電力ラインの分類:フィリピン最高裁判所が、送電資産と配電資産の区別に関するERCの権限を明確化

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本判決では、フィリピン最高裁判所は、エネルギー規制委員会(ERC)が送電資産と配電資産を区別する基準を設定する唯一の権限を持つことを明確にしました。問題となったのは、138kVアプラヤ-PSCラインの分類で、PSC(Philippine Sinter Corporation)は送電資産であると主張し、CEPALCO(Cagayan Electric Power and Light Company, Inc.)は配電資産であると主張しました。最高裁は、ERCの判断を支持し、同ラインを配電資産と分類し、EPIRA(電力産業改革法)の下で売却または譲渡の対象となることを認めました。本判決は、電力資産の分類に関する規制上の明確性を提供し、電力会社や直接接続された顧客に影響を与える可能性があります。これにより、電力資産の適切な譲渡と、配電事業者のサービス範囲拡大が円滑に進むことが期待されます。

電力網の運命:ERCの分類権限が産業の行方を左右する

フィリピン・シンター・コーポレーション(PSC)と国営送電公社(TRANSCO)、そしてカガヤン電気電力会社(CEPALCO)の間で繰り広げられたこの訴訟は、電力業界における資産分類の核心に触れるものでした。問題となったのは、ミンダナオ島のビラヌエバにあるPSCの焼結工場に電力を供給する138kVアプラヤ-PSCライン。このラインが送電資産なのか、配電資産なのかによって、その売却や譲渡の可能性が変わってきます。CEPALCOは配電事業者として、このラインを配電資産として取得したいと考えましたが、TRANSCOは送電資産であると主張し、譲渡を拒否。ERCは、このラインを配電資産と分類する決定を下し、これが最高裁まで争われることになりました。この訴訟は、EPIRA法が電力網の将来にどのような影響を与えるのか、そして、ERCがその過程でどのような役割を果たすのかを浮き彫りにしました。

本件の中心的な論点は、138kVアプラヤ-PSCラインが送電資産なのか、配電資産なのかという点です。PSCは、NAPOCOR(National Power Corporation)との電力供給契約(CSE)において、同ラインを送電資産として扱ってきたと主張。EPIRA法施行後、TRANSCOがNAPOCORの送電機能を承継したため、CSEに基づく契約上の義務もTRANSCOに引き継がれたと主張しました。しかし、最高裁は、ERCが送電資産と配電資産を区別する基準を設定する唯一の権限を持つと判断し、CSEにおける当事者間の合意は法的拘束力を持たないとしました。

EPIRA第7条は、ERCが送電電圧の基準を設定し、送電資産と配電資産を区別することを明確に規定しています。同様に、EPIRAの施行規則(IRR)第6条第4項も、ERCに同様の権限を与えています。これらの規定に基づき、最高裁は、ERCが専門的な知見と技術的判断に基づき、資産の分類を行うべきであると判断しました。PSCの主張は、ERCの権限を無視し、EPIRA法の趣旨に反するものであり、認められませんでした。

さらに、最高裁は、問題のラインが既存の法律に従い、配電資産として分類されることを確認しました。EPIRAのIRR第6条第4項(b)および(c)は、配電資産の技術的・機能的基準を規定しています。これらの基準には、配電資産が通常、小売顧客に近いこと、放射状の特性を持つこと、電力の流れが流入のみで流出しないことなどが含まれます。裁判所は、CEPALCOが提出した証拠に基づき、138kVアプラヤ-PSCラインがこれらの基準を満たしていると判断しました。これにより、ERCの決定は正当であり、最高裁はこれを支持しました。

EPIRAのIRR第6条第4項(b)「配電資産は主に放射状の特性を持つ」

EPIRAのIRR第6条第4項(c)「電力は配電資産に流入する。それが流出することはほとんどない」

この判決の重要な意義は、ERCの専門性と権限を尊重し、電力業界における規制の明確性を提供したことにあります。これにより、電力会社は資産の分類に関する不確実性を軽減し、EPIRA法に基づく資産の譲渡を円滑に進めることができます。また、配電事業者は、配電資産を取得し、サービス範囲を拡大することで、より効率的な電力供給を実現できる可能性があります。この判決は、フィリピンの電力業界の発展に大きく貢献するものと考えられます。

本件において、最高裁は、CEPALCOが問題のラインに直接接続されていないというPSCの主張を退けました。裁判所は、ERCの審理範囲は、138kVアプラヤ-PSCラインが配電資産であるかどうかという点に限定されており、CEPALCOの適格性については判断しないとしました。つまり、CEPALCOがラインを取得する資格があるかどうかは、別の問題であり、ERCの裁量に委ねられるということです。この判断は、ERCの権限範囲を明確にし、訴訟の焦点を絞る上で重要でした。

最高裁は、行政機関の事実認定は、実質的な証拠に基づいている場合、審査機関を拘束するという原則を改めて確認しました。ERCのような専門機関の決定は、その管轄範囲内の事項について尊重されるべきであり、重大な裁量権の濫用、詐欺、または法の誤りがない限り、覆されるべきではありません。本件では、PSCは、ERCの決定にそのような問題はなかったことを証明できませんでした。したがって、最高裁は、ERCの決定を支持し、PSCの訴えを退けました。

FAQs

この訴訟の主な争点は何でしたか? 主な争点は、138kVアプラヤ-PSCラインが送電資産なのか、配電資産なのかという点でした。この分類によって、その売却や譲渡の可能性が変わってきます。
ERCとはどのような機関ですか? ERC(エネルギー規制委員会)は、フィリピンの電力業界を規制する政府機関です。送電資産と配電資産を区別する基準を設定する権限を持っています。
EPIRAとは何ですか? EPIRA(電力産業改革法)は、2000年に制定されたフィリピンの法律で、電力業界の構造改革を目的としています。
配電資産とは何ですか? 配電資産とは、最終的な顧客に電力を供給するために使用される資産のことです。通常、小売顧客に近く、放射状の特性を持ちます。
送電資産とは何ですか? 送電資産とは、発電所から変電所まで、または変電所から別の変電所まで、大量の電力を輸送するために使用される資産のことです。
最高裁はどのような判断を下しましたか? 最高裁は、ERCの決定を支持し、138kVアプラヤ-PSCラインを配電資産と分類しました。
この判決は電力会社にどのような影響を与えますか? 電力会社は、資産の分類に関する不確実性を軽減し、EPIRA法に基づく資産の譲渡を円滑に進めることができます。
この判決は消費者にとってどのような意味がありますか? 配電事業者は、配電資産を取得し、サービス範囲を拡大することで、より効率的な電力供給を実現できる可能性があります。
CEPALCOは138kVアプラヤ-PSCラインを取得できますか? 最高裁は、CEPALCOがラインを取得する資格があるかどうかについては判断しませんでした。これは、ERCの裁量に委ねられます。

本判決は、フィリピンの電力業界における資産分類の基準を明確化し、規制上の安定性を提供することで、電力会社の事業運営や投資判断に大きな影響を与える可能性があります。今後の電力網の発展と、より効率的な電力供給の実現に向けて、重要な一歩となるでしょう。

本判決の特定の状況への適用に関するお問い合わせは、お問い合わせいただくか、frontdesk@asglawpartners.comまでメールでASG Lawにご連絡ください。

免責事項:この分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。お客様の状況に合わせた具体的な法的助言については、資格のある弁護士にご相談ください。
出典:Philippine Sinter Corporation v. National Transmission Corporation and Cagayan Electric Power and Light Company, Inc., G.R. No. 192578, September 16, 2020

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