盗品譲り受け(フェンシング)は道徳的堕落を伴う犯罪か?フィリピン最高裁判所の判例解説

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盗品譲り受け(フェンシング)は道徳的堕落を伴う犯罪か?犯罪の種類と公職資格の関係

G.R. No. 121592, July 05, 1996

フィリピンでは、特定の犯罪で有罪判決を受けた場合、公職に就く資格を失うことがあります。特に「道徳的堕落」を伴う犯罪は、その影響が大きいです。今回の判例では、盗品譲り受け(フェンシング)が道徳的堕落を伴う犯罪にあたるかどうかが争われました。この判例を通して、犯罪の種類と公職資格の関係について深く理解することができます。

事件の概要

ロランド・P・デラ・トーレ氏は、ラグナ州カビンティの市長選挙に立候補しましたが、過去に盗品譲り受け(フェンシング)で有罪判決を受けていたため、選挙管理委員会(COMELEC)から立候補資格がないと判断されました。デラ・トーレ氏は、COMELECの決定を不服として、最高裁判所に上訴しました。主な争点は、盗品譲り受けが道徳的堕落を伴う犯罪にあたるかどうか、そして執行猶予の付与が資格制限に影響を与えるかどうかでした。

法律の背景

地方自治法(Republic Act No. 7160)第40条(a)では、「道徳的堕落を伴う犯罪または1年以上の懲役刑に処せられる犯罪で、刑期満了後2年以内である者」は、地方公職に立候補する資格がないと規定されています。ここで重要なのは、「道徳的堕落(Moral Turpitude)」という概念です。これは、Black’s Law Dictionaryによれば、「人間が同胞や社会に対して負う私的な義務における、卑劣さ、邪悪さ、または堕落行為、あるいは正義、誠実さ、慎み深さ、または善良な道徳に反する行為」と定義されます。

しかし、すべての犯罪行為が道徳的堕落を伴うわけではありません。一般的に、本質的に悪い行為(mala in se)は道徳的堕落を伴い、法律で禁止されているだけの行為(mala prohibita)は伴わないとされます。ただし、この区別は必ずしも明確ではなく、個々の犯罪の状況を考慮する必要があります。

盗品譲り受け(フェンシング)は、大統領令1612号(Anti-Fencing Law)で定義されており、その要素は以下の通りです。

  • 窃盗または強盗の犯罪が発生していること。
  • 被告が窃盗または強盗の主犯または共犯ではないこと。
  • 被告が、窃盗または強盗の犯罪から得られた物品などを買い、受け取り、所持、保管、取得、隠蔽、販売、処分、または取引すること。
  • 被告が、当該物品などが窃盗または強盗の犯罪から得られたものであることを知っている、または知っているべきであること。
  • 被告に、自身または他者の利益のために行動する意図があること。

特に重要なのは、3番目の要素です。盗品であることを知りながら、または知っているべき状況で物品を受け取る行為は、他人の財産を侵害する行為であり、道徳的堕落を伴うと判断される可能性があります。

裁判所の判断

最高裁判所は、盗品譲り受け(フェンシング)は道徳的堕落を伴う犯罪であると判断しました。その理由として、以下の点を挙げています。

  • 盗品であることを知りながら、または知っているべき状況で物品を受け取る行為は、窃盗や強盗と同様に、他人の財産権を侵害する行為である。
  • そのような行為は、人間が同胞や社会に対して負うべき義務に反し、正義、誠実さ、善良な道徳に反する。
  • 盗品を所持しているという事実は、盗品譲り受けの prima facie な証拠となり、合理的な疑いを抱かせる。

また、デラ・トーレ氏が執行猶予を受けていたことについても、最高裁判所は、執行猶予は刑の執行を一時的に停止するだけであり、有罪判決そのものを無効にするものではないと判断しました。したがって、執行猶予の付与は、地方自治法第40条(a)の適用に影響を与えないと結論付けました。

「被告が盗品であることを知っていた場合、その行為は窃盗や強盗と同様に、他人の財産を侵害する行為であり、道徳的堕落を伴う。」

「執行猶予は刑の執行を一時的に停止するだけであり、有罪判決そのものを無効にするものではない。」

判例から得られる教訓

この判例から、以下の教訓が得られます。

  • 特定の犯罪で有罪判決を受けた場合、公職に就く資格を失う可能性がある。
  • 「道徳的堕落」を伴う犯罪は、資格制限の重要な要素となる。
  • 盗品譲り受け(フェンシング)は、道徳的堕落を伴う犯罪にあたる可能性がある。
  • 執行猶予の付与は、有罪判決そのものを無効にするものではない。

実務上の影響

この判例は、同様のケースにおいて、盗品譲り受け(フェンシング)が道徳的堕落を伴う犯罪とみなされる可能性が高いことを示唆しています。したがって、企業や個人は、盗品譲り受けに関与しないように、より一層注意を払う必要があります。特に、中古品を扱う事業者や、物品の出所を確認することが難しい取引を行う場合は、注意が必要です。

重要な教訓

  • 物品を購入する際は、出所を十分に確認する。
  • 不審な取引には関与しない。
  • 犯罪に関与した場合、公職に就く資格を失う可能性があることを認識する。

よくある質問

Q1: 「道徳的堕落」とは具体的にどのような行為を指しますか?

A1: 「道徳的堕落」とは、正義、誠実さ、善良な道徳に反する行為であり、人間が同胞や社会に対して負うべき義務を著しく侵害する行為を指します。具体的には、詐欺、横領、背任、偽証などが該当する可能性があります。

Q2: 盗品譲り受けで有罪判決を受けた場合、必ず公職に就く資格を失いますか?

A2: 地方自治法第40条(a)に基づき、道徳的堕落を伴う犯罪で有罪判決を受けた場合、刑期満了後2年以内は公職に就く資格を失います。ただし、個々のケースの状況によって判断が異なる場合があります。

Q3: 執行猶予とはどのような制度ですか?

A3: 執行猶予とは、有罪判決を受けた者に対して、刑の執行を一定期間猶予する制度です。猶予期間中に再び犯罪を犯した場合、猶予が取り消され、刑が執行される可能性があります。

Q4: 盗品譲り受けに関与しないためには、どのような対策を講じるべきですか?

A4: 物品を購入する際は、出所を十分に確認し、不審な取引には関与しないようにしてください。特に、中古品を扱う事業者や、物品の出所を確認することが難しい取引を行う場合は、注意が必要です。

Q5: もし盗品譲り受けに関与してしまった場合、どうすれば良いですか?

A5: 直ちに弁護士に相談し、適切な法的アドバイスを受けてください。自首することも検討し、捜査に協力することで、刑が軽減される可能性があります。

盗品譲り受け(フェンシング)に関する問題でお困りの際は、ASG Lawにご相談ください。当事務所は、この分野における豊富な経験と専門知識を有しており、お客様の状況に合わせた最適な解決策をご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。

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