本件では、最高裁判所は、最終判決で名誉毀損の罪で有罪判決を受けた者が、共和国法典(Omnibus Election Code)第12条に基づき、公職に就く資格がないと判断しました。この判断は、名誉毀損が道徳的退廃を伴う犯罪とみなされるため、有罪判決を受けた者は刑期満了後5年間、公職に立候補することが禁じられるというものです。これにより、選挙における候補者の適格性に関する基準が明確化され、道徳的側面が重視されることになります。
名誉毀損の有罪判決は、公職への道を閉ざすのか?
本件は、メアリー・エリザベス・タイ・デルガドが、衆議院議員選挙裁判所(HRET)の決定を不服として起こした特別民事訴訟です。問題となったのは、フィリップ・アレザ・ピチャイが過去に名誉毀損で有罪判決を受けていたことが、その議員としての適格性にどのような影響を与えるかでした。デルガドは、ピチャイが道徳的退廃を伴う犯罪で有罪判決を受けたため、公職に就く資格がないと主張しました。一方、ピチャイは名誉毀損が必ずしも道徳的退廃を伴うとは限らず、自身の責任は限定的であると反論しました。
共和国法典(Omnibus Election Code)第12条は、道徳的退廃を伴う犯罪で有罪判決を受けた者を、公職に立候補する資格がないと規定しています。道徳的退廃とは、正義、品位、善良な道徳に反するすべての行為を指し、人間の仲間や社会一般に対する義務を怠る行為と定義されます。ただし、すべての犯罪行為が道徳的退廃を伴うわけではありません。最高裁判所は、一般的に本質的に悪(mala in se)である犯罪は道徳的退廃を伴い、法律によって悪(mala prohibita)である犯罪は伴わないという原則に従っています。名誉毀損は、人の名誉を傷つける悪意のある公的な非難であり、その性質上、道徳的退廃を伴う犯罪とみなされます。
最高裁判所は過去の判例において、不渡り小切手の発行や盗品の不法占有といった行為も道徳的退廃を伴うと判断しています。これらの犯罪は、正義、誠実さ、善良な道徳に反する方法で、他人や社会に対する義務を故意に放棄する行為とみなされるためです。名誉毀損の場合、悪意を持って虚偽の情報を広めることは、被害者の名誉を傷つけ、社会からの信頼を失わせる行為であり、同様に道徳的退廃を伴うと判断されました。悪意とは、単に相手を傷つける意図であり、正当な理由なく他人に不当な損害を与えることを意味します。したがって、名誉毀損は、その本質において道徳的に非難されるべき行為なのです。
本件において、ピチャイは4件の名誉毀損で有罪判決を受けています。最高裁判所は、ピチャイが虚偽であるかどうかを軽視して名誉を毀損する記事を掲載したと認定しました。このことは、彼が実際に悪意を持って行動し、不当な損害を与える意図を持っていたことを示唆します。ピチャイは、出版社長としての責任を理由に、道徳的退廃を否定しましたが、裁判所はこれを認めませんでした。改訂刑法は、名誉毀損に関与した者の責任を区別していません。出版社長も、著者と同様に責任を負うと規定されており、ピチャイの責任も同様に重いと判断されました。
さらに、裁判所は罰金の支払いが道徳的退廃の有無を決定するものではないと指摘しました。罰金刑が科されたのは、ピチャイが初犯であったためであり、名誉毀損の犯罪としての性質が変わるものではありません。最高裁判所は、ピチャイが共和国法典第12条に基づき、公職に就く資格がないと判断しました。同条項によれば、資格停止期間は刑期満了後5年間です。ピチャイが罰金を支払ったのは2011年2月17日であるため、資格停止期間は2016年2月16日まで継続することになります。
2012年10月9日に立候補届を提出した時点で、ピチャイはまだ資格停止期間中でした。したがって、彼は自身が公職に就く資格があると虚偽の申告をしたことになります。最高裁判所は、ピチャイの立候補届を取り消し、彼を当初から候補者でなかったものとみなしました。このような場合、裁判所は次点候補者を当選者と宣言するという原則に従い、デルガドを当選者と宣言しました。この判決は、公職選挙における候補者の資格要件を厳格に解釈し、道徳的側面を重視する姿勢を示しています。
FAQs
本件の主要な争点は何でしたか? | 名誉毀損で有罪判決を受けた者が、公職に就く資格があるかどうかです。特に、名誉毀損が「道徳的退廃」を伴う犯罪とみなされるかどうかが争点となりました。 |
道徳的退廃とは、具体的に何を指しますか? | 正義、品位、善良な道徳に反する行為であり、社会に対する義務を故意に放棄する行為を指します。 |
なぜ名誉毀損が道徳的退廃を伴う犯罪とみなされるのですか? | 悪意を持って虚偽の情報を広めることは、被害者の名誉を傷つけ、社会からの信頼を失わせる行為であり、道徳的に非難されるべきだからです。 |
出版社長は、著者と同じ責任を負うのですか? | はい、改訂刑法は、名誉毀損に関与した者の責任を区別していません。出版社長も、著者と同様に責任を負います。 |
罰金の支払いは、道徳的退廃の有無に影響しますか? | いいえ、罰金の支払いは、道徳的退廃の有無を決定するものではありません。罰金刑が科されたのは、初犯であったためです。 |
資格停止期間は、いつから起算されますか? | 刑期満了の日から起算されます。本件では、罰金を支払った日が刑期満了の日とみなされます。 |
資格停止期間中に立候補した場合、どうなりますか? | 立候補届は無効となり、当初から候補者でなかったものとみなされます。 |
無効となった候補者の得票は、どうなりますか? | すべて無効票とみなされます。 |
無効となった候補者の代わりに、誰が当選者となるのですか? | 次点候補者が当選者となります。 |
本判決は、選挙における候補者の適格性に関する基準を明確化し、道徳的側面を重視する姿勢を示しています。名誉毀損で有罪判決を受けた者は、一定期間公職に就く資格がないことが改めて確認されました。このことは、公職に立候補する際には、過去の犯罪歴が重要な考慮事項となることを意味します。
本判決の特定の状況への適用に関するお問い合わせは、ASG Lawのお問い合わせまたはfrontdesk@asglawpartners.comまでご連絡ください。
免責事項:本分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。お客様の状況に合わせた具体的な法的ガイダンスについては、資格のある弁護士にご相談ください。
出典:MARY ELIZABETH TY-DELGADO v. HOUSE OF REPRESENTATIVES ELECTORAL TRIBUNAL AND PHILIP ARREZA PICHAY, G.R. No. 219603, 2016年1月26日
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