違法なストライキ行為における解雇の正当性
G.R. No. 126717, 1999年2月11日
ストライキ権は憲法で保障された権利ですが、無制限ではありません。グレート・パシフィック・ライフ保険事件は、ストライキ中の違法行為に関与した労働者の解雇が正当と認められた事例です。本判決は、ストライキ権の行使と、使用者の事業運営権、そして労働者の権利保護とのバランスについて重要な教訓を示しています。
法的背景:ストライキと不法行為、解雇
フィリピンの労働法は、労働者のストライキ権を認める一方で、その行使には一定の制限を設けています。労働法第264条は、ストライキ中の不法行為を禁止しており、これには暴力、強制、脅迫、および事業所の自由な出入りを妨害する行為が含まれます。同条項は、ストライキ中に違法行為を故意に行った労働者または組合役員は、雇用 status を失う可能性があると規定しています。
労働法第264条(e)項(禁止行為について):
「いかなる労働者も組織も、ストライキまたはロックアウト中に暴力、強制、または破壊行為、あるいは財産に対する破壊行為を扇動したり、参加したりしてはならない。いかなる者も、平和的なピケッティングを行う労働者の合法的な権利を侵害してはならない。いかなる労働者も組織も、事業所の自由な通行を妨害したり、公共の高速道路を妨害したり、使用者の財産または顧客の財産への出入りを妨害したりしてはならない。」
使用者は、正当な理由と適正な手続きに基づいてのみ労働者を解雇できます。ストライキ中の違法行為は、解雇の正当な理由となり得ますが、使用者は解雇前に適切な調査を行い、労働者に弁明の機会を与える必要があります。
事件の経緯:交渉決裂からストライキ、そして解雇へ
グレート・パシフィック・ライフ保険従業員組合(UNION)とグレート・パシフィック・ライフ保険(GREPALIFE)は、団体交渉協約(CBA)の更新交渉を行っていました。交渉は決裂し、UNIONはストライキを通告、その後実際にストライキに突入しました。
GREPALIFEは、ストライキ中にUNIONのメンバーが違法行為を行ったとして、ストライキ参加者に書面による弁明を求めました。具体的には、ストライキ参加者が会社の事業所への出入りを封鎖し、従業員や顧客の車両や所持品を違法に捜索したとされています。弁明を拒否したロデル・P・デ・ラ・ロサ氏を含むUNION役員と一部のストライキ参加者は解雇されました。
その後、労使間で和解交渉が行われ、GREPALIFEは解雇されたストライキ参加者のうち、ドミンゴ氏とデ・ラ・ロサ氏を除く全員を復職させる案を提示しました。この案には、ドミンゴ氏とデ・ラ・ロサ氏が自主的に辞任することを条件とする条項が含まれていました。UNIONはこの案を受け入れ、労使間で合意書(MOA)が締結されました。MOAでは、ドミンゴ氏とデ・ラ・ロサ氏の解雇の有効性については、彼らが労働関係委員会(NLRC)に異議を申し立てる権利を留保することが明記されました。
ドミンゴ氏とデ・ラ・ロサ氏は解雇の無効を訴えましたが、労働審判官は当初、不当解雇を認めました。しかし、NLRCはこれを覆し、解雇は正当であると判断しました。ただし、適正な手続きが十分に守られなかったとして、1ヶ月分の給与相当額の支払いを命じました。最高裁判所もNLRCの判断を支持し、デ・ラ・ロサ氏の上訴を棄却しました。
最高裁判所の判断:ストライキ権の限界と組合役員の責任
最高裁判所は、NLRCの判断に重大な裁量権の濫用はないとしました。判決では、ストライキ権は憲法で認められた権利であるものの、法的制約を受けると改めて強調しました。そして、労働法はストライキ中の暴力、強制、脅迫の使用を明確に禁じており、事業所の自由な通行を妨害することも禁止していると指摘しました。
最高裁判所は、GREPALIFEが提出した警備員の宣誓供述書を証拠として認めました。これらの供述書は、デ・ラ・ロサ氏らがストライキ中に違法なピケッティング行為、車両の違法捜索、従業員の事業所への立ち入り妨害などを行ったと具体的に証言していました。デ・ラ・ロサ氏はこれらの証拠を反駁する証拠を提出しなかったため、NLRCはこれらの供述書に基づいて解雇の正当性を認めたのです。
判決文からの引用:
「申立人デ・ラ・ロサは、これらの警備員の宣誓供述書の固有の弱点を攻撃している。しかし、宣誓供述書は、宣誓供述者が証言台に立たない限り、通常の裁判所では不十分な証拠とみなされる可能性があるのは事実であるが、労働審判官の前の手続きでは、宣誓供述書自体が受け入れられる。NLRCの新規則の手続きの規則V第7条の下では、これらの手続きは、適正な手続きの憲法上の要件を除いて、法律および手続き規則の技術論に厳密に支配されるべきではない。同規則の第3条第2項は、検証済みの答弁書には、直接証言の代わりに当事者のそれぞれの証人の宣誓供述書を含むすべての裏付け文書を添付することを提供している。したがって、労働審判官は、目の前にある論争の事実を確かめるために、あらゆる合理的な手段を採用できることは明らかである。」
さらに、最高裁判所は、組合役員であるデ・ラ・ロサ氏には、組合員よりも高い責任が求められると指摘しました。組合役員は、法律を尊重し、組合員を指導する義務があり、模範を示すべき立場にあるとしました。デ・ラ・ロサ氏がストライキ中に違法行為を行ったことは、役員としての不適格性を示すものであり、解雇は正当化されると判断しました。
判決文からの引用:
「組合役員は、組合員よりも大きく、重い責任を負っている。組合役員は、法律を尊重し、組合員に同じようにするよう勧め、指導する義務がある。彼らの立場は、模範を示すことを義務付けている。ストライキ中に禁止された行為を行うことにより、申立人デ・ラ・ロサは、組合の副社長として、高度の軽率さと無責任さを示した。確かに、これは彼の雇用からの解雇を正当化する。労働法の目的は、安定しているがダイナミックで公正な産業平和を確保することであるため、望ましくない労働指導者の解雇は支持されるべきである。」
実務上の教訓:企業と労働組合が留意すべき点
本判決は、企業と労働組合双方に重要な教訓を与えます。
企業側の教訓:
- ストライキが発生した場合、労働者の違法行為を適切に記録し、証拠を収集することが重要です。
- 解雇処分を行う場合は、適正な手続きを遵守し、労働者に弁明の機会を与える必要があります。
- 組合役員の責任は一般組合員よりも重いことを認識し、その点を解雇理由として主張することも有効です。
労働組合側の教訓:
- ストライキ権は重要な権利ですが、その行使には法的制約があることを理解する必要があります。
- ストライキ中は、違法行為を絶対に避け、平和的な手段で目的を達成するよう努めるべきです。
- 組合役員は、組合員を指導し、違法行為を防止する責任があります。役員自身の違法行為は、解雇の正当な理由となり得ます。
よくある質問(FAQ)
Q1: ストライキ中のどのような行為が違法とみなされますか?
A1: フィリピン労働法では、ストライキ中の暴力、強制、脅迫、破壊行為、および事業所の自由な出入りを妨害する行為が違法とされています。具体的には、ピケッティングの際の暴力行為、車両の違法捜索、従業員の出勤妨害などが該当します。
Q2: 違法なストライキ行為に関与した場合、必ず解雇されますか?
A2: 必ず解雇されるわけではありませんが、解雇される可能性は高まります。特に、違法行為が重大である場合や、組合役員など責任ある立場の者が関与した場合は、解雇が正当と認められる可能性が高くなります。
Q3: 解雇処分を受けた場合、どのような法的対抗手段がありますか?
A3: 不当解雇であるとして、労働審判官またはNLRCに訴えを提起することができます。その際、解雇が不当であること、または適正な手続きが守られなかったことを主張します。
Q4: 企業がストライキ参加者を解雇する場合、どのような手続きが必要ですか?
A4: 企業は、解雇前に労働者に対して解雇理由を通知し、弁明の機会を与える必要があります。また、解雇の正当な理由を立証する必要があります。
Q5: 組合役員が違法行為を行った場合、一般組合員よりも重い責任を問われますか?
A5: はい、組合役員は一般組合員よりも重い責任を問われる傾向があります。組合役員には、組合員を指導し、法律を遵守させる義務があるため、役員自身の違法行為はより厳しく評価されることがあります。
この判例について、さらに詳しい情報や法的アドバイスが必要な場合は、ASG Lawにご相談ください。労働問題に精通した専門家が、お客様の状況に合わせて適切なサポートを提供いたします。
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