精神障害を理由とする刑事責任の免責:完全な知性の欠如の証明責任

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本判決は、殺人および殺人未遂の罪で起訴された者が、精神障害を理由に刑事責任を免れるための法的基準を明確にしています。フィリピン最高裁判所は、単なる精神機能の異常ではなく、犯罪行為を実行する際の完全な知性の欠如(すなわち、行為の性質を理解する能力の欠如)が、刑事責任の免責を正当化するのに必要であることを再確認しました。本判決は、被告人が事件発生時に自身の行動を理解し、合理的な行動をとる能力を持っていた場合、精神障害は刑事責任の軽減事由とはならないことを明らかにしました。

精神障害が凶悪犯罪の責任を免れるか?証拠に基づく精神鑑定の必要性

本件は、被告人ジェシー・ハロクが、9歳の少年アランと4歳の少年アーネルをなたで襲い、アーネルを死亡させ、アランに重傷を負わせたという事件です。ハロクは精神障害を主張し、刑事責任を免れることを求めましたが、一審の地方裁判所も、控訴院もこれを認めませんでした。最高裁判所は、ハロクの有罪判決を支持し、精神障害による免責は、犯罪行為時の完全な知性の欠如を証明する必要があることを強調しました。

裁判所は、刑法第12条に規定されている免責事由としての精神障害について、詳細な検討を行いました。精神障害を主張する被告は、その状態が犯罪行為時の知性や自由意志の完全な欠如につながったことを明確かつ説得力のある証拠で証明する責任があります。単なる精神機能の異常や、行動を完全に制御できない状態では、免責は認められません。裁判所は、精神障害による免責を認めるためには、被告が犯罪行為時に自身の行動の性質や結果を理解できず、善悪の判断能力を完全に失っていたことを証明する必要があると判示しました。裁判所は、ハロクが事件後に妹を認識し、なたを渡したこと、また、精神科医の証言からも、ハロクが完全な知性の欠如状態にあったとは認められないと判断しました。したがって、精神障害は免責事由とはなりませんでした。

ハロクは、事件発生前に精神病院で治療を受けていた事実を証拠として提出しましたが、裁判所は、治療歴があることだけでは、事件当時の精神状態が免責を正当化するほど重篤であったとは言えないと判断しました。裁判所は、ハロクの弁護側が提出した証拠は、彼が一時的に精神的な問題を抱えていたことを示すに過ぎず、事件時に自身の行動を制御できないほど重度の精神障害に苦しんでいたことを証明するものではないとしました。

本判決は、正当な精神鑑定がいかに重要かを示しています。刑事責任を免れるためには、精神障害の程度が、行為の性質や結果を認識する能力を完全に奪うほど深刻でなければなりません。精神障害が認められる場合でも、責任能力を低下させる事情として量刑に影響を与える可能性はありますが、免責事由となるためには、極めて高いハードルをクリアする必要があります。

第248条。殺人罪。
246条の規定に該当しない者が他人を殺害した場合、殺人罪を犯した者とし、次のいずれかの状況を伴う場合は、終身刑から死刑に処する。
(1) 欺罔、優越的地位の利用、武装した者の助力、または防御を弱める手段、もしくは免責を保証または提供する手段または人物を用いる場合。
(2) 代価、報酬、または約束の見返りとして。

本判決の特定の状況への適用に関するお問い合わせは、contactを通じて、またはfrontdesk@asglawpartners.comまでASG Lawにご連絡ください。

免責事項:この分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。お客様の状況に合わせた具体的な法的ガイダンスについては、資格のある弁護士にご相談ください。
出典:ピープル対ハロク, G.R. No. 227312, 2018年9月5日

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