出生証明書の氏名訂正は行政手続き、生年月日訂正は司法手続きが必要
G.R. No. 233068, November 09, 2020
フィリピンでは、出生証明書の記載内容に誤りがある場合、訂正を求めることができます。しかし、その訂正内容が氏名なのか、生年月日なのかによって、手続きが異なります。誤った情報が出生証明書に記載されている場合、適切な手続きを踏むことで、正しい情報に修正することが可能です。本記事では、最高裁判所の判例を基に、出生証明書の訂正に関する手続きと注意点について解説します。
はじめに
出生証明書は、個人の身分を証明する上で非常に重要な書類です。氏名や生年月日などの情報は、その後の人生において様々な場面で使用されます。もし出生証明書に誤った情報が記載されている場合、訂正を求めることは当然の権利です。しかし、フィリピン法では、出生証明書の訂正手続きは、その内容によって異なり、場合によっては裁判所の関与が必要となります。
今回取り上げる最高裁判所の判例は、出生証明書の氏名と生年月日の訂正を求めた事例です。この判例を通じて、氏名と生年月日の訂正手続きの違い、必要な手続き、そして実務上の注意点について詳しく解説します。
法律の背景
フィリピンにおける出生証明書の訂正は、民事訴訟規則第108条(Rule 108)および共和国法第9048号(Republic Act No. 9048)、共和国法第10172号(Republic Act No. 10172)によって規定されています。Rule 108は、出生証明書を含む民事登録簿の記載の訂正または取り消しを求める手続きを定めています。一方、RA 9048およびRA 10172は、地方民事登録官または領事が、裁判所の命令なしに、特定の種類の誤りを訂正する権限を付与しています。
RA 9048は、氏名またはニックネームの訂正を行政的に行うことを認めています。RA 10172は、RA 9048を改正し、出生年月日の日付と月の訂正、および性別の訂正も行政的に行うことを認めました。ただし、これらの行政的な訂正は、明らかな誤記または誤植である場合に限られます。
重要な条文として、RA 10172第1条には次のように規定されています。
「民事登録簿の記載は、裁判所の命令なしには変更または訂正されないものとする。ただし、誤記または誤植、および氏名またはニックネームの変更、出生年月日の日付と月の変更、または性別の変更であって、当該記載に誤記または誤植があることが明白である場合は、この限りでない。」
つまり、軽微な誤りであれば行政手続きで訂正できますが、年齢や身分に影響を与えるような重要な誤りの訂正には、裁判所の関与が必要となるのです。
判例の概要
本件は、メルリー・M・マリガヤ(Merle M. Maligaya、別名「メリー・M・マリガヤ=サルミエント」)が出生証明書の氏名(MERLEからMERLYへ)と生年月日(1959年2月15日から1958年11月26日へ)の訂正を求めた事例です。
- 2016年、メルリーは地方裁判所(RTC)に訂正の訴えを提起。
- RTCは、メルリーの提出した証拠(SSSメンバーズデータE-4フォーム、有権者登録記録など)に基づき、訂正を許可。
- 国家訟務長官室(OSG)は、氏名の訂正は行政手続きで可能であるべきであり、生年月日の訂正には必要な当事者が訴訟に参加していないとして、再考を求める。
- RTCはOSGの再考請求を棄却。
- OSGは最高裁判所に上訴。
最高裁判所は、以下の点を判断しました。
- 氏名の訂正は、単なる誤記の修正であり、行政手続きで可能である。
- 生年月日の訂正は、年齢が変わるため、重要な訂正に該当し、Rule 108に基づく裁判手続きが必要である。
- 生年月日の訂正には、両親や兄弟姉妹など、影響を受ける可能性のあるすべての当事者を訴訟に参加させる必要があったが、それがなされていない。
裁判所は、「氏名の訂正は、単なる誤記の修正であり、実質的な権利に影響を与えない。一方、生年月日の訂正は、年齢が変わるため、個人の法的地位に重要な影響を与える可能性がある」と述べています。
最高裁判所は、RTCの判断を一部支持し、氏名の訂正は認めるものの、生年月日の訂正は手続き上の瑕疵があるとして取り消しました。
実務上のポイント
この判例から、出生証明書の訂正を求める際には、以下の点に注意する必要があります。
- 訂正内容が軽微な誤記である場合は、地方民事登録官に行政手続きを申請する。
- 年齢や身分に影響を与えるような重要な訂正の場合は、Rule 108に基づく裁判手続きが必要となる。
- 裁判手続きを行う場合は、影響を受ける可能性のあるすべての当事者(両親、兄弟姉妹など)を訴訟に参加させる。
キーレッスン
- 出生証明書の訂正は、内容によって手続きが異なる。
- 軽微な誤記は行政手続き、重要な誤りは裁判手続き。
- 裁判手続きでは、関係者全員を参加させる必要あり。
よくある質問(FAQ)
Q: 出生証明書の氏名を変更したいのですが、どのような手続きが必要ですか?
A: 氏名の変更が単なる誤記の修正である場合は、地方民事登録官に行政手続きを申請できます。必要な書類や手続きについては、事前に地方民事登録官に確認してください。
Q: 出生証明書の生年月日を訂正したいのですが、どうすれば良いですか?
A: 生年月日の訂正は、年齢が変わるため、裁判手続きが必要です。弁護士に相談し、必要な書類を準備して、裁判所に訴えを提起してください。
Q: 訂正手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?
A: 行政手続きの場合は、数週間から数ヶ月程度で完了することが一般的です。裁判手続きの場合は、裁判所の混雑状況や事件の内容によって異なりますが、数ヶ月から数年かかることもあります。
Q: 訂正手続きには費用がかかりますか?
A: 行政手続きの場合は、申請手数料や書類の取得費用などがかかります。裁判手続きの場合は、弁護士費用、裁判所費用、書類の作成費用などがかかります。
Q: 自分で訂正手続きを行うことはできますか?
A: 行政手続きの場合は、ご自身で行うことも可能です。裁判手続きの場合は、法律の知識や訴訟の経験が必要となるため、弁護士に依頼することをおすすめします。
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