲法上の権限があり、議会はその協定を審査する権限があると述べました。裁判所はまた、フィリピンの鉱業法とそれに基づく政令について、政府に企業の運営を指示および規制し、望ましくない活動を抑制するのに十分な権限を与えているという結論に達しました。

    重要なことは、最高裁がFTAAの下では国家が事業者に不当にコントロールを譲渡していないと認定したことです。州政府関係機関は探査、開発、採掘段階において事業者から作業計画や予算の承認を求められることが重要であり、それによって実効的な監督及び事業運営そのものを管理することが可能になると最高裁は指摘しました。要するに本件最高裁判断はフィリピンの天然資源開発分野で外国企業の投資及びビジネス運営に道を開いたのです。

    FAQ

    この訴訟の主な争点は何でしたか? 主な争点は、フィリピン鉱業法における外国投資が憲法で定められた国家の資源に対する支配権の要件を満たしているかどうかでした。
    裁判所はどのような判断を下しましたか? 最高裁は、フィリピンの鉱業法、その施行規則、および政府と外国企業間の財務・技術支援協定(FTAA)を合憲と判断しました。
    FTAAとは何ですか? FTAAは、大規模な鉱物資源の開発に関して、外国企業がフィリピン政府と締結する可能性のある契約です。これにより、外国企業は鉱業事業に必要な技術または財務援助を提供することが認められています。
    判決における「国家の完全な統制」とはどういう意味ですか? 裁判所は、「完全な統制」とは、国家が大規模鉱業事業の全体的な戦略を指示し、事業者の計画を修正する権限を保持することを意味すると解釈しました。事業者が日常業務を管理しても、国家の完全な統制とは矛盾しないとしました。
    国家はFTAのもとでどのように国民の利益を守ることができますか? 判決は、フィリピンの国家主義的な条項はすべてフィリピンの利益の保護に基づいていることを強調しました。判決文では、事業運営を継続させたい事業者が政府方針に従わざるを得ないようにすることによって政府が事業運営を主導、計画・目標を策定し、そしてまた事業者による規則違反や逸脱を検出する方策が明確に示されています。
    この判決の重要性は何ですか? この判決は、フィリピンの鉱業分野への外国投資を促進する一方、憲法で定められた国家の監督・統制権を尊重する上で重要な意味を持ちます。この判決により、フィリピンの天然資源の探査、開発、利用において、憲法で認められる範囲で外国投資家は安心してビジネスを展開できるようになります。
    最高裁判所が特定のFTAA条項を無効にしたのはなぜですか? 裁判所は、一部の条項(例えば、7.8と7.9項)は公共政策に反し、政府にとって著しく不利であると判断し、それらは分離可能であったため無効としました。しかしこれは、他の条件が適切に構成されている場合、FTAA自体を無効とするものではありません。
    フィリピン憲法で認められている合憲な外国投資は、フィリピン国内の他の産業の競争環境や優先順位にどのような影響を与えますか。 合憲的な外国投資が、政府に、すべての企業活動と並んで業界全体の基準および制限について策定させる事によって、農業および潜在的に財政的利益があるかまたは優先と評価される事業に対して不均衡の影響が発生するのを防ぎます。

    この判決は、国家が天然資源の管理において重要な役割を果たす一方で、経済成長のために外国投資を誘致することの重要性も認識しています。フィリピン政府には、自国の天然資源が持続可能な方法で利用され、フィリピン国民に最大の利益をもたらすようにするという課題が残されています。

    本判決の特定の状況への適用に関するお問い合わせは、ASG Lawに連絡するか、frontdesk@asglawpartners.comまでメールでお問い合わせください。

    免責事項:この分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。お客様の状況に合わせた具体的な法的助言については、資格のある弁護士にご相談ください。
    出典: La Bugal-B’Laan Tribal Association, Inc. v. Ramos, G.R. No. 127882, December 1, 2004

  • フィリピンにおける外国企業の事業活動の定義:入札参加と訴訟能力

    入札参加はフィリピンにおける外国企業の事業活動とみなされるか?訴訟能力の重要な判断基準

    [G.R. No. 131367, 2000年8月31日]

    外国企業がフィリピンで事業を行う場合、事業許可を取得する必要があることはよく知られています。しかし、どのような行為が「事業活動」に該当するのか、その線引きは必ずしも明確ではありません。本稿では、フィリピン最高裁判所の Hutchison Ports Philippines Limited v. Subic Bay Metropolitan Authority 事件(G.R. No. 131367)を基に、この重要な法的問題について解説します。本判決は、外国企業がフィリピン国内のプロジェクト入札に参加する行為が、事業許可取得の要否を判断する上で「事業活動」に該当するかどうかを判断した重要な先例となります。

    事業活動の定義と外国企業のライセンス

    フィリピン法において、外国企業がフィリピン国内で「事業活動を行う(doing business)」ためには、原則として事業許可(ライセンス)を取得する必要があります。これは、外国企業がフィリピンの法規制に従い、フィリピンの裁判管轄に服することを確保するための措置です。事業許可なく事業活動を行う外国企業は、フィリピンの裁判所に訴訟を提起する能力を欠くとされています(フィリピン会社法第144条)。

    しかし、「事業活動」の定義は法律で明確に定められているわけではなく、個々の事例に即して判断される必要があります。過去の判例では、「事業活動」とは、企業の設立目的を達成するため、または組織された機能の一部を行使するために行う行為と定義されています。単一の行為であっても、それが一時的または偶発的なものではなく、フィリピンで事業を行う意図を示すものであれば、「事業活動」とみなされることがあります。

    関連法規として、外国投資法(Republic Act No. 7042)も重要です。同法は、外国投資の促進と規制を目的としており、外国企業のフィリピンにおける事業活動についても規定しています。また、スービック経済特別区法(Republic Act No. 7227)は、スービック湾首都圏庁(SBMA)の権限と役割を定めており、本件の背景となる法律です。

    事件の経緯:スービック港コンテナターミナル開発プロジェクト

    本件は、スービック湾首都圏庁(SBMA)が実施したスービック港コンテナターミナル開発・運営プロジェクトの入札を巡る紛争です。SBMAは国際入札を実施し、複数の企業が応札しました。その中で、ハチソン・ポーツ・フィリピン(HPPL)を含むコンソーシアムが、当初SBMAによって落札者に選定されました。しかし、その後、SBMAは入札の再実施を決定し、HPPLはこれに異議を唱え、裁判所に差止命令を求めました。

    入札プロセスでは、まずSBMA技術評価委員会が事前資格審査を行い、国際コンテナターミナルサービス(ICTSI)、ロイヤルポートサービス(RPSI)とHPPLのコンソーシアムが適格 bidder とされました。その後、SBMAは国際コンサルタントを雇い、各社の事業計画を評価しました。コンサルタントはHPPLの事業計画を最も優れていると評価しましたが、RPSIはICTSIが既存のマニラ港運営者であることを理由に異議を唱えました。SBMA入札委員会はICTSIの入札を却下し、HPPLを落札者としましたが、ICTSIはSBMA理事会と大統領府に上訴しました。

    大統領府法律顧問の勧告に基づき、SBMA理事会は再評価を行い、再度HPPLを落札者としました。しかし、その後、大統領府長官が再入札を勧告し、大統領府がSBMAに再入札の実施を指示しました。HPPLは、SBMAの再入札実施の動きを阻止するため、地方裁判所に特定履行請求訴訟を提起するとともに、差止命令を求めましたが、地方裁判所はこれを認めませんでした。そのため、HPPLは最高裁判所に直接上訴しました。

    最高裁は、HPPLの差止請求を認めず、再入札の実施を容認しました。その理由として、最高裁は、HPPLがフィリピンで事業を行うためのライセンスを取得していない外国企業であり、入札参加は「事業活動」に該当するため、HPPLはフィリピンの裁判所に訴訟を提起する資格がないと判断しました。さらに、SBMAは政府機関であり、大統領の監督下にあるため、大統領府の再入札指示は適法であるとしました。

    最高裁判所の判断:入札参加は事業活動

    最高裁判所は、本判決において、外国企業がフィリピンのプロジェクト入札に参加する行為は、「事業活動」に該当すると明確に判断しました。裁判所は、以下の点を重視しました。

    • 入札参加は、企業の設立目的を達成するための行為である。
    • 入札に成功した場合、外国企業はフィリピンで継続的な事業活動を行うことが予定されている。
    • 入札プロセスは、単なる一時的な行為ではなく、フィリピン市場への参入意図を示すものである。

    裁判所は、判決の中で次のように述べています。「入札プロセスへの参加は、『事業活動を行う』ことに該当する。なぜなら、それは外国企業がここで事業に従事する意図を示すものだからである。コンセッション契約の入札は、まさに企業の設立または存在理由の行使なのである。」

    この判断は、外国企業がフィリピンで事業機会を追求する上で、事業許可取得の重要性を改めて強調するものです。入札参加の段階から「事業活動」とみなされるため、外国企業は入札参加前に事業許可を取得しておくことが望ましいと言えます。

    実務上の影響と教訓

    本判決は、外国企業がフィリピンで事業を行う際の法務戦略に重要な影響を与えます。特に、入札案件に関わる外国企業は、以下の点に留意する必要があります。

    • 入札参加前の事業許可取得:フィリピンでのプロジェクト入札に参加する前に、事業許可の取得を検討すべきです。これにより、落札後の契約締結や事業運営が円滑に進むだけでなく、万が一紛争が発生した場合の訴訟能力も確保できます。
    • 事業活動の定義の再確認:「事業活動」の定義は広範囲に及ぶ可能性があるため、自社のフィリピンにおける活動が「事業活動」に該当するかどうか、専門家(フィリピン弁護士など)に相談して慎重に判断することが重要です。
    • 政府機関との契約における注意点:SBMAのような政府機関との契約においては、大統領府の監督権限が及ぶことを念頭に置く必要があります。入札プロセスや契約条件について、透明性を確保し、関係当局との良好なコミュニケーションを維持することが重要です。

    重要な教訓

    1. 外国企業はフィリピンで事業を行う前に事業許可を取得する必要がある。
    2. フィリピンのプロジェクト入札への参加は「事業活動」とみなされる。
    3. 事業許可を持たない外国企業はフィリピンの裁判所に訴訟を提起する資格がない。
    4. 政府機関の決定は大統領府の監督下にある。
    5. 法務デューデリジェンスと専門家への相談を怠らないこと。

    よくある質問(FAQ)

    Q1: フィリピンで事業許可が必要な「事業活動」とは具体的にどのような行為ですか?

    A1: 「事業活動」の定義はケースバイケースで判断されますが、一般的には、企業の設立目的を達成するため、または組織された機能の一部を行使するために行う行為を指します。具体的には、商品の販売、サービスの提供、製造、建設工事、資源開発、金融取引などが該当する可能性があります。入札参加も「事業活動」に含まれると解釈されています。

    Q2: 事業許可を取得せずにフィリピンで事業活動を行った場合、どのようなリスクがありますか?

    A2: 事業許可なく事業活動を行った場合、フィリピンの裁判所に訴訟を提起する能力を欠くという重大なリスクがあります。また、違法な事業活動として、罰金や事業停止命令などの行政処分を受ける可能性もあります。

    Q3: 外国企業がフィリピンで訴訟を提起するためには、どのような条件を満たす必要がありますか?

    A3: 外国企業がフィリピンで訴訟を提起するためには、原則としてフィリピンで事業許可を取得している必要があります。ただし、単発の取引(isolated transaction)に該当する場合は、事業許可がなくても訴訟能力が認められる場合があります。しかし、入札参加は単発の取引とはみなされない可能性が高いです。

    Q4: SBMAのような経済特区内の企業も、フィリピンの法律や裁判所の管轄に服するのですか?

    A4: はい、スービック経済特別区もフィリピンの主権下にあり、SBMAもフィリピン政府機関です。経済特区内の企業であっても、フィリピンの法律を遵守する必要があり、フィリピンの裁判所の管轄に服します。ただし、経済特区法や関連法規により、一部の規制が緩和されている場合があります。

    Q5: 大統領府はSBMAの決定をどの程度まで覆すことができるのですか?

    A5: 最高裁判所の判決によれば、SBMAは政府機関であり、大統領の監督下にあるため、大統領府はSBMAの決定を広範囲に覆す権限を持つと解釈できます。特に、国家的に重要なプロジェクトや、多額の予算が伴う契約については、大統領府の関与が強まる傾向にあります。


    本件のような外国企業の事業活動に関するご相談は、フィリピン法務に精通したASG Lawにお任せください。貴社のフィリピン事業展開を強力にサポートいたします。ご相談はkonnichiwa@asglawpartners.comまでお気軽にお問い合わせください。
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  • 政府入札における大統領の権限と外国企業の訴訟能力: Hutchison Ports Philippines Limited 対 SBMA 事件

    政府入札における大統領の権限と外国企業の訴訟能力: Hutchison Ports Philippines Limited 対 SBMA 事件

    G.R. No. 131367, 2000年8月31日

    フィリピンにおける政府プロジェクトの入札は、国の経済発展に不可欠なインフラストラクチャを構築するための重要なプロセスです。しかし、入札プロセスが複雑で、法的な紛争が発生しやすいのも事実です。特に、大統領府の介入や外国企業の参加が絡む場合、その法的解釈はさらに難解になります。Hutchison Ports Philippines Limited 対 Subic Bay Metropolitan Authority (SBMA) 事件は、まさにそのような複雑な状況下で、政府入札における大統領の権限、およびフィリピンで事業を行う外国企業の訴訟能力という重要な法的問題を提起しました。

    この事件は、スービック湾自由港区内のコンテナターミナルの開発・運営に関する入札を巡り、落札者に選ばれた外国企業Hutchison Ports Philippines Limited (HPPL) が、その後の大統領府の指示による再入札に異議を唱え、SBMAを相手取って訴訟を起こしたものです。最高裁判所は、この訴訟において、大統領のSBMAに対する監督権限、および入札に参加する外国企業がフィリピン国内で訴訟を提起するための要件について重要な判断を示しました。

    大統領の監督権限と政府機関の裁量権

    この事件の核心の一つは、大統領が政府機関であるSBMAの入札決定を覆す権限を持つのか、という点です。最高裁判所は、SBMAが国家政府の「instrumentality(道具)」であり、大統領の監督下にあると判断しました。Letter of Instruction No. 620は、政府機関の200万ペソ以上の契約には大統領の承認が必要であると定めており、SBMAもこの規定の対象となります。裁判所は、大統領には正当な理由があればSBMAの決定を覆す権限があり、今回の再入札指示もその権限の範囲内であるとしました。

    入札プロセスにおいては、政府機関は広範な裁量権を持つことが認められています。入札の受付、拒否、または落札決定の取り消しなど、入札プロセス全体を通じて、政府機関は公共の利益を最大限に考慮し、最も有利な条件を提供する入札者を選ぶことができます。裁判所は、政府機関の裁量権は、不正や不公正を隠蔽するために行使されない限り、司法が介入すべきではないという原則を改めて確認しました。この事件では、大統領府の再入札指示は、SBMAの決定に不当な要素があったとは認められず、適法な権限行使と判断されました。

    外国企業の「事業活動」と訴訟能力

    もう一つの重要な争点は、HPPLがフィリピン国内で訴訟を提起する資格があるのか、という点です。HPPLは、英国領ヴァージン諸島で設立された外国企業であり、フィリピンで事業を行うためのライセンスを持っていませんでした。HPPLは、今回の入札参加は「isolated transaction(単発的な取引)」であり、ライセンスは不要であると主張しましたが、裁判所はこれを認めませんでした。

    最高裁判所は、「事業活動を行う(doing business)」の定義はケースバイケースで判断されるべきであるとしつつも、企業が設立目的を達成するための行為、または組織された機能の一部を行使する場合は、「事業活動」に該当するとしました。入札への参加は、コンテナターミナルの運営というHPPLの事業目的そのものであり、単なる偶発的または一時的な行為とは言えません。裁判所は、「外国企業がフィリピン国内でIBRDやADBの国際プロジェクトの入札に参加する場合、ライセンスが必要な事業活動を行っているとみなされる」という先例を引用し、HPPLの入札参加も「事業活動」に該当すると判断しました。

    外国企業にライセンスを義務付ける主な目的は、外国企業をフィリピンの裁判管轄に服させ、政府が国内での活動を規制できるようにすることです。ライセンスを持たずに事業を行う外国企業は、フィリピンの法律を尊重し、それに拘束されるという前提条件を満たしていないため、必要が生じた場合にフィリピンの裁判所を利用することは認められません。裁判所は、外国投資家は歓迎するが、フィリピンの法律を尊重し、遵守する義務があることを強調しました。HPPLは、必要なライセンスを持たずにフィリピンで「事業活動」を行った外国企業であるため、フィリピンの裁判所に訴訟を提起する資格がないと判断されました。

    事例詳細:Hutchison Ports Philippines Limited 対 SBMA 事件

    1996年2月12日、SBMAは主要な国内新聞および国際刊行物で、スービック湾自由港区内の近代的な海洋コンテナターミナルを開発・運営する機会を民間セクターに提供する入札を公告しました。7つの入札者の中から、SBMAの技術評価委員会(SBMA-TEC)による事前資格評価を通過した3社が資格のある入札者として宣言されました。それは、(1) International Container Terminal Services, Inc. (ICTSI)、(2) Royal Port Services, Inc. と HPC Hamburg Port Consulting GMBH (RPSI) のコンソーシアム、そして (3) Hutchison Ports Philippines Limited (HPPL) でした。HPPLは、HPPL、Guoco Holdings (Phils.) Inc.、および Unicol Management Services, Inc. で構成されるコンソーシアムを代表していました。3つの資格のある入札者はすべて、1996年7月1日までに正式な入札パッケージをSBMAの事前資格審査・入札・授与委員会(SBMA-PBAC)に提出する必要がありました。

    その後、世界銀行が専門知識を推奨する3人の国際コンサルタントがSBMAによって雇用され、各入札者が提出した事業計画を評価し、提出された入札の透明かつ包括的なレビューを保証することになりました。SBMAはまた、Davis, Langdon and Seah Philippines, Inc. の会社を雇い、入札の評価と、落札者が選ばれた後の交渉プロセスを支援させました。すべてのコンサルタントは、レビューと評価の後、HPPLの事業計画が「他の2つの入札者のものよりもはるかに優れている」という結論に全員一致で達しました。

    しかし、入札者の提案されたロイヤリティ料金を含む封印された封筒が指定された日時と場所で開封される前に、RPSIはICTSIがExecutive Order No. 212と運輸通信省(DOTC)Order 95-863に基づいてフィリピンで2番目の港湾を運営することは法的に禁止されていると正式に抗議しました。RPSIは、ICTSIの財務入札を却下するように要求しました。

    それにもかかわらず、封印された財務入札の開封は、RPSIによって示された抗議に関連して「勧告の下で」進められました。財務入札、より具体的には各入札者の提案されたロイヤリティ料金は、次のとおりでした。

    ICTSI ————US$57.80 TEU

    HPPL ————US$20.50 TEU

    RPSI ————-US$15.08 TEU

    SBMA-PBACは、落札入札の発表を延期することを決定しましたが、代わりにICTSIにRPSIが提出した抗議書に対応するための7日間を与えました。HPPLはRPSIの抗議に加わり、ICTSIはマニラ国際コンテナターミナル(MICP)をすでに運営しており、MICPとスービック湾コンテナターミナル施設との間で避けられない利益相反が生じると述べて、ICTSIは失格となるべきであると主張しました。

    1996年8月15日、SBMA-PBACは、ICTSIの入札は「入札書類およびフィリピンの法律の要件を満たしていない」ため、ICTSIの入札を拒否する決議を発行しました。決議はまた、次のように宣言しました。

    さらに決議される、落札入札はHUTCHISON PORTS PHILIPPINES LIMITED (HPPL) に授与され、HPPL (HUTCHISON) との交渉が直ちに開始され、本日から45日以内に受け入れ可能な合意を締結することを目指し、それが失敗した場合は、RPSI (ROYAL) との交渉が開始され、その後45日以内に受け入れ可能な合意を締結することを目指し、それが失敗した場合は、入札の失敗が宣言されるものとする。

    翌日、ICTSIはSBMAの取締役会に書簡による異議申し立てを行い、ICTSIの入札を拒否し、HPPLに授与する上記の決議の無効化と取り消しを要求しました。しかし、SBMA理事会が異議申し立てに対応する前に、ICTSIは大統領府にも同様の異議申し立てを行いました。1996年8月30日、当時の首席大統領法律顧問(CPLC)レナト・L・カエタノは、当時のフィデル・V・ラモス大統領に覚書を提出し、次の勧告を含めました。

    したがって、大統領はSBMAのゴードン委員長にオプション番号4、つまり、当事者が提出した財務入札を再評価することを指示することを提案します。再評価では、次のすべての要素を考慮に入れる必要があります。

    1. ICTSIの入札を復活させる。

    2. 「独占」に関するすべての議論を無視する。

    3. 再評価は、当事者の財務入札に限定する必要があります。

    3.1 当事者の事業計画が受け入れられた(合格した)ことを考慮して、入札書類のパートB(1)のパラグラフ(c)および(d)に規定されている入札評価基準に厳密に従う。

    4. 再評価では、COAはどの財務入札がより有利であるかを判断するために積極的に参加する必要があります。

    5. さらに、すべての当事者は、手続きにおける公平性と透明性を確保するために、それぞれの財務入札の構成要素/正当化を解明または明確にする十分な機会を与えられるべきです。

    6. 最終的な授与をレビューする大統領の権限は維持されるものとする。

    CPLCカエタノの勧告はラモス大統領によって承認され、ラモス大統領の手書きの承認のコピーがSBMA取締役会に送られました。したがって、SBMA取締役会は、会計検査院の代表者の同意を得て、評価基準、入札書類に含まれる詳細な構成要素、入札書類から得られたすべての関連情報、および3人の国際専門家とSBMAが雇用したコンサルタント会社の報告書に従って入札の再評価に焦点を当てることに合意しました。

    1996年9月19日、SBMA取締役会は決議を発行し、次のように宣言しました。

    よって、入札招待状に適合し、SBMAに最大の財務収益をもたらす現実的な事業計画を持ち、可能な限り最良の提案であり、政府にとって最も有利な入札はHPPLの入札であり、HPPLは落札入札者として選ばれ、スービック湾コンテナターミナルの運営と開発の譲歩がここに授与されるものとする。

    1996年9月24日付の書簡で、SBMA取締役会は入札提案の再評価の結果を大統領府に提出しました。その内容は次のとおりです。

    SBMAは、再評価への参加を自主的に抑制した取締役会議長を除く、すべての取締役の全会一致の投票により、HPPLの入札を落札入札として選択しました。入札は、入札書類に従ってSBMAに最大の財務収益をもたらす現実的な事業計画を持つ適合入札であり、市場で可能な限り最良の提案であり、政府にとって最も有利な入札です。

    SBMA取締役会の勧告とHPPLへのプロジェクト授与の措置にもかかわらず、当時のルーベン・トーレス事務官は大統領府に覚書を提出し、別の再入札を実施することを推奨しました。その結果、大統領府はSBMA取締役会にHPPLとの譲歩契約の署名を控え、プロジェクトの再入札を実施するよう指示する覚書を発行しました。

    その間、DOTCの常駐オンブズマンは、HPPLに契約を授与したとして、SBMA-PBACのメンバーに対する共和国法第3019号第3条(e)項の違反の申し立てをオンブズマン事務所に提出しました。1997年4月16日、オンブズマン事務所の評価および予備調査局は、SBMA-PBACのメンバーを責任から免除し、彼らに対する申し立てを却下する決議を発行し、次のように裁定しました。

    両当事者のそれぞれの主張を勤勉に検討した結果、我々は、回答者がHPPLに入札を授与した際に裁量権を超えて行動したことを特定する記録上の証拠はないと判断する傾向があり、ここにそう判断する。記録は、回答者が申請者から提示された財務パッケージを決定する際の裁量権の行使において、政府への最大の財務収益を公正に評価したDavis, Langdon and Seah (DLS) の専門家報告書に導かれたことを明らかにした。回答者がその特権を濫用したことを示す証拠はない。DLS報告書で簡潔に述べられているように、特に、「入札者が提示したSBMAへの完全な財務収益を評価する際には、次の重要な事項を考慮する必要があります。

    1. ロイヤリティ料金

    2. TEUの量。以下の影響を受ける。

    a. 関税率

    b. マーケティング戦略

    c. 港湾施設

    d. 効率的で信頼性の高いサービス

    入札者の事業計画の評価に関する上記のパラメータにより、回答者は、専門家パネルとSBMAの技術評価委員会の意見に沿って判断を調整したため、HPPLの事業計画が優れており、ICTSIの事業計画は非現実的に高く、最終的にはSBMA港の国際競争力を阻害する可能性があるという点で、公正に導かれました。回答者は、世界銀行の専門家パネルが、ICTSIのTEUあたりU.S.$119.00という高関税率はHPPLよりもすでに37%高く、最初の2年間でさらに20%、その後5%ずつ増加する可能性があると指摘したと主張しました。要するに、高関税は潜在的な顧客を落胆させ、貨物量の減少につながり、最終的にはSBMAへの財務収益を減少させる可能性があります。回答者は、HPPLの事業計画は最大の財務収益を提供しており、それは5年間でHPPLが12億5000万ペソ、ICTSIが8億5900万ペソ、RPSIが4億2000万ペソを提供することに相当すると主張しました。最初の10年間で、HPPLは24億3000万ペソ、ICTSIは21億9700万ペソ、RPSIは16億3200万ペソを提供します。

    記録上の証拠とともにこの観点から見ると、署名されたパネルは、回答者がHPPLに入札を授与する際に裁量権を超えたとは考えていません。したがって、回答者の行為が、フィリピン共和国の利益を危うくする可能性のある、政府を著しく不利な状況に陥れたとは言えません。

    1997年7月7日、HPPLは、SBMAが交渉を開始し、HPPLが落札入札者であるという以前の声明にもかかわらず、譲歩契約を締結することを怠り、拒否したことに不満を感じ、オロンガポ市地方裁判所(RTC)第75支部に対し、特定履行、義務的差止命令、および損害賠償を求める訴訟をSBMAに対して提起しました。期日までに、ICTSI、RPSI、および大統領府は、原告HPPLが求めた救済に反対する別々の答弁書を提出しました。

    原告HPPLは、SBMAがHPPLが落札入札者であることを繰り返し宣言し、確認したことを考慮すると、民法第1305条に基づき、HPPLと被告SBMAの間で拘束力のある法的強制力のある契約が締結されたと主張し、主張しました。被告SBMAは、提案されたコンテナターミナルを運営および開発するためのHPPLの申し出を受け入れたため、原告HPPLとの譲歩契約の交渉を開始し、作成することにより、義務を遵守する義務があります。HPPLはまた、SBMAが採用した入札手続きは、既存の法律およびSBMA自体が確立した規則を忠実に遵守していると指摘しました。したがって、HPPLが落札入札者として宣言された場合、SBMAとの交渉を行う排他的権利を取得しました。その結果、原告HPPLは、SBMAは、(1)提案されたプロジェクトの再入札を実施すること、および/またはそれに関連するそのような行為を実行することを禁じられるべきであり、(2)HPPLとSBMAの間の交渉が締結されるか、または受け入れ可能な合意に達することができない場合に備えて、原告HPPL以外の当事者と交渉することを禁止されるべきであると主張しました。原告HPPLはまた、SBMAが譲歩契約の交渉を継続的に拒否することは、その所有権の重大な侵害であり、原告HPPLに損害と偏見を与えたと主張しました。

    したがって、HPPLは次のように祈願しました。

    (1) 本訴状の提出時に、被告またはその適切な役員または委員会に対し、スービック湾コンテナターミナルの開発および運営に関する譲歩契約を可能な限り早期に署名するという観点から、原告との交渉の開始日を特定し、また、そのような行為(例えば、議論の基本ルールを定めること)を実行するように命じる義務的差止命令申請の適切性を判断するための公聴会が予定されること。

    (2) その後、原告に有利に、被告に対して次の判決が下されること。

    2.1. 発行された仮義務的差止命令を永続的なものとすること。

    2.2. 被告に対し、提案されたスービック湾コンテナターミナルの開発および運営に関して原告と締結した譲歩契約を実行するように命じること。

    2.3. 被告に対し、原告の弁護士費用として500,000.00ペソ、または裁判中に別途証明された金額を支払うように命じること。

    原告は、その他の衡平法上の救済を祈願します。

    公判前審問の間、提起され、解決のために提出された問題の1つは、大統領府が原告HPPLに有利なSBMAによる授与を無効にすることができるかどうか、そして、もしそうであれば、大統領府がSBMAに提案されたプロジェクトの再入札を実施するように指示できるかどうかでした。

    裁判所に係属中の訴訟の間、1997年8月4日、SBMAは原告HPPL、ICTSI、およびRPSIに通知を送り、提案されたプロジェクトの再入札に参加する意向を表明するように要求しました。1997年10月20日、原告HPPLは、落札入札者が1997年12月5日に発表されるという入札前会議の議事録のコピーを受け取りました。その後、1997年11月4日、原告HPPLは、SBMAが資格のある唯一の入札者であるICTSIとRPSIの入札を受け入れたことを知りました。

    訴訟が係属中に再入札を差し止めるために、原告HPPLは1997年10月28日に現状維持の申し立てを提出しました。申し立ては、1997年11月3日付の命令で、裁判所によって却下されました。その内容は次のとおりです。

    原告は、被告と介入者が本訴訟に自主的に参加することにより、「SBMAがスービック湾コンテナターミナルの譲歩契約または運営の再入札を実施するという大統領府の指示の適切性、合法性、および有効性の問題を無条件に提出することに同意した」と主張している。したがって、裁判所が提示された問題を解決する能力を損なわないために、現状を維持する必要があります。さらに、専門職の倫理は、弁護士は問題を学術的にする傾向のある行為を中止する必要があることを要求しています。

    反対意見は、管轄権の欠如に基づいています。差止命令の発行は、一時的差止命令または差止命令状の発行と同等であり、これはR.A. 7227のセクション21の規定に照らして裁判所が行うことはできません。R.A. 7227のセクション21は、次のように述べています。

    セクション21。差止命令および差止命令。– 軍事保護区を代替の生産的な用途に転換するプロジェクトの実施は緊急かつ必要であり、フィリピン最高裁判所が発行した命令を除き、差し止めまたは差し止められてはならない。

    1997年10月30日の公聴会で、SBMAの弁護士は、入札を特定の期間内に行うことを義務付ける法律または行政規則または規制はないことを明らかにしました。

    確かに、1997年11月4日の再入札の延期の問題は、SBMAの健全な裁量に委ねられています。本裁判所が差止命令を発行することは、一時的差止命令または予備的差止命令状の発行と同等になります。(Prado v. Veridiano II, G.R. No. 98118, 1991年12月6日)。

    裁判所は、大統領府が問題について十分に審理されていないことに留意しています。さらに、介入者の1人は、管轄権の問題を他のすべての問題に先立って最初に解決する必要があるという見解を持っています。

    よって、上記の考慮事項から見て、原告の申し立ては却下されます。

    よって、命じる。

    したがって、請願者(下の原告)HPPLが、被申立人SBMA、ICTSI、RPSI、および事務官に対して差止命令を取得するために提起した本請願です。請願者HPPLが本請願の提出を正当化するために依拠した根拠は、次のように要約されます。

    29. 本裁判所が、本訴訟の係属中に、SBMAに、1997年12月5日に確実に発生する上記の行為を行うことを許可するか、または差し控えることを控える場合、そのような措置(または不作為)は、スービック湾コンテナターミナルの運営の落札入札者として有効に発表された請願者に不利益をもたらすことになります。

    30. 本裁判所が、本訴訟の係属中に、SBMAに上記の脅迫された行為を行うことを許可するか、または差し控えることを控えることは、オロンガポ市RTCに提起された民事訴訟第243-O-97号における請願者の権利を侵害することになり、裁判所が到達する可能性のある判決を無意味で無効にする可能性があります。述べたように、その手続きで当事者が提起した法的問題は、国の誇りと威信にとって非常に重要であり、民営化プロジェクトの国際入札に従事する政府機関の誠実さに影響を与えます。下級裁判所によるその実質的な解決、およびその後、控訴裁判所での当事者によるさらなる措置は、被申立人およびすべてのフィリピン国民に確実に利益をもたらすでしょう。

    よって、請願者HPPLは次の救済を求めました。

    a) 本請願書の提出時に、同請願書を適正な手続きに付し、SBMAまたはその委員会、またはその管理下または指示の下で行動するその他の者が、スービック湾コンテナターミナルの民営化のための再入札に関連して、および/または被申立人の一部または全部がそれに関連するそのような行為を実行することを、1997年12月5日またはその後いつでも落札者を宣言することを差し止める一時的差止命令および/または予備的差止命令状を一方的に発行すること。本裁判所からのさらなる命令まで。

    b) 適切な手続きの後、請願者に有利に、被申立人に対して判決が下されること –

    (1) オロンガポ市RTCが民事訴訟第243-O-97号で下す可能性のある判決が最終的に解決されるまで、SBMAがスービック湾コンテナターミナルの開発および運営に関する再入札を実施したり、そのような再入札の落札者を宣言したりすることを中止するように命じること。

    (2) SBMAが1997年12月5日に発表または発行する可能性のある授与を無効と宣言すること。

    (3) 被申立人に訴訟費用を支払うように命じること。

    請願者は、その他の衡平法上の救済を祈願します。

    本請願は、特定履行の訴訟が裁判所によって解決されるまで、被申立人SBMAによる提案されたSBICTプロジェクトの再入札の実施を保留にすることを唯一の目的として、差止命令状の発行を求めています。言い換えれば、請願者HPPLは、主要な訴訟で提起された問題が訴訟され、最終的に決定されるまで、現状を維持することを祈願しています。請願者は、上記の共和国法7227第21条により、本裁判所の排他的管轄権および権限を行使することを余儀なくされました。

    1997年12月3日、本裁判所は、請願者HPPLの「被申立人SBMAまたはその委員会、またはその管理下または指示の下で行動するその他の者が、スービック湾コンテナターミナルの民営化のための再入札に関連して、および/または被申立人の一部または全部がそれに関連するそのような行為を実行することを、1997年12月5日またはその後いつでも落札者を宣言することを差し止める」一時的差止命令の申請を認めました。

    この論争が発生して以来、貴重な時間が失われ、不可欠なインフラストラクチャプロジェクトは事実上「冬眠状態」になり、関係するすべての当事者、とりわけ国家の利益のために奉仕するその役員および機関を通じて、フィリピン政府に不利益をもたらしていることは間違いありません。したがって、ここおよび裁判所に提起された問題は、すでに耐え難い状況を悪化させないように、遅滞なく解決することが不可欠です。

    まず、差止命令状の申請は単なる仮救済であり、主要な訴訟への単なる付随物です。したがって、主要な訴訟における問題が、差止命令状の適法性または不適法性に関する反対当事者の反対の立場を支持するために提案された申し立ておよび反対申し立てと密接に関連しているか、または同一であっても珍しくありません。主要な特定履行の訴訟における裁判所の問題の決定を先取りする意図はありませんが、本裁判所は、正義、公平、および良心を本質とする方法で本裁判所の前に提起された問題を解決するという義務を負っています。

    私たちの発言は、差止命令状の発行を正当化する状況があるかどうかを判断することのみを目的としていますが、裁判所に係属中の主要な訴訟に何らかの影響を与える可能性があることは避けられません。それにもかかわらず、主要な訴訟の実質的な内容に立ち入ることなく、ここでの私たちの調査結果は、差止命令状の申請に付随する必要な問題に限定されるものとします。

    差止命令状を発行するには、次の要件が証明されなければなりません。

    第一に。請願者/申請者は、明確かつ明白な権利を持っている必要があります。

    第二に。そのような権利の重大かつ実質的な侵害があること。

    第三に。重大な損害を防ぐための緊急かつ永続的な必要性があること。

    私たちの考えでは、請願者HPPLは、SBMAが譲歩契約の交渉を強制されるほど、落札入札者として最終的に宣言される明確かつ明白な権利を十分に示していません。SBMA取締役会は決議によりHPPLを落札入札者として宣言したかもしれませんが、その授与は最終的で絶対的なものとは言えません。SBMA取締役会およびその他の役員は、大統領府の管理および監督下にあります。SBMAが実施するすべてのプロジェクトは、Letter of Instruction No. 620に基づくフィリピン大統領の承認が必要です。Letter of Instruction No. 620は、SBMAをその範囲内にある国家政府の「instrumentality(道具)」として位置付けています。instrumentalityは、セクション10で「部門の枠組みに統合されておらず、法律によって特別な機能または管轄権を与えられ、一部またはすべての法人権限を付与され、特別基金を管理し、通常は憲章を通じて運営上の自治権を享受する国家政府の機関」と定義されています。この用語には、規制機関、憲章機関、および政府所有または管理下の企業が含まれます。」

    憲章機関として、SBMAは常に大統領府の直接の管理下にあり、特にSBMAが実施する契約および/またはプロジェクトが多額の資金を必要とする場合はそうです。具体的には、1997年10月27日付のLetter of Instruction No. 620は、公開入札または交渉を通じて授与された200万ペソ(P2,000,000.00)以上の国家政府機関、機関、およびinstrumentality、政府所有または管理下の企業を含むすべての契約に大統領の承認が必要であることを義務付けています。大統領は、その権限内で、正当な理由でSBMA取締役会による授与を取り消すまたは覆すことができます。入札を受け入れるか拒否するか、またはその授与を取り消す裁量権は非常に広範であり、そのような裁量権の行使が不公平または不正義を隠蔽するために使用されていることが明らかでない限り、裁判所は一般的に行政部門によるその行使に干渉しないことは十分に確立されています。大統領が以前SBMAがHPPLに有利に宣言した授与を取り消し、再入札を実施するように指示する覚書を発行したとき、それは大統領の権限の範囲内であり、その特権の有効な行使でした。その結果、請願者HPPLは、大統領の取り消し前にSBMAによって発表された授与が最終的かつ拘束力のあるものではなかったため、明確かつ明白な権利を取得しませんでした。

    請願者HPPL側に明確かつ明白な権利がないため、提案されたプロジェクトの再入札は、言及すべき重大かつ実質的な侵害がないため、もはや差し止めることはできません。したがって、認識された重大な損害を防ぐための緊急または永続的な必要性はもはやありません。要するに、差止命令状の発行の要件が本件に存在しないため、請願者の申請はメリットがないため却下されなければなりません。

    最後に、請願者HPPLが本裁判所に救済を求める法的能力があるかどうかという問題に焦点を当てます。確かに、請願者HPPLは、英国領ヴァージン諸島の法律に基づいて組織され、存在している外国法人です。実際の入札者は、請願者、およびGuoco Holdings (Phils.) Inc. と Unicol Management Servises, Inc. の2つの他の法人で構成されるコンソーシアムでしたが、法廷に論争を持ち込んだのは請願者HPPLのみであり、外国法人はフィリピンの裁判所に訴訟を提起して訴追するためにはフィリピンで事業を行うためのライセンスが必要であるという法的要件を回避するために、単独の取引についてのみ訴訟を起こしていると主張しています。

    この問題の渦は、入札への参加が単なる単独の取引であるのか、それとも請願者HPPLが法廷に来る前にフィリピンで事業を行うためのライセンスを必要とするほど、フィリピンで「事業を行う」または「取引を行う」ことに該当するのかということです。

    フィリピンで「事業を行う」または「事業に従事する」または「取引を行う」ものを構成するものについて定められた一般的な規則または支配的な原則はありません。各ケースは、その特殊な状況に照らして判断する必要があります。したがって、企業がそのために設立された行為を実行するか、または組織された機能の一部を行使する場合、単一の行為または取引は「事業を行う」と見なされることがよくあります。事業の量または規模は重要ではありません。単一の行為であっても、外国法人が事業を行う意図を示している場合は、単なる偶発的または一時的な行為とは言えません。

    入札プロセスへの参加は、「事業活動を行う」ことに該当します。なぜなら、それは外国法人がここで事業に従事する意図を示しているからです。譲歩契約の入札は、法人の設立または存在理由の行使に過ぎません。したがって、「フィリピンでのIBRDおよびADB国際プロジェクトの入札に招待された外国企業は、ライセンスが必要なフィリピンで事業を行っていると見なされる」と判決されています。この点で、外国法人がライセンスを必要とするかどうかを決定するのは、事業規模に関係なく、外国法人がそのために設立された行為を実行することです。

    ライセンス要件の主な目的は、フィリピン国内で事業を行いたい外国法人に、州の裁判所の管轄に服するように強制し、政府が国内での活動を規制するために彼らに対する管轄権を行使できるようにすることです。外国法人がライセンスなしにフィリピンで事業を運営し、したがってフィリピンの法律に服さない場合、必要が生じた場合に、その外国法人が私たちの裁判所でそれらを援用することを許可しないのは当然のことです。「外国投資家は、相互利益のために私たちと協力するために常にこの国で歓迎されていますが、彼らは適切な場合にフィリピン法を尊重し、拘束されるという不可欠な条件として準備する必要があります。目の前の事件のように。」ライセンスの要件は、外国法人を不利な立場に置くことを意図したものではありません。訴訟能力の欠如の原則は、健全な公共政策の考慮事項に基づいているためです。したがって、請願者HPPLは、本裁判所に差止命令を求める本請願を提起する資格がないと見なされるべきです。なぜなら、それは必要なライセンスなしにフィリピンで事業を行っている外国法人だからです。

    よって、上記のすべてを考慮して、本請願はメリットがないため却下されます。さらに、1997年12月3日に発行された一時的差止命令は解除され、取り消されます。費用は負担しません。

    よって、命じる。

    プーノ、カプナン、およびパルドJJ.は同意。


    [1] 別紙「A」。ロール、p. 16; フィリピン・デイリー・インクワイアラー、ビジネス・ワールド、ロイズ・リスト、およびオロンガポ市の地元紙2紙の1996年2月12日号

    [2] コンサルタントは次のとおりでした。

    (i) グスタフ・ド・モニー氏、元運営・商業マネージャー、ノードナティ、アントワープ港、ベルギー

    (ii) W. ドン・ウェルチ氏、エグゼクティブ・ディレクター兼CEO、サウスカロライナ州港湾局、米国

    (iii) トン・ヨイ・チュアン氏、運営担当ゼネラルマネージャー、ペナンコンテナターミナル、マレーシア。

    [3] 別紙「C」、「D」、「E」、「F」。ロール、pp. 22-80.

    [4] 別紙「G」。ロール、p. 82.

    [5] 上記、ロール、p. 82.

    [6] 上記、ロール、p. 84.

    [7] 別紙「A」。ロール、pp. 230-232.

    [8] 別紙「B」。ロール、pp. 233-236.

    [9] 別紙「J」。ロール、pp. 89-90.

    [10] SBMAの苦情への回答の別紙「17」。

    [11] 別紙「E」。ロール、p. 240.

    [12] 別紙「D」。ロール、p. 239; 1997年1月2日付覚書。

    [13] 別紙「2」。ロール、pp. 304-312.

    [14] 別紙「M」。ロール、pp. 93-100、民事訴訟第243-0-97号。

    [15] 別紙「P」。ロール、pp. 113-121; 別紙「13」。ロール、pp. 427-433; 別紙「14」。ロール、pp. 435-438.

    [16] 苦情、ロール、p. 99.

    [17] 別紙「Q」。ロール、p. 122.

    [18] 別紙「R」。ロール、pp. 123-128.

    [19] 別紙「S」。ロール、pp. 129-132.

    [20] 別紙「T」。ロール、pp. 133-134.

    [21] 請願書、ロール、p. 10.

    [22] 請願書、ロール、p. 11.

    [23] 最高裁判所決議、ロール、p. 144.

    [24] PAL, Inc. v. NLRC, 287 SCRA 672, 680 (1998).

    [25] Versoza v. CA, 299 SCRA 100, 108 (1998); Arcega v. CA, 275 SCRA 176, 180 (1997); Teotico v. Agda, Sr., 197 SCRA 675, 696 (1991).

    [26] ロール、pp. 633-634.

    [27] Inter-Asia Services Corp. (International) v. CA, 263 SCRA 408, 419 (1996).

    [28] Mentholatum Co. v. Mangaliman, 72 Phil. 524, 528 (1941).

    [29] Avon Insurance PLC v. CA, 273 SCRA 312, 321 (1997).

    [30] Granger Associates v. Microwave Systems, Inc., 189 SCRA 631, 640 (1990).

    [31] Eriks Pte., Ltd. v. CA, 267 SCRA 567, 580 (1997).

    [32] Granger Associates v. Microwave Systems, Inc., supra., p. 642.

    [33] National Sugar Trading Corp v. CA, 246 SCRA 465, 470 (1995).



    出典:最高裁判所電子図書館
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  • フィリピンで事業を行う外国企業は事業免許の取得が必須:エリクス対控訴院事件

    フィリピンでビジネスを行う外国企業は、事業免許取得の義務を怠ると訴訟を起こす資格を失う

    G.R. No. 118843, 1997年2月6日

    イントロダクション

    外国企業がフィリピンで事業活動を行う際、事業免許の取得は単なる手続き上の問題ではありません。事業免許を持たずにビジネスを展開した場合、フィリピンの裁判所を利用する権利が制限される可能性があります。本稿では、エリクスPTE. LTD.対控訴院事件を基に、外国企業がフィリピン国内で訴訟を提起するための資格要件、特に「事業活動」の定義と事業免許の必要性について解説します。この事例は、外国企業がフィリピン市場に進出する際に直面する可能性のある法的落とし穴と、それを回避するための重要な教訓を提供します。

    法的背景:フィリピン会社法と「事業活動」の定義

    フィリピン会社法第133条は、フィリピン国内で事業を行う外国企業に対し、事業免許の取得を義務付けています。この条項は、免許を持たない外国企業がフィリピンの裁判所や行政機関で訴訟を提起したり、介入したりすることを禁じています。ただし、外国企業が訴えられる立場になることは妨げられません。重要なのは、「事業を行う」という行為の定義です。会社法自体には明確な定義がないため、判例法と外国投資法(RA 7042)を参照する必要があります。

    外国投資法第3条(d)は、「事業を行う」というフレーズを広範に定義しています。これには、注文の勧誘、サービス契約、事務所の開設(連絡事務所や支店を含む)、フィリピンに居住する代表者や販売代理人の任命、フィリピン国内企業の経営、監督、管理への参加、および商業的取引や取り決めの継続性を示唆するその他の行為が含まれます。要するに、営利目的で組織の目的を継続的に追求する活動は、事業活動とみなされる可能性が高いです。ただし、単なる株主としての投資や、フィリピン居住の独立した販売代理店を通じた取引は、事業活動とはみなされない場合があります。

    最高裁判所は、メントラタム社対マンガリマン事件で、「事業を行う」かどうかのテストを確立しました。このテストは、外国企業が設立目的である事業の本質を継続しているか、それとも実質的に事業から撤退し、他者に事業を譲渡したかどうかを判断するものです。商業的取引と取り決めの継続性、および組織の目的を漸進的に追求する活動の実行が重視されます。

    ケース概要:エリクスPTE. LTD.対控訴院事件

    エリクスPTE. LTD.はシンガポール法人であり、工業用ポンプ、バルブ、配管用のシール材などを製造・販売しています。未払いの商品代金回収のため、フィリピンの裁判所に訴訟を提起しましたが、事業免許を持っていませんでした。訴訟の相手方であるデルフィン・F・エンリケス・ジュニアは、エリクスがフィリピンで事業免許なしに事業を行っているため、訴訟を提起する資格がないとして訴訟の却下を求めました。

    事実関係:

    • エリクスはフィリピンで事業免許を持っていませんでした。
    • 1989年1月から8月にかけて、エンリケスはエリクスから16回にわたり商品を購入しました。
    • これらの取引は、FOBシンガポール、90日間の信用取引条件で行われました。
    • エリクスはエンリケスに未払い代金の支払いを求めましたが、エンリケスは支払いを拒否しました。

    訴訟の経緯:

    1. 地方裁判所(RTC):エンリケスの訴えを認め、エリクスの訴訟を却下しました。裁判所は、16回の販売は「孤立した取引」とは言えず、エリクスはフィリピンで事業免許なしに事業を行っていると判断しました。
    2. 控訴院(CA):RTCの判決を支持しました。CAも、一連の取引は孤立したものではなく、エリクスはフィリピンで事業を行っていると認定し、訴訟資格がないと判断しました。
    3. 最高裁判所(SC):CAの判決を支持し、エリクスの上訴を棄却しました。

    最高裁判所の判断:

    最高裁判所は、エリクスの事業活動は「孤立した取引」ではなく、「事業を行う」に該当すると判断しました。裁判所は、取引の回数だけでなく、エリクスの事業の性質、取引の継続性、および信用供与の事実を重視しました。裁判所は、エリクスが自社の主要製品ラインである商品を販売し、90日間の信用取引を提供していたことから、フィリピンで継続的に事業を行う意図があったと推認しました。最高裁判所は、以下の点を強調しました。

    「事業を行う」と決定づけるのは、取引の数や量ではなく、より重要なのは、企業が国内で事業の本質を継続する意図があるかどうかである。数と量は、そのような意図の単なる証拠に過ぎない。「孤立した取引」というフレーズには、明確で固定された意味、すなわち、外国企業の通常の事業から切り離された取引または一連の取引であり、事業組織の目的を漸進的に追求する意図がないという意味がある。外国企業が「事業を行っている」かどうかは、必ずしも取引の頻度によって決まるのではなく、むしろ取引の性質と性格によって決まる。

    最高裁判所は、エリクスが事業免許を取得すれば、再度訴訟を提起できることを示唆しました。訴訟資格の欠如による却下は、実質的な権利関係の判断ではないため、再訴は禁じられません。また、契約締結時に資格がなかった場合でも、その後の免許取得によって資格が治癒されるという判例も存在します。

    実務上の影響と教訓

    エリクス事件は、外国企業がフィリピンで事業を行う際に事業免許の取得がいかに重要であるかを明確に示しています。事業免許を持たずに継続的な商業活動を行った場合、フィリピンの裁判所を利用する権利を失い、未払い金の回収が困難になるリスクがあります。外国企業は、フィリピンでの事業活動を開始する前に、事業免許の取得要件を十分に理解し、必要な手続きを履行する必要があります。

    重要な教訓:

    • 「事業を行う」の定義を理解する:外国投資法と判例法に基づいて、「事業を行う」行為の範囲を正確に把握することが重要です。継続的な商業的取引や営利目的の活動は、事業活動とみなされる可能性が高いです。
    • 事業免許の取得を怠らない:フィリピンで事業を行う外国企業は、事業開始前に事業免許を取得する必要があります。免許なしに事業活動を行うと、訴訟資格を失うだけでなく、罰則が科される可能性もあります。
    • 取引の性質と継続性を考慮する:単発の取引であれば事業免許は不要ですが、継続的な取引や長期的なビジネス関係を構築する意図がある場合は、事業免許の取得が必要です。
    • 法的アドバイスを求める:フィリピンでの事業活動に関する法的要件や手続きは複雑であるため、専門家(フィリピンの法律事務所など)に相談し、適切なアドバイスを得ることが不可欠です。

    よくある質問(FAQ)

    1. 質問1:外国企業がフィリピンで事業を行う場合、どのような場合に事業免許が必要ですか?
      回答:フィリピン国内で「事業を行う」場合、すなわち、営利目的で継続的な商業活動を行う場合は、事業免許が必要です。具体的には、商品の販売、サービスの提供、事務所の開設、代理店の設置などが該当します。
    2. 質問2:単発の取引でも事業免許が必要ですか?
      回答:一般的に、単発の「孤立した取引」であれば、事業免許は不要と解釈されています。しかし、取引の性質や継続性によっては、事業活動とみなされる可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
    3. 質問3:事業免許を持たずに訴訟を起こした場合、どうなりますか?
      回答:事業免許を持たずにフィリピンで事業を行っていると判断された場合、訴訟を提起する資格がないとして訴訟が却下される可能性があります。
    4. 質問4:訴訟が却下された場合、再訴はできますか?
      回答:訴訟資格の欠如による却下は、実質的な権利関係の判断ではないため、事業免許を取得するなどして訴訟資格を回復すれば、再訴が可能です。
    5. 質問5:事業免許の取得手続きはどのように行いますか?
      回答:事業免許の取得手続きは、フィリピン証券取引委員会(SEC)に対して行います。必要な書類や手続きは、事業の種類や形態によって異なりますので、SECまたは専門家にご確認ください。
    6. 質問6:事業免許を取得せずに事業を行った場合の罰則はありますか?
      回答:はい、事業免許を取得せずに事業を行った場合、罰金やその他の行政処分が科される可能性があります。また、刑事責任を問われる場合もあります。
    7. 質問7:連絡事務所(liaison office)を開設する場合も事業免許が必要ですか?
      回答:はい、連絡事務所も「事業を行う」行為に含まれると解釈される可能性が高く、事業免許が必要となる場合があります。
    8. 質問8:フィリピンに支店(branch)を設立する場合はどうですか?
      回答:支店は明らかに「事業を行う」拠点とみなされるため、事業免許の取得が必須です。
    9. 質問9:オンラインでフィリピンの顧客に商品を販売する場合はどうですか?
      回答:オンライン販売も、フィリピン国内での事業活動とみなされる可能性があります。特に、継続的にフィリピン市場に商品を販売し、積極的に顧客を勧誘している場合は、事業免許が必要となる可能性が高いです。
    10. 質問10:フィリピンの法律事務所に相談するにはどうすればよいですか?
      回答:フィリピン法に関するご相談は、ASG Lawにお気軽にお問い合わせください。当事務所は、外国企業のフィリピン進出と事業活動を法的にサポートする専門家です。

      ご相談はkonnichiwa@asglawpartners.comまでご連絡ください。
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    Source: Supreme Court E-Library

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