試用期間満了後の雇用継続は正規雇用とみなされる
[G.R. No. 121071, 1998年12月11日] フィリピン信用協同組合連合会(PECCI)及びベネディクト・ジャヨマ神父 対 国家労働関係委員会(第一部)及びヴィクトリア・アブリル
はじめに
雇用契約における試用期間は、企業が従業員の適性を評価するための重要な期間です。しかし、試用期間の解釈を誤ると、不当解雇などの法的紛争に発展する可能性があります。本稿では、フィリピン最高裁判所の判例、PHIL. FEDERATION OF CREDIT COOPERATIVES, INC. (PECCI) VS. NATIONAL LABOR RELATIONS COMMISSION を詳細に分析し、試用期間満了後の雇用継続が正規雇用とみなされる法的根拠と、企業が留意すべき点について解説します。この判例は、企業と従業員の双方にとって、雇用関係を適切に理解し、紛争を予防するための重要な指針となるでしょう。
判例の背景:試用期間と正規雇用の法的枠組み
フィリピン労働法典第281条は、試用期間について以下のように規定しています。
「第281条 試用期間。試用期間付きで雇用された従業員は、雇用者が従業員の職務遂行能力が、従業員の雇用時に雇用者が通知した合理的な基準に合致しない場合、または正当な理由がある場合に解雇される可能性がある。正規雇用者の権利を享受する資格を得るためには、試用従業員は、最初に雇用されてから6ヶ月を超えない試用期間内に、合理的な基準に合致していると認められなければならない。」
この条文から、試用期間は原則として6ヶ月以内であり、期間満了までに雇用者が従業員の適性を評価し、正規雇用への移行を判断することが求められます。試用期間を超えて雇用を継続した場合、従業員は正規雇用者としての地位を得ることになります。正規雇用者は、正当な理由なく解雇されることはなく、雇用保障が強化されます。
最高裁判所は、International Catholic Migration v. NLRC において、試用期間従業員を「雇用者が、正規雇用に適格であるかどうかを判断するために試用する従業員」と定義しています。試用期間は、雇用者が従業員の仕事ぶりを観察し、適切かつ効率的な従業員になるかどうかを確認する機会を提供するために設けられています。
重要な点として、試用期間中の従業員も、労働法上の保護を受けます。不当な理由での解雇は違法であり、救済措置が認められます。企業は、試用期間中の従業員に対しても、公正かつ適切な対応が求められます。
最高裁判所の判断:事例の詳細
本件の原告であるヴィクトリア・アブリルは、1982年9月にフィリピン信用協同組合連合会(PFCCI)にジュニア監査役/フィールド検査官として入社しました。その後、事務秘書、出納係などを歴任し、1989年11月に地域フィールドオフィサーとして復帰しました。この際、PFCCIはアブリルとの間で、6ヶ月の試用期間を定める雇用契約を締結しました。
試用期間満了後もアブリルの雇用は継続されましたが、PFCCIは1991年1月2日から1991年12月31日までの1年間の有期雇用契約を提示し、期間満了をもって雇用を終了しました。これに対し、アブリルは不当解雇を訴え、訴訟に至りました。
労働仲裁官は当初、アブリルの訴えを棄却しましたが、国家労働関係委員会(NLRC)はこれを覆し、PFCCIに対し、アブリルを元の職位または同等の職位に復帰させ、1992年1月1日からの未払い賃金を支払うよう命じました。
最高裁判所は、NLRCの決定を支持し、PFCCIの上訴を棄却しました。最高裁判所は、アブリルが試用期間満了後も雇用を継続されたことにより、正規雇用者としての地位を得たと判断しました。そして、有期雇用契約の満了を理由とした解雇は、正当な理由のない違法な解雇であると結論付けました。
最高裁判所は判決の中で、以下の点を強調しました。
「契約の当初の記述は、被申立人の雇用が一定期間であるように示唆しているが、その後の条項は、被申立人が1990年2月17日から始まり、その後6ヶ月で終わる試用期間にあると規定しており、これと矛盾している。」</blockquote
さらに、
「申立人が被申立人の雇用状況に与えた可能性のある名称に関係なく、後者が試用期間を完了し、その後も就労を許可されたことは争いのない事実であり、労働法典第282条、第283条、第284条(改正済)に基づく正当または許可された理由でのみ解雇できる正規従業員となった。」</blockquote
このように、最高裁判所は、雇用契約書の文言が曖昧である場合、労働者に有利に解釈すべきであるという原則に基づき、アブリルの訴えを認めました。
実務上の教訓:企業が留意すべき点
本判例は、企業に対し、試用期間の運用と雇用契約書の作成において、以下の点に留意すべきことを示唆しています。
- 試用期間の明確化:雇用契約書において、試用期間の開始日、期間、評価基準を明確に記載すること。曖昧な表現は避け、誤解の余地がないようにすることが重要です。
- 試用期間の厳守:原則として試用期間は6ヶ月以内とし、期間内に従業員の適性を評価し、正規雇用への移行を判断すること。
- 期間満了後の雇用継続の慎重な判断:試用期間満了後も雇用を継続する場合、正規雇用への移行を前提とすることを認識すること。有期雇用契約への切り替えは、法的紛争のリスクを高める可能性があります。
- 雇用契約書の労働者有利の解釈:雇用契約書は、労働法に基づき、労働者に有利に解釈される可能性があることを理解し、慎重に作成すること。
よくある質問(FAQ)
- 試用期間は必ず設けなければならないのですか?
法律上、試用期間を設けることは義務付けられていません。企業は、従業員の適性を判断するために試用期間を設けるかどうかを任意に決定できます。- 試用期間を延長することはできますか?
原則として、試用期間は6ヶ月を超えて延長することはできません。ただし、職種や業務内容によっては、労使間の合意に基づき、6ヶ月を超える試用期間が認められる場合もあります。- 試用期間中に解雇する場合、どのような理由が必要ですか?
試用期間中の解雇は、(1)従業員の職務遂行能力が雇用者が事前に通知した合理的な基準に合致しない場合、または(2)正当な理由がある場合に認められます。- 試用期間満了後、自動的に正規雇用になるのですか?
いいえ、自動的に正規雇用になるわけではありません。試用期間満了までに、雇用者が従業員の適性を評価し、正規雇用への移行を決定する必要があります。ただし、試用期間満了後も雇用を継続した場合、本判例のように正規雇用とみなされる可能性が高まります。- 有期雇用契約は違法ですか?
いいえ、有期雇用契約自体は違法ではありません。しかし、有期雇用契約の濫用は、労働者の雇用保障を侵害するとして問題視されることがあります。有期雇用契約を締結する際には、正当な理由が必要であり、期間の更新を繰り返すなど、実質的に無期雇用と変わらない場合は、正規雇用とみなされる可能性があります。- 試用期間と有期雇用契約の違いは何ですか?
試用期間は、正規雇用を前提とした従業員の適性評価期間です。一方、有期雇用契約は、契約期間満了による雇用終了を前提とした雇用形態です。両者は目的と性質が異なります。- 本判例は、どのような企業に影響がありますか?
本判例は、あらゆる企業に影響があります。特に、試用期間制度を運用している企業、有期雇用契約を多用している企業は、本判例の趣旨を理解し、雇用管理を見直す必要があるでしょう。雇用契約、試用期間、不当解雇に関するご相談は、フィリピン法務のエキスパート、ASG Lawにお任せください。貴社の状況に合わせた最適なリーガルアドバイスを提供いたします。
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Source: Supreme Court E-Library
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