本判決は、船員が障害給付を請求する際、会社が指定した医師の診断が重要な役割を果たすことを明確にしました。最高裁判所は、会社指定の医師による診断を優先し、第三者の医師の意見が異なる場合には、所定の手続きに従う必要があると判断しました。船員は、一定期間内に会社指定の医師の診察を受け、治療を受ける義務があります。これにより、会社と船員間の紛争解決において、客観性と公平性を確保しようとしています。
会社指定医 vs. 個人の医師:船員の障害認定、どちらが優先される?
本件は、船員のジャーカーソン・G・ガーガロ氏が、勤務中の事故による障害を理由に、雇用主であるドーレ・シーフロント・クルーイング(マニラ)、インク(以下「ドーレ・シーフロント」)に対し、障害給付を請求した訴訟です。ガーガロ氏は、船上での作業中に負傷し、会社指定の医師の診断を受けましたが、その診断結果に不満を持ち、個人的に医師の診断を受けました。2つの医師の診断が異なったため、どちらの診断が優先されるべきかが争点となりました。この訴訟は、フィリピンの海外雇用における船員の権利と、会社指定医の役割について重要な判断を示すことになりました。
最高裁判所は、POEA-SEC(フィリピン海外雇用庁標準雇用契約)およびCBA(労働協約)に基づき、会社指定医の診断が優先されると判断しました。ガーガロ氏が会社指定医の診断に同意しない場合、POEA-SECおよびCBAに定められた紛争解決の手続きに従い、第三者の医師による診断を受ける必要がありました。ガーガロ氏は、この手続きを遵守しなかったため、会社指定医の「就労可能」という診断が有効であるとされました。裁判所は、会社指定医がガーガロ氏を継続的に診察し、治療してきたという事実を重視しました。一方、ガーガロ氏が個人的に選んだ医師は、一度だけの診察に基づいて診断を下しており、その信頼性は低いと判断されました。紛争解決の手続きを無視したことは、障害給付請求を否定する十分な根拠となりました。
SECTION 20. COMPENSATION AND BENEFITS
A. COMPENSATION AND BENEFITS FOR INJURY OR ILLNESS
The liabilities of the employer when the seafarer suffers work-related injury or illness during the term of his contract are as follows:
x x x x
- x x x [I]f after repatriation, the seafarer still requires medical attention arising from said injury or illness, he shall be so provided at cost to the employer until such time he is declared fit or the degree of his disability has been established by the company-designated physician.
- In addition to the above obligation of the employer to provide medical attention, the seafarer shall also receive sickness allowance from his employer in an amount equivalent to his basic wage computed from the time he signed off until he is declared fit to work or the degree of disability has been assessed by the company-designated physician. The period within which the seafarer shall be entitled to his sickness allowance shall not exceed 120 days, x x x.
x x x x
For this purpose, the seafarer shall submit himself to a post-employment medical examination by a company-designated physician within three working days upon his return except when he is physically incapacitated to do so, in which case, a written notice to the agency within the same period is deemed as compliance. In the course of the treatment, the seafarer shall also report regularly to the company-designated physician specifically on the dates as prescribed by the company-designated physician and agreed to by the seafarer. Failure of the seafarer to comply with the mandatory reporting requirement shall result in his forfeiture of the right to claim the above benefits.
If a doctor appointed by the seafarer disagrees with the assessment, a third doctor may be agreed jointly between the Employer and the seafarer. The third doctor’s decision shall be final and binding on both parties. (Emphasis supplied)
ただし、裁判所は、ガーガロ氏が最初の120日間の治療期間を超えて、さらに治療を必要とした期間(194日間)については、一時的な労働不能による所得補償を支払うよう命じました。これは、労働法に基づき、労働者が負傷または疾病により労働不能となった場合、一定期間の所得補償を受ける権利があるためです。裁判所は、会社側の悪意や権限の逸脱が認められなかったため、ドーレ・シーフロントの社長であるパディズ氏に対して、連帯責任を負わせることはないと判断しました。
弁護士費用については、会社側が悪意を持ってガーガロ氏の請求を拒否したとは認められないものの、ガーガロ氏が自身の権利を守るために訴訟を提起し、費用を負担したことから、裁判所は、弁護士費用として、所得補償額の10%を支払うよう命じました。これにより、労働者が正当な権利を主張するために訴訟を起こした場合の費用負担を軽減することを目的としています。
本判決は、海外で働く船員が障害給付を請求する際に、会社指定医の診断が重要な役割を果たすことを明確にしました。また、会社指定医の診断に不満がある場合、POEA-SECおよびCBAに定められた紛争解決の手続きを遵守する必要があることを強調しています。これにより、船員と雇用主間の紛争解決において、客観性と公平性を確保しようとしています。
FAQs
本件の争点は何でしたか? | 船員が障害給付を請求する際に、会社指定医の診断と個人的に選んだ医師の診断が異なる場合、どちらの診断が優先されるべきかが争点でした。 |
裁判所はどのような判断を下しましたか? | 裁判所は、POEA-SECおよびCBAに基づき、会社指定医の診断が優先されると判断しました。 |
船員はどのような場合に障害給付を請求できますか? | 船員は、勤務中の事故または疾病により労働不能となった場合に、障害給付を請求できます。 |
POEA-SECとは何ですか? | POEA-SECは、フィリピン海外雇用庁が定める標準雇用契約であり、海外で働くフィリピン人労働者の権利と義務を規定しています。 |
CBAとは何ですか? | CBAは、労働協約のことであり、労働組合と雇用主の間で結ばれる労働条件に関する合意です。 |
会社指定医の診断に不満がある場合、どうすればよいですか? | 会社指定医の診断に不満がある場合、POEA-SECおよびCBAに定められた紛争解決の手続きに従い、第三者の医師による診断を受けることができます。 |
一時的な労働不能の場合でも、補償はありますか? | はい、労働法に基づき、一時的な労働不能の場合でも、一定期間の所得補償を受けることができます。 |
本判決は、海外で働くすべてのフィリピン人労働者に適用されますか? | いいえ、本判決は、主に船員に適用されますが、海外で働く他のフィリピン人労働者にも参考となる可能性があります。 |
本判決は、フィリピンの海外雇用における船員の権利と、会社指定医の役割について重要な判断を示しました。この判決は、同様の紛争を解決する際の指針となるでしょう。
For inquiries regarding the application of this ruling to specific circumstances, please contact ASG Law through contact or via email at frontdesk@asglawpartners.com.
Disclaimer: This analysis is provided for informational purposes only and does not constitute legal advice. For specific legal guidance tailored to your situation, please consult with a qualified attorney.
Source: JAKERSON G. GARGALLO v. DOHLE SEAFRONT CREWING (MANILA), INC., G.R. No. 215551, September 16, 2015
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