ニュース映像の著作権侵害:放送局の責任と正当な利用の範囲

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本判決は、放送局がニュース映像を無断で使用した場合の著作権侵害の責任範囲を明確化するものです。最高裁判所は、ニュース映像は著作権で保護される対象であり、放送局は著作権者の許可なく無断で再放送することは違法であると判断しました。ただし、正当な利用(フェアユース)に該当する場合は著作権侵害とはなりません。この判決は、放送局がニュース報道を行う際に、他者の著作権を尊重し、適切な利用範囲を遵守する必要があることを示唆しています。

報道の自由か、著作権保護か?ニュース映像利用の境界線

ABS-CBN社は、海外で拘束されていたフィリピン人労働者アンジェロ・デラ・クルスの帰国時のニュース映像を撮影し、ロイター通信を通じて国際的に配信しました。GMA-7社は、ロイター通信の映像を自社のニュース番組で放送しましたが、ABS-CBN社の許可を得ていませんでした。ABS-CBN社は、GMA-7社の行為が著作権侵害にあたるとして訴訟を提起しました。裁判所は、ニュース映像の著作権の有無、正当な利用の成立、放送局幹部の責任範囲について判断を迫られました。

本件の主要な争点は、GMA-7社によるABS-CBN社のニュース映像の使用が著作権侵害に該当するか否かでした。知的財産法(第8293号法)は、著作権者に著作物の複製、放送などの独占的な権利を認めていますが、同時に、報道、教育、研究などの目的における正当な利用を著作権侵害の例外として認めています。GMA-7社は、自社のニュース番組での使用が正当な利用に該当すると主張しました。ABS-CBN社は、映像は「ニュースの価値がある出来事」ではなく、「ニュースの価値がある出来事」を記録したものであり、著作権侵害に当たると主張しました。

裁判所は、ニュースそのものは著作権の対象とならないものの、ニュース映像は撮影者の創意工夫が凝らされた著作物であると判断しました。そのため、ニュース映像は著作権による保護を受ける対象となります。知的財産法第211条は、放送機関が放送に対する隣接権を有することを定めています。この権利には、放送の再放送を許可または禁止する権利が含まれます。

次に、GMA-7社のニュース映像の使用が正当な利用に該当するかどうかが争点となりました。知的財産法第185条は、著作物の正当な利用を判断するための要素として、利用の目的と性質、著作物の性質、利用された部分の量と重要性、著作物の潜在的な市場への影響などを挙げています。GMA-7社は、自社の使用が短時間の映像であり、報道目的であるため、正当な利用に該当すると主張しました。放送時間はABS-CBNは2分40秒であると主張していますが、控訴裁判所によると5秒です。

裁判所は、映像の使用時間、報道目的、市場への影響などを総合的に考慮し、本件におけるGMA-7社の使用が正当な利用に該当するかどうかの判断は、事実関係の詳細な審理が必要であるとして、原審に差し戻しました。

裁判所は、著作権侵害は違法行為(malum prohibitum)であり、故意や過失は問われないと判断しました。知的財産法第217条は、著作権侵害を行った者に対して刑事罰を科すことを定めていますが、侵害の故意や過失を要件とはしていません。そのため、GMA-7社がロイター通信から提供された映像であると信じて使用していたとしても、著作権侵害の責任を免れることはできません。

最後に、裁判所は、GMA-7社の役員全員が著作権侵害の責任を負うかどうかについて判断しました。会社法上、法人格は役員とは別個のものであるため、役員が個別に責任を負うためには、その役員が侵害行為に積極的に関与したことを証明する必要があります。本件では、GMA-7社の役員のうち、ニュース映像の選択と放送に直接関与したとされる特定の役員(デラ・ペーニャ・レイエス氏とマナラスタス氏)に対してのみ責任を認めました。

FAQs

本件の争点は何でしたか? GMA-7社によるABS-CBN社のニュース映像の使用が著作権侵害に該当するか否かが争点でした。特に、正当な利用の成否、故意の有無、役員の責任範囲が問題となりました。
ニュース映像は著作権で保護されますか? ニュースそのものは著作権の対象となりませんが、ニュース映像は撮影者の創意工夫が凝らされた著作物であるため、著作権による保護を受けます。
正当な利用とは何ですか? 正当な利用とは、報道、教育、研究などの目的において、著作権者の許可を得ずに著作物を利用することです。利用の目的と性質、著作物の性質、利用された部分の量と重要性、著作物の潜在的な市場への影響などを考慮して判断されます。
著作権侵害は故意や過失がなくても成立しますか? フィリピンの知的財産法では、著作権侵害は違法行為(malum prohibitum)であり、故意や過失は問われません。
役員は会社の著作権侵害について常に責任を負いますか? 役員が個別に責任を負うためには、その役員が侵害行為に積極的に関与したことを証明する必要があります。
「No Access Philippines」という警告表示の意味は何ですか? これは、ロイター通信が特定の映像についてフィリピン国内での放送を制限していることを示す表示です。
本判決は今後の放送局のニュース報道にどのような影響を与えますか? 放送局は、他者の著作権を尊重し、正当な利用の範囲を遵守する必要があることを改めて認識する必要があります。
GMA-7社の役員全員が刑事責任を負うことにはなりませんでした。それはなぜですか? 刑事責任を問うためには、役員が著作権侵害行為に積極的に関与したという具体的な証拠が必要であり、単に役職にあるだけでは不十分と判断されたためです。

本判決は、ニュース映像の著作権保護の重要性を改めて確認するものであり、放送局が報道を行う際には、他者の権利を尊重し、適切な利用範囲を遵守する必要があることを示唆しています。

本判決の特定の状況への適用に関するお問い合わせは、ASG Law(contact)またはメール(frontdesk@asglawpartners.com)までご連絡ください。

免責事項:本分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。お客様の状況に合わせた具体的な法的ガイダンスについては、資格のある弁護士にご相談ください。
出典:ABS-CBN対ゴゾン事件、G.R. No. 195956、2015年3月11日

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